2023/09/19 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森林」に影時さんが現れました。
影時 > 街に長く居れば、時折山が恋しくなる。
それは人ならざるケダモノらしさと呼ぶべきなのだろうか。
然り。秋は実りの季節である。実りを蓄え、冬に備えるのならば――。

街道から離れ、外れた先に広がる森林地帯にその姿はある。
青々とした木の葉がほんのりと色づくかどうかな、秋の気配を感じると彼らはそわそわし出すらしい。
昼間の太陽が投げかける日差しが枝葉の合間に漏れ、濡れた地面を照らす。
その濡れた土の上を二匹の小動物が勢いよく駆け抜け、走り回る。
茶と黒の毛並みをした栗鼠とモモンガだ。
ともすれば風景に紛れて見えなくなるのを、二匹が纏ったおそろいの小さな法被の白色が防いでくれる。

「元気が良いねェ。まだこの時期だと、あんまり転がってなさそうなんだがなぁ」

その姿を見守りつつ、のんびりと足取りで追うのは他でもない。飼い主だ。
柿渋色の羽織と黒い装束を纏った男が籠付きの背負子を担ぎ、足元や頭上の様相を確かめながら歩く。
山野は慣れたものと言わんばかりに、その足取りに迷いはなく、危なげはない。
先行する小さな二匹が木の幹に攀じ登り、おやぶんおそーいと言わんばかりに黒い眼をくりくりとさせて、更に上に登る。
彼らが捜してるものは、十中八九どんぐりやいがぐりの類であろう。
秋めいた気配を感じたのか、最近はせっつくように街の外に向かおうと催促をしていた。

勝手に行かれては困ると思えば、手頃な依頼を冒険者ギルドで受諾して森歩きに勤しむ。
請け負った依頼は指定の植物の採取。これ自体はあり触れている。然程珍しくもない。
だが、必ず達成すべき主の依頼内容とは別途添えられた副依頼。それがこの依頼の要点だった。

影時 > 近隣の村の長から発布、冒険者ギルドに委託された仕事内容はこうだ。
森林の奥に自生している、染め物や調薬に使う植物の採取。
それ自体は難度は低い。駆け出しの冒険者でも、森の奥に向かうという危険の分だけ僅かに実入りが多い。
問題は、主要依頼よりもはるかに高額に報酬が設定されたサブ依頼の方か。

この時期、活動が活発となる猪型の魔獣の討伐。これが厄介だ。
腕に覚えがあり、装備が十全に整い、想定される危険に余裕を持って対処できるなら、きっと大丈夫。
依頼を請け負ってくれるそんな貴方は無事に主要依頼も、副依頼もらくらく終えてくれるでしょう。

――と云える実力と幸運が揃っているものは、いつまでもニュービー、駆け出しである訳がない。

「……ふむ?」

木登りも得意だが、身軽さという点で云えば、飼い主たる男は小動物二匹には流石に負けてしまう。
生まれも育ちも違う森だが、森であれば自分たちのテリトリーと言わんばかりの二匹が樹上で走り回る。
揺れる枝の上でどんぐりの生育ぶりや、木の芽の様子を確かめ、運よく成っていたどんぐりを取って試食する。
いまいち生育が足りなかったのか、それとも思いっきり渋かったのか。
二匹が尻尾の毛を逆立て、いかにもまずい……と言わんばかりに、耳を伏せる気配を確かめ、視線を落とす。
視線が落ちる先は、木の幹だ。年月を経た樹皮をじっと睨めば、幾つか深い傷が見える。
しゃがみ込み、傷跡を覗き込む。樹皮に生じた抉れは深く、内側の白い箇所も覗く。気になるのは、

「結構新しいなぁ。
 そーなると、……糞の類も転がっててもおかしくねぇか。あと、水場はどうだったか?この辺り……と?」

猪の大きな牙で木の肌を抉ったかのように見える形状、様相と云うところ。
腕組みつつ、考え込んでいれば木の上からころ、ころころと幾つか落ちてくるものがある。
どんぐりである。見上げれば気に入った味のどんぐりが熟していた、らしい。
拾って?と言わんばかりに、上から目をきらきらさせて頼む二匹に肩を竦め、しゃがみ込もう。

