2023/11/01 のログ
イェフィム > 「そうそう、狙ってそうふるまおうとする女性もいるくらいなんだから取り柄だろ。
 ………いや、俺は別に優しいわけじゃないと思うぞ。」

嬉しそうに笑みを浮かべる様子を見れば、うぬう、と小さくうめき声を漏らす。
なんというか、すっかり彼女のペースである。

「下半身に重心をって……、何かすげぇ説得力あるな。」

ちら、と、馬の下半身を持つ少女を見ればぽつりとつぶやく。
そうしているうちに制止が間に合わなければトロトロに空中で剣が溶けて、
手が離れれば再び剣の形に戻っていくことだろう。
自分で手に取って鞘から抜いて見せれば剣は剣の形を保ったまま、ギランと月の光を反射して。

サテラ >  
「えー、あなたは優しいと思うよ?
 だって優しくなかったら、そもそもわたしとこんな風にお話ししてくれないもん」

 敵対する異種族同士である。
 それだけで騎士の心の広さが分かるというものだ。
 馬娘はそう力説するのである。

「……むぅ、なんか微妙な気持ちになる視線~。
 実際、強い力に立ち向かうなら、真っ向からぶつかり合う筋力をつけるより、受け流して崩されない体幹を作るのが大事なんだからね!」

 などと、それらしいことを言うが。

「――おおっ、綺麗な剣~!」

 剣を見せて貰えれば、わぁ、と歓声と、拍手の音。
 細身の剣の美しさに、目をきらきらと輝かせる。

「と、あなたにだけ色々見せてもらったんじゃ不公平よね。
 ――よ、っと」

 そういうと、軽く跳ねるような動きと共に、馬の下半身が淡い光と共に人間の下半身に変わる。
 ただ、二足歩行に不慣れなのか。

「あ、あわわっ」

 川辺の緩い足元にバランスを崩し、転びそうになるのだから忙しない。
 

イェフィム > 「そういうのはいいいんだよ、褒められるのに慣れてないんだ。」

ぐぬぬとうめき声を漏らしながら待ったをかける。
少女の純粋さに押されっぱなしである。

「いや、その下半身なら敵を逃がすこともないだろうし…、便利そうに思えて。
 変な気分になったならば申し訳ないと思うよ。」

失礼、と一礼したが、すぐに剣に視線が行くのは女の子ゆえだろうか。
奇麗なものに目が行くというのも…。
かるくその剣を月明りに照らして見せてから、再び鞘に納める。

「ん、いや、そんなつもりで見せたわけじゃ、タオルのお礼だってできてなかったし…っと、おお。」

軽くはねる動きと共に馬の下半身が人間の下半身に変わっていく。
それに驚いた様子で目を丸くしたものの、バランスを崩した少女を支えようと手を伸ばし…。

「おおっと…、大丈夫か?
 気をつけろよ、川辺は地面が緩いんだから。
 …と、そろそろ時間もいい頃合いだし、俺は街に帰るが、お前さんはどうする?」

少女を支えながら首を傾げた。

サテラ >  
「そうなんだ、じゃあ、慣れないとね!
 きっとあなた、とっても素敵な騎士様になれるもの」

 そう、両手を合わせて、無邪気に言うのである。
 その素敵な騎士様がいずれ、同族を多数手にかけるかもしれないというのに。

「もちろん走ったら逃がさないもん。
 でも、この足でだってちゃんと動けるんだから!」

 なんて言いながら、しっかりと転びそうになったところを支えてもらっているので。

「……ありがと」

 ちょっとだけ、むすーっとした顔でお礼を言うのである。
 こんなはずじゃなかったのにという、顔だ。

「あっ、わたしも帰るー!
 マグメールだよね、一緒してもいい?
 わたしも今日はこっちに泊まるんだ~」

 なんて、堂々と王都に潜んでいる事まで喋ってしまうのだから、人を疑うという事を知らないのかとすら思われかねない。
 敵意の無い詐欺とか、善意の詐欺とかに簡単に引っかかりそうだ。

「あ、そうそう。
 わたしはサテラ、半天馬(ハーフペガサス)のサテラ。
 あなたのお名前は?」

 と、名前も隠さず教えるのだから、たしかに馬鹿正直と言われても仕方ないのかもしれない。
 

イェフィム > 「慣れないって……、周りにそう言ってくる奴いねぇんだよ。」

無邪気に笑う様子に、若干複雑そうな表情を浮かべる。
将来的に彼女が自分の同族を手にかけるかもしれない、
それはお互い様なのだ、何も言うまいて。

「だろうな、逃げ切れる気がしねぇわ。
 …そこはまぁ、まともに動けないと困るわな。
 でも、だからと言って無理に動かなくて良いだろ。」

少女の身体を支えながらよしよし、と背中を撫でてやる。

「どういたしまして。」

よしよし、となだめつつ、帰り道が一緒と知れば、相手の申し出を断る理由もなく。

「いいぞ。
 俺はギルドまで行くから途中までになるかもしれねぇけど。
 ってか俺はマグメールに住んでるからな…、本当は泊めてやるくらいできればいいんだけど、
 そういう権限無いからなぁ…。
 まぁ、その代わりに安くて安全な宿くらいなら教えられるぞ。」

そう言って少女を支えながら歩き出す。

「サテラさんね…、俺はイェフィム。
 イェフィム・ティル・ルクスだ。」

相手が名前を名乗るならばこちらも素直に名乗る。
そして雑談しながらマグメールへの道を歩いて行ったことだろう。
その後は自分の知る限り、安くて安全な宿を紹介したことだろう。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 川辺」からサテラさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 川辺」からイェフィムさんが去りました。