2023/09/26 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯 古代遺跡」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル >  月の明るい、宵のこと。

 ――っはあ、はあっ…!

 呼吸を酷く乱しながら、古代遺跡の朽ちかけた墓所を駆ける足音。
 汗を滲ませて時折背後を振り返り、追って来る数匹の魔物を確認して唇を噛み締めて目を眇め、どうにか足を速めようとするが、

 ぽた、ぽたぽたっ……

 左腕に負った傷から滴り落ちる血と走る痛みに思うように走れない。
 グール討伐の依頼を受けて、数人編成でパーティを組みやって来たが、俄かパーティは連携が上手く取れずに隙を衝かれて襲撃され、分断されてしまい後衛にいた自分は一人離散して――

「――ッ、やっ、この……っ!!」

 とうとう早足のグールに追い付かれて、飛びかかられた。

 ガ、ン! 

 咄嗟に握っていたスタッフを大きく振ってその顔面に食らわせて怯ませるが、間髪入れずに後続のグールに脚を掴まれて引き倒され、

「―――ッ!!」

 声にならない悲鳴が夜の墓所に響き渡った。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯 古代遺跡」にエリビオさんが現れました。
エリビオ > 衣切り裂く悲鳴と同時にグールの咆哮が墓所に響く。
茶髪の女性を掴み上げた腕がありえない方向に曲がっているからだ。
腕を握るのはグールとは別の手。摘み上げた腕の逆関節に深々と膝が入っていた。

「ほら、こっちこっち。女の子みたいに柔らかくはないが喰いではあるぞ。」

場違いに呑気な声が悲鳴を割り、振り向いたグールの朽ち果てた衣服を掴みあげ。
長い脚が抉るように足を蹴り上げる途端……グールは天地逆転して投げられる。
それで女の腕を離してくれればいいのだが。
もし共に投げられたのならばせめて宙に舞う女性だけでも受け止めようとした。

ティアフェル > 「え、ぅ、――きゃあぁっ!?」

 不意足首を掴んだグールの握力が弱まったかと思えば、月光に浮かび上がる化け物以外の人影。
 すらりと背の高い――青年、というには少し線が細い……少年のように見えたが。
 何分一瞬のことで混乱する内に、脚を握ったグールが投げ飛ばされて宙に浮かんで地に引き倒される。
 脚を完全に離されていなかったため、若干その勢いに引きずられるようにしてずるりと額が地面に擦ったが、先に関節をやられていたグールの握力は弱く浅い擦り傷だけで済んだものの。

「――っ、危な……っ!」

 顔を上げた瞬間、彼の意識がこちらや投げたグールに向いている隙を突いて少年の後方から二匹のグールが飛び掛かっていて、咄嗟に手近な石を握って彼の背後へ投石して危険を知らせながらグールの顔面を狙って。

エリビオ > 「大丈夫?近くで魔物退治の依頼受けてた帰りに騒がしいからきたんだけれど。」

倒れ伏したその人に声を掛ける刹那、窮地を知らせる声に双眸を眇める。
振り向くや否や黄ばんだ歯を剥き出して喰らいつこうとするグールに淡翠に輝く掌底を叩きつける
――刹那、掌を中心に回転したグールが天地逆転に頭から地に叩き落される。
まだ前方に残るグールへと手を振りかざそうとした最中。
その顔面に投石が命中してよろける姿を目撃し。

「ナイスコントロール!」

背後の女性を讃えんとサムズアップ。
ただし月明かりを受けてわずかに赫かかる双眸は前方を見据える。
死臭重々しい夜の帳の中、人外の殺意はまだ残っていたのか。
ならば殺意の雨を一人打たれんと倒れ伏した人の一歩前にでていく。

ティアフェル >  大丈夫、と返事をするいとまもなく、急襲を掛けてくる二匹のグール。
 月明かりに土気色の肌が不吉に浮かび上がって、少年に襲いかかる様は悪夢のように一瞬目に映ったけれど。
 本当にそれはつかの間のことで。その牙が届く前にどう、と地面に叩きつけられる化け物の姿。
 鮮やかな掌底に成す術もなく一撃で斃されるも。