影時 > もとより、背中の背負子は採取の目的のために用意してきた。
魔獣の討伐を果たした場合、運べない際に備えて、回収班を差し向ける用意があるという。
狼煙を上げれば討伐認定を兼ねて、地元の猟師たちがやってきてくれる寸法だ。
如何に忍者といっても、自身の目方より数倍するかもしれない巨躯を抱え運ぶことは難しい。
そんな大仕事に値しない採取、拾い物であれば、背負子の籠に放り込めばいい。
籠の底には、道中買い込んだ小さな樽も転がっている。中身は酒だ。
手頃な木の枝を拾って、針と糸を付けて川魚を釣り、焼き魚を肴にして呑むのも考えたが。

「別段血眼になる理由じゃねェんだが、思ったより近くに痕跡があンのは気になるな。
 こりゃ先に要件を達してから、備えておくのが良いな。

 ……おうぃ、スクナにヒテン。他に落としたい奴がないなら、降りろー」

隠れてやり過ごしてもいいし、臭いを消したうえで樹上を飛び移る手立てだって考えられる。
だが、大きな獣がこの時期に跋扈するのは、やがて訪れる冬を越すために食い溜めしたいからだ。
別段気取るつもりはないけれども、単なる愉しみで刃を振るうのは、人間相手で良い。
必達の要件でなければ、多少は考える。その際の匙加減は主に懐具合に左右される。

割と新しい痕跡が近隣に残っていれば、水場になるだろう小川、沢の位置と照合し、魔獣の行動範囲を考える。
先に採取の依頼を済ませたいなら、次第によっては魔獣と遭遇する可能性が高くなる。
はてさて、と思いつつ、小動物が落としたどんぐりを拾い集め、樹上へと声をかけよう。
そうすると先に一匹がひらーと降りてくる。この時に足が速いのは四肢の被膜を拡げ、滑空できるモモンガだ。
尻尾を撓らせて姿勢制御し、風に舞う木の葉のように降りてくる先は、飼い主の頭の上。
遅れて走り出す栗鼠は幹を走り、男の頭と同じ高さまで至れば、大きく跳ぶ。

男が手を出せば、その上に器用に着地しては、ありがとーとばかりに頭を下げる仕草を見せる。
その仕草に頷き返しつつ、肩に乗せれば二匹はもぞもぞと背負子へと潜ってゆく。
戦果の品定めでもするつもりであろう。其れを肩越しに見やりつつ、腰の刀を揺らして歩き出そう。

影時 > 踏み出す動きは何気なくとも、足音はしない。衣擦れの音もしない。
音がするとすれば、それは背負子の中で品評したり取っ組み合いをし出す二匹位だろう。
何をやってンだねおまいら、と内心で息を吐きつつ、頭上と足元を都度確かめ進む。
目的の採取対象は、水場やその近隣で自生する植物だ。
使いでがあるなら栽培の手立てを考えても良いと思うが、色々と難しいらしい。

「……水場に生える奴と聞くと山葵の類みてェだが、思い出すとあれも欲しくなるのが厄介だな」

街中のどぶ川ではなく、この辺りの水は清涼な類だ。十分飲用に足る筈。
奇麗な水が流れて、さらに水温が低い場所でなければうまく育たない種なのだろう。
そのような植物を栽培したいとなると、さて。どれだけの方策と設備を要することか。
そう思いつつ、足を進めると――男の次第にその表情が渋くなる。
水が流れ、ぬかるみが目立ちだす地面に見えてくる足跡、輪郭も露な窪みに。

