2023/08/20 のログ
イグナス > しばらく時間を忘れて、水浴び。まだまだ夏は、あつくて、続いていく――。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 川辺」からイグナスさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 洞窟」に影時さんが現れました。
影時 > ――色々やっていると、足りなくなるものは無いだろうか。

その傾向はきっと、生産業に携わる者に多いに違いない。
何か作ろうとして肝心のアレがない。気づかないうちに切らしていて、手を付けられなかった等々。
そして何故か、いざ近場の店や市場を見回ってみると在庫切れや見つからない、といったことだ。

だから、そのような傾向を少しでも減らすべく、大小さまざまなの採取依頼が冒険者ギルドに寄せられる。
請け負った依頼もその一つに違いないのだが、手が付けられていなかった理由は一つ。

「……魔物が出る、ねぇ?」

それが群れか個体かは不明瞭。命からがら逃げてきた者たちの証言の内容はまちまちで一定しない。
そんな不明瞭とも謎ともつかぬ引っ掛かりを抱きつつ、洞窟に踏み入る姿がある。
否、正しくは一人と二匹。柿渋色の羽織を纏い、黒い襟巻を巻いた男と、白い小さな衣を纏った栗鼠とモモンガ。
一見奇妙な取り合わせだが、左右の肩に小さな獣を乗せて歩く姿は仲が悪いといった印象はない。
羽織の下、左腰から除く刀の柄に左手を乗せる姿は薄暗がりであっても、危なげはない。

「発光性の苔が自生していて……でー、確か依頼されてたキノコの胞子は幻覚を起こす、だったか?」

日の当たらない、差し込まない洞窟に僅かな光が生じるのは、天井を見上げれば其処に答えがある。
うっすらと緑がかった微光を放つ苔と思しいものが、そこかしこに根付いて茂っている。
お陰で松明を焚かずとも、夜目が効く人間や動物であれば明かりに困らない。
ただ、問題はだ。採取を依頼されていたキノコが持つ、薬効と隣り合わせの作用である。
依頼内容を思い出しつつ、お前らは襟巻に顔突っ込むか被っとけ、と。付いてきた小動物に声をかける。
細かな目になるよう編まれた襟巻の布は口や鼻を覆えば、マスク代わりにして使える。

その言葉に従い、もそもそと襟巻に潜り込む肩上の動きを一瞥して、歩みを進めよう。

影時 > 微かに耳を澄ませると、地下水脈が隣り合っているのだろう。
或いは洞窟内に露出して、さながら河の如くなっているのか、水が流れる音がする。
水は高きから低きに向かって流れるものであるが、どうだろう。
勢いが乗った水が石造の水道を流れ、街に注がれる仕組みにも似ているのか――否か。

「そこらに考え巡らせンのは、別のやつらに任せてぇなあ。
 とはいえ、飲み水に出来る水が注いでいるとなりゃ、ここらを塒にする奴も居てもおかしくはねェか」

ここ最近の晴れの日は、季節柄という理由を通り越して非常に暑い。
学院で防具をがちがちに着込んで、実戦さながらの稽古を行うことがあるが、搾れる位に汗が流れる位に。
地獄めいた暑さの中では、予め飲み水、休憩用の日陰を事前に完備せねば遣っていられない。
訓練や稽古でこれなのだから、実際の戦場で灼熱の最中だと文字通りの地獄となる。
それは動物、魔物であっても同様だ。生存に水が要らないのは、泥などで出来た人形(ごぉれむ)の類だろうか?
そう思いながら足を進めてみれば、次第に先が開けてくる。肌に触れる風の流れが変わる。

「ぉっ。……見てみろヒテンマル、スクナマル。良い眺めだぞ」

まるで広間のような、奥行きと高さがある空間に出る。
天井から垂れさがる石筍がいくつも乱立し、視界が通る先は地下湖と言わんばかりの大きな水溜まりが見えてくる。
声をかければ、肩上でもぞもぞと二匹の獣が顔を出し、わーと歓声を上げる代わりに尻尾をぱたつかせる。
風の流れを感じるのは、他に侵入経路にもなりそうなルートが地表に露出しているのだろうか?
そう考えつつ、地下湖のほとりと言える広場めいた処へと進み、斜面を降りてゆこう。目的の物はそこにありそうな気がする。

影時 > 足を進めつつ、注意すべき事項、並行して意識を払うべき事項がある。
魔物含め、この辺りに侵入した動物や人間等の有無だ。
それを確かめるにまず真っ先に目が向くのは、地面である。そして足跡の有無である。
鳥や蝙蝠等の如く、空を飛ぶ動物は足跡を残さないが、餌の食べ残しや糞の堆積から見当を付けることができる。

「……――あぁ、ね。確かに居たと云えば居た臭ぇか。だが、何だこりゃ……?」

地下湖のほとりまでスムーズに降りることが出来そうな斜面は曲がりくねっているが、険しいという程ではない。
故によく注視しなくとも、足跡の有無を確かめることができる。
認められる足跡は複数。形状は多様。
鎧を付けていそうな人間を伺わせるものがあれば、足指や爪の形状、体重の軽重で明らかな人外と思わせるものもある。
だが、その中にまるで酔っぱらっていそうな、千鳥足にでもなってそうとすら、思える有様のものも。

(……そうなると、例のキノコの自生地が近いか)