「や、だけど致命傷じゃないから……っ、そいつ、まだやる気……」 

 コントロールは間違っておらず、グールの顔面に直撃したものの。
 まだ一匹、投石を喰らってふらつくもそれはまだ戦意を失ってはおらず。
 低く唸り声を上げて一息に飛び掛かってくるではなく、中腰で対峙し隙を狙うように。少しは頭が回るのか警戒して間合いを取り獲物を見据え、仲間を呼び始めたのか威嚇か唸り始めた。

 擦り傷を額にこさえて立ち上がりながら、前に出る少年に。

「ちょ……、やばいやばい、ここグールの巣窟になってるみたい……仲間呼ばれたら大変……逃げよ、分が悪いってっ」

 冒険者、冒険はするが無茶はしない。撤退の隙は充分にあると見越して彼の袖を引こうと手を伸ばしながら。

エリビオ > 「そうだね。こいつら生物じゃないから斬ろうが叩こうが細切れにするまで襲ってくる。
 だから、俺が時間稼ぐから早く逃げなよ。で、ギルドで不浄を祓うお坊さんでも呼んできて欲しい」

腐っても考える知能はあるか……無闇やたらに攻め掛からず様子を伺う様に微動だにせず直立する少年は
爪や歯で肉を削ぎ取ろうとする攻撃を軽やかな足裁きで紙一重で躱し。
弱った獲物から討ち取ろうと回り込むグールに三角に印を結んだ掌から翠の風刃を放って追い払う。
四方から打ちかかろうとする敵の間を風の如く抜け、その攻撃を尽く躱し、欺き、受け流し。
それでもじわじわと迫る包囲に、ついに女性の方へと近づいた。
不意に袖を引っ張られれば険しく眇めた薄紅を不思議そうに瞬き。

「なんでまだ逃げてないのさ……2人で逃げられる?走れる?」

袖を引かれるままに後方へ掛けていく。

ティアフェル > 「駄目だよっ、そんなの間に合わない! 持久力にだって限界あるでしょ!
 あなたも逃げるのっ、逃げれる内に!」

 ギルドまで駆けこむ時間までここで耐えていられる訳じゃなし、逃げるなら敵に囲まれていない今の内の方がいいに決まっている。
 命あっての物種だ、と彼の能力の高さは認めるものの、それならば自分よりもよほど逃げ延びる確率が高いのは少年の方で。
 云ってる内にも鮮やかにグール達を捌いているが、それでも倒されても起き上がって来る連中はしぶとい。
 包囲が狭まったせいで袖を引くことが適えば、

「一人で逃げたところで逃げた先で捕まるのがセオリーだし! 単独行動しない方がいいっしょ。
 あとね! わたしのほーが年上だからっ、君こそお姉さんについてらしゃいよっ」

 ここで年功序列なんてなんの意味もないに違いないが。それでも弟と似たような年齢の少年を放って一人で逃げ出すわけにもいかない。
 ぐい、と強引にその腕を引っ張るようにして地を蹴って駆け出しながら、足止めついでにまた迫っていたグールの目を狙って拾った石を投擲し。
 