「ったく。遭う可能性は考えてたが、こうも早ぇのもなぁ。……困ったな」

渋面を浮かべ、一息。首に緩く巻いた襟元を口元に引き上げ、鼻から下を隠すように締める。
目的達成の次点、優先対象外たる副依頼まで完全達成するつもりはなかったが、この可能性も想定してのものだろう。
地元の猟師が渋るような個体が居た場合、その分の始末を任せる――という算段までしているのか?
邪推は如何様にも出来る。討伐対象がそれこそ吟遊詩人が謳うようなものでなくとも、魔獣から得られる素材は需要は多い。
男が履いている靴や手甲の裏地など、強度としなやかさを要する箇所には、下手な素材は使えない。代用できない。
呼吸を整え、気配を隠す。その所作を察すると、文字通り空気を察したのか。背負子の中が静かになる。
手を前方に伸べ、指の肌に触れる風の流れを確かめ、風上と風下を見定める。そのうえで足跡が示唆する進行方向を迂回して進む。


(……――居たな。出来たら水場からは、離さなきゃなンねぇかねえ)

身を低くし、風下より清流流れる川辺に至る。茂みの陰より顔を覗かせれば、見えてくる。
黒々とした毛並みの大きな猪の威容だ。身の丈だけでも、己が背に届きそうな大きな個体だ。
この辺りのヌシとも呼べるのかどうかは、分からない。年経たものであれば、もっと大きくなっていそうだ。
直ぐ近くに目的の植物も見えてくるが、この位置はまずい。
食べられるかどうかもそうだが、下手に屠って血を流した場合、川に流れ込むのだけは後々を考えると避けたい。
そうと思えば、近くにあった小石を拾う。

影時 > (……まずはこちらに引き付ける。引き付けた後で仕留める)

あの体躯、目方の場合の急所はどこか。手持ちの道具で速やかに斃す場合の手立てを考える。
道具には困らない。だが、道具は選ぶべきである。選ばずに使うのは仕損じに繋がる。
今手に取った石も即席とは言え、道具には変わらない。
石は投げるもの、または叩きつけるものである。故に――投げる。
忍者に限らず、投げ方を心得ている者が投じた石とは、十二分に凶器足り得る。呑気に水を飲む猪に当たれば嫌でも気づく。

「……さぁ来い。悪いとは言わねェが、追ってこい」

何をやっているのか、とばかりに籠の中で鳴き出す小動物たちの気配に苦笑しつつ、走り出す。
因縁をつけられた魔獣たる猪が、嘶くような唸りを零し、文字通りの猪突で羽織を翻す男に追い縋る。
フィールドを見聞して理解したものと、以前より長く棲まうもの。どちらもその動きは早い。
だが、荒さの点で見れば後者が大きく強い。外皮の頑丈さと生来のタフさは突進能力全振りで、下手な障害物を突き破る。
そんなものに対して真っ直ぐに進み、疾走するのは其れだけを見れば悪手。
此処に変化を加えるのは、盤面を行き交う駒の二次元的な動きではなく、立体的な三次元的な挙措に他ならない。

「よっ、と!」

印を結び、左手を振る。そうすると左手の指先から練り込まれた氣が極細の糸の形態に変じ、迸る。
氣を練ってかりそめの実体を持った糸が、大木の枝にしっかりと絡みつく。それを手掛かりに身体をぐいっと引き上げる。
振り子のような動きで飛び上がれば、猛進してくる猪が先ほどまでいた場所をぶち抜いて踏鞴を踏む。
それを忍びたる男は見逃さない。術を解いて糸を消し、腰に差した刀を右手で引き抜く。
勢いのままに猪の背に飛び乗れば、先刻見定めた急所目掛けて逆手持ちにした刀の刃を深々と突き立てよう。

其れで恐らく、肩が付く。
急所を深々と刺し貫かれ、暫し悶絶するように身を強張らせた猪がやがて白目を剥いて崩れ落ちる。
その様子に刀を引き抜きつつ、巻き込まれないよう離れれば、暫し様子を見る。仕留めたと確信すれば、漸く息を吐く。

影時 > 「……おうぃ、お前ら目を回してねーか? って、痛て。投げンな投げンな」

羽織の裏の隠しから襤褸布を取り出し、血脂に塗れた刀の刃を拭う。
猪を罠にかけて動きを止め、据え物斬りめいた遣り口で斬れはするが、必然として出血が酷くなる。
先程考えたように、清流を大量の血や取り出した臓腑を洗って汚してしまうのは、やはり避けておきたい愚だ。
背中の背負子の中に居る筈の二匹が、目を回していないかどうかを心配すれば、ぽこぽことどんぐりが投げられてくる。
まさか食べて寝ていた、とでも言うまいか。そんな予感に呻き、腰の鞘に刀を戻そう。