窺う限り、見て取れる痕跡の要因を思い返し、覆面の下で口元を引き結ぶ。
その上で肩上の獣たちにも、気を付けるように呼び掛けて足を進める。
出立前に再確認した目的のキノコの胞子は、呼吸で吸い込んでしまった時が危ういらしい。
一応、布で鼻と口元を覆っていればそれだけで予防できる程のものだが、その分だけ吸入したときが危ういのか。

「おぉ。思ったより広いな。……面倒な手合いが居ねェなら、今のうちに……と」

そして、目的の場所へと至れば周囲を見回す。地下湖のほとりはやはり、広い。
対岸側は暗がりもあってよく見えないが、深さもありそうな水深は竜の類でも潜んでいそうな気さえする。
そう思いつつ目を遣れば、起伏や踏み締める岩盤の隙間で白く発光するキノコが幾つも生えているのが見えた。
媚薬、精力剤のような用途にできるらしいが、ポーションに漬けて熟成させると、いっそう回復効果を引き出す、のだったか?
説明を思い出しながら、近隣の自生場所へと寄って屈みこむ。目的を果たすために。

影時 > 「色と形は……聞いてた通りのブツで間違いねぇな。さて……」

勿論、こういう環境で生えているキノコ類は目的のものばかりではない。
色も形状も明らかに違うものも幾つもあり、食用できるものもあれば、致死性の劇毒となるものもある。
今回の採取依頼の対象となるものは一種のみであれば、他も一緒に摘むメリットはない。
ギルドから発布されている小遣い稼ぎのような採取ミッションで、今日はキノコ類の採取はなかった。
そうとなれば作業は惑いなく、淀みない。羽織の下、腰裏の雑嚢から道具を出す。
採取物を包むための柔らかい布としっかりと口を締められる袋だ。
そして、スコップ代わりと出来る苦無を雑嚢の裏に仕込んだ鞘より、すっ、と静かに抜き放つ。

「……このあたりかね?」

布を近くに敷いた後、黒い刃の切先をキノコの根、浅く積もった土に添えて慎重に穿る。
全体を傷つけないように慎重に根付いた箇所から切り離し、敷いた布の上へと運んでゆく。
その作業を数度行えば、依頼されていた個数を集めきることができる。多く採りすぎてはいけない。
採取が済めば、別の布で苦無の切先を拭い、丁寧に保護となる布で包んだ目的の品を袋に収めよう。

「水は……ああ、いやいいか。手持ちので足りる」

苦無を元の場所に収めれば、手を洗っておきたくなる。
雑嚢に依頼物を入れた袋を押し込み、右腰に吊るした水袋でキノコに触れた手指を洗う。
自生場所を思えば陽光や高温には弱いとも思われるが、直接触れた手から胞子が身体に入る恐れもあり得る。
余分な痕跡は残さない主義だが、場所が場所だ。神経質になり過ぎることもあるまい。

そう考えつつ、周囲と侵入路を振り返るように見回す。今のところ魔物等の兆候は――なさそうだ。

影時 > 「……よし」

帰るか。物陰に潜んで魔物の出入り等を確かめ、記録しておくのも多少は興味はある。
が、仕事を果たす上での優先度は低い。もとより、採取したキノコの鮮度がどれだけ保つかということもある。
乾燥させて旨味が増す類では恐らくないだろう。
もっと言えば、暇を持て余し始めた小動物たちの我慢が効かなくなりそうだ、と。
判断が定まれば、行動は早い。

足音も密やかに踵を返し、元来た進路を戻る。地上に出れば、そのまま依頼を請けたギルドへと――。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 洞窟」から影時さんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森林」にレイリエさんが現れました。
レイリエ > 街道を走る乗合馬車を途中で降り、密集する木々と獣の縄張りを掻い潜りながら道なき道を進むこと暫し。
其処は月の光も届かず、ランタンの明かりが無ければ数歩先さえ見渡すのに苦労する程に、深い緑に覆い尽くされていた。

「―――見つけました………。本当に、この森にも自生しているのね………。」

その身を低く屈めて地面へと落とした視線の先には、薄らと淡い光を放ちながら慎ましく咲く小さな花。
それは魔法薬の材料として重宝される一方、王都やその周辺では多く出回らず入手の難しい品のひとつであった。

今回の探索が徒労に終わらなかったことに安堵の息を零しながら、しかしすぐに摘み取ることはしない。
このような希少な植物は絶やしてしまわぬよう、生息箇所を幾つか見つけてからその一部を採取するのがセオリーだ。
その為、エルフの女は手近にあった岩に目印をひとつ刻んでから、
少し離れた場所の草葉を掻き分けながら手にしたランタンの明かりを頼りに再び探索を始めるのだった。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森林」にマグゴブリンさんが現れました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森林」からマグゴブリンさんが去りました。
レイリエ > 当然、森林の奥地の探索には常に危険が付き纏う。
周辺を跋扈する獣や魔物のみならず、人間を捕食する植物や危険な魔花などもこの辺りには数多く生息する。
その事実を再確認するように、身に纏った大きめの外套の下、腰に差した短杖の存在を何度も確かめる。

「―――………ッ………。」

瞬間、女の長い耳が捉えたのは此処よりも少し離れた場所で茂みの揺れる音。
それに混じって微かに