「こっち! 今までの人生で最高の走りを見せるのよっ」

 グール溜まりになっている墓所の出口へ、時折往く手を阻むグールを蹴倒しながら駆け抜けていき妙な檄を飛ばす。

エリビオ > 「ちゃんと逃げられる算段はあったのに。」

引かれる腕はそのままに揺れる茶色の髪房に目を向けて。

「うーん。そこはどうだろう?
 こういう場合は散り散りに逃げたほうがいいような気も……。」

不意に首筋が泡立つ。前方の深い夜の帳を隠れ蓑にぬっ、と静かに現れたグールへ向けて印を結んだ手から風の刃がグールの足を斬り落とす。

「おねーさん、後ろばかり気にしたらダメ!前も。
 それとこんなときに年齢関係ないし、なんで俺の年がわかんのさ。
 あー、ランタンを落としたのが運のツキか」

闇に沈むかのグールの方向は四方から聞こえてくる。
後方へ投石で足止めする彼女の前方へと幾度も印を結んだ風の刃で不意打ちを凌いでいたが。

「あー、おねーさん。ちょっと失礼!」

抵抗がなければ前方を走る彼女を抱えあげようとする。

ティアフェル > 「分かんねーでしょっ、そんなのっ」

 そもそもこっちも一人で突破するとか自信ない。
 マンパワー必要。今は孤独が危険を呼ぶ気がして。

「うっせえ、乙女を一人にしようってのっ。薄情かっ、そっちはよくってもこっちはさっきやられかけてたんだからねっ」

 こうなったら道連れだ。一蓮托生だ。つまり巻き添えだ。
 背後を取られないように投石していた隙に、前からまるで浮かび上がってくるように出し抜けに行く手を塞ごうとするグールの足が前を向いている間に切断されていて。

「ぎゃーっ、もう、絶対二人のがいい奴じゃんーっ! 前にも後ろにも目はついてないんだから絶対一緒のが正解ー!
 顔!声!体格! 見た目ふたつみっつ年下でしょ」

 少なくとも成人男性には見えない。そうすると年下の確率がかなり高い。こちらはもう二十歳一歩手前なのだから。
 がこっ、と石を投げるも走りながらそうそう首尾よく投石できる訳でもなく。
 時折スタッフをスイングさせて肉薄しようとする連中を打ち払っていれば。

「えっ、あ、わっ……」

 不意に伸びて来た両腕で抱えあげられれば目を見開くも、少年の腕に収まり。

エリビオ > 恐れるどころか声を張り上げてる気すらする。
後ろから迫り、前に潜むグールたちもその気迫に怖じけるような。
ただ後方にいた少年は笑って。

「良い元気。その調子でガンガンなにかいってよ乙女なおねーさん。
 うるさくて恐怖なんて吹き飛んでしまいそう。
 でも怒りすぎて血管切れないでね」

振り回した杖が一回りした瞬間を狙ってその膝裏に腕を回して軽々と抱きかかる。
痩躯に見えて力強い少年は膝と背に腕を回して抱き抱えたその人に片目を瞑って。

「でも、今だけはちょっと静かにしてね。
 精霊に声が届かないかもしれない。」

疾駆していた足を止めて勢い任せに爪先で地に円環を結ぶ。
ザッ… 墓地に似合わぬ強い風が吹き抜けた。

「草木揺れ、天に舞う風の子たちよ、我が願いを運べ。
 風の加護よ纏え、風の道を切り拓き給え。
 吾見は一陣の風――地の理より解き放たれし風の道を征く者」

少年の表情は恍惚と酩酊を孕み、迫りくるグールの前で瞼を閉ざして空を仰ぐ。
よもやグールの爪先が顔に降りかからんとした刹那―― 精霊の鈴にも似た秘めやかで優しい音が鳴り。
地より湧き上がる突風が2人を高く飛ばしていく……グールの爪先が放たれたのはその後のこと。

ティアフェル >  グールの群れは気持ち悪いが、冒険者なので怯えるよりも対処しなければという思考に切り替わる。
 唯一そうならないのは苦手な犬に対してくらいだ。
 後ろから何だか気楽に笑ってる気配を察して、むき、とアホ毛を立てて。

「ちょっとー! 笑いごとじゃないっしょっ、バカにしてんのあんた!
 そっちこそちったあ恐がったらどうよ、かわいげないわねえー」

 余裕綽々なご様子でグールをいなしている少年に出し抜けに横抱きにされては目を丸くして、その顔が片目を閉じる所作を決めるのを少しぽかんと見上げて。

「え、は、……な、なに……? せい、れ……」

 問い返す間もなく詠唱が紡がれ始めていた。
 精霊魔法なのか。普段己の扱う術式とは異なる力の流れが渦巻くのを感じる。
 詠唱の間もゆっくり待っていてくれる訳でもなく。