「薬を火に投じて狼煙を焚けば分かるとかいう話だったが、あー。
 先に狼煙を上げてから、採取するものを採取しておく方が楽かねえ……」

期せずして討伐した猪の骸は野ざらしにせず、回収の手配をしておきたい。
一方で果たすべき目的を果たしていないことにも気づく。
先に薪になりそうな小枝でも集め、事前に持たされた分薬を混ぜて火を焚こう。そうすると色付きの煙が出るらしい。
それと合わせて、採取依頼を達成してしまえば、恐らく手間は減ることであろう。
十分に確かめてはいなかったが、目的の植物も先ほどまでの水場にある筈。そう考えれば、行動に移る。

薪を集め、植物採取を済ませた後に、火を灯す。
色が付いた煙が白昼に上がり出し、数刻待てば数人の猟師と村人たちがやってくる。
思わぬとは言え、獲得した戦果の現物を見た彼らに労いを請けつつ、回収を頼もう――。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森林」から影時さんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森林」にリュエールさんが現れました。
リュエール > メグメールの森林地帯。
蔓延る魔物を蹴り飛ばしては無力化してしばらく。
採集ポイントとされている媚香の森という区域ももうすぐのはず。
日光が遮られて薄暗い森の奥には危険な魔物も出るという。
そこまでは踏み込まないように気をつけながら、女はミスリルの足鎧を鳴らした。

「魔物のレベルはまあまあというところね。囲まれなければ問題なさそう」

ピンクブロンドの髪を払いながら、使えそうな魔物の素材を回収して袋に詰める。
そんな感じで魔物を倒しつつ、魔花が群生しているという場所へとやってきた。
荷物から花粉を吸いこまないよう口元をスカーフで覆いつつ、両手には手袋。
咲き乱れる魔花を見ながら、一束でも良い値段のするソレを根っこから引き抜いて回収する。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森林」にサタンさんが現れました。
サタン > 昨日の散歩兼狩りが楽しかったのか、またも2頭の白狼達にせがまれ
森林地帯へと転移していた男。
以前の場所では物足りないのか、今回は森の奥深くの媚香の森辺りまで
潜って、魔物を蹴散らして行く様を、また木の上で眺めていた。

そんな所へと、近づいてくる何者かの気配を感じた男と2頭。
飛び出して襲撃できそうな距離で、茂みに身を潜め気配を殺し様子をを窺う。

高値で取引される魔花を引き抜いている所で、急いたのか
狼は、迂闊にも枯れ枝を前足折る音が、森の中で鳴り、狼は慌て。
「待て。」と、男は木の上で言葉を発してしまうが時すでに遅し。
タイミングもバラバラで牙を剥き出し、爪を立てて飛びかかろうするが、バレた可能性の高い襲撃の成果は果たして。

リュエール > 静かな森の中で風がざわざわと木々の葉や魔花を揺らす音を立てる。
そんな中で聞こえた不自然に枝が割れるような音を拾った優れた聴覚が拾う。
何者か、男の声が静止の言葉をかけるより先、迫りくる白い毛並みの狼が二頭。
反射的に飛び退いて魔花を踏み荒らしてしまったが、そんなことよりも目の前の敵に女は意識を割く。

「魔物? 白い狼なんて珍しい。高く売れるかな?」

誰かの声が聞こえた気がしたが、木の上であれば女の視界には入らない。
なおも迫りくるならばマントを翻し、その下に隠されていた露出度の高い戦闘服までを見せながら、躊躇のない軌道を描いてミスリルの頑丈な足鎧が狼の飛び掛かりに合わせて横から胴を狙って蹴り上げる。
並の魔物であっても強力な一打となるが。
戦い慣れていることが伺える身のこなし。
女は目の前の狼二匹に意識が向いている。意識外からの攻撃は、直で入るだろう。