「っ――!」

 一線されたグールの爪が皮膚を切り裂く程間近に迫ると、スタッフを振りかけたが、その魔物に塗れた月光の墓所では不似合いな冷涼な音色が響いて反射的に動きを止め。

「っ、あ、きゃあっ……!?」

 突如巻き起こった竜巻めいた強い風が空へと二人を押し上げて、驚愕に瞠目して翠の双眸を大きく開き、弾き飛ばされそうな気がして無意識にぎゅ、と少年にしがみつき。

エリビオ > 腐臭を放っていたグールはすでに脚下にいる。
腕を伸ばしたとして届かない距離に浮いた2人には悪戯な風の子が掠め。
茶髪と黒髪は風の流れを描くように波打っていく。
そんな中で怒髪する人を見つめ。

「これが俺が余裕があって怖がらなかった理由の1つだよ。
 その気になればグールくらいは飛んで逃げられる。
 それと……二人して怯えたら、誰も君を助けられなかった。
 命の危機に瀕したときこそ、笑って良いのさ。」

犬の尻尾のように立つアホ毛に笑いながらしがみつく人を落ち着かせるように背に回した手で優しく撫でる。

「精霊の魔法。魔法は敵にぶつけるだけじゃない。
 こうして力を借りることもできる……ただ、飽くまで借りるだけだし。
 その力がどれくらいかわからないけれど。」

少年の額に汗が浮かぶ。風のように浮かぶ2人はふわふわと、少しずつ高度が落ちてゆき。

「ここじゃ、2人は重量オーバーみたいだ……なっ!」

あわや口を開いたグールに緩やかに落下する前に、その頭を蹴りつけ。
とん、とん……頭上からグールを足蹴にして朽ち果てた出口の前に地に足を落とし。
ゆっくりと抱えた女を下ろした。

ティアフェル >  中空に浮き上がって何事かと目を零れそうに開いたまましばししがみついたまま硬直し。
 秋風の吹く墓所の空。煌々と明るい月の中に二つの影が黒く刻み込まれ。

「っも、もおぉーっ、云ってよっ、びっくりするじゃないぃぃーっ。
 あとわたし別に怯えてないし。
 それに、死にかけてへらへらしてたとしたらそれもうどうかしてるからね」

 神経が太いと云うか一般的観念とかけ離れているというか。妙な持論を振りかざす少年に微妙な表情を浮かべ。
 背を撫でる手に擽った気にアホ毛を揺らめかせ。

「ちょ……ちょお、どのくらいか解らないのに落ちたら危ない高さ飛ぶかね!? 高架の程は把握しとくべきではなくって!?」

 額に汗する彼の様子にいきなり落っこちるとか勘弁してくれと降下していく様子に蒼褪めていたが、どうやら急降下することはないようで、緩やかに墓所の外へと降り立つと、ほおぉ~……と大きく息を吐き出して地に足をつけ。少しよろめきながら立つと。

「あぁ……死ぬかと思った……」

 スタッフを杖代わりによっかかってぐたりと身体を曲げて項垂れ。

エリビオ > 「それを言うなら足を掴まれて絶対絶命の危機で怯えてないのもどうかしてるんじゃないかな。」

憎まれ口を叩きながらも墓所の守衛に呼びかけて、大量発生したグールの処置を願う。

「あはは……だから先に逃げてほしかったんだけれどね。
 2人無事で何よりじゃないか」

緊張に固くなった筋肉をほぐすように組んだ腕を高らかに抱える。
少年に取ってはこの程度のトラブルは慣れたもの。
しかし、老婆のごとく背を曲げて杖を突く女の姿には流石にバツが悪そうに眉を下げ。

「怖がらせてごめんね。俺はエリビオ。
 もう大丈夫かな?」

嫌がらなければ背を擦り擦り顔を覗き込んで伺う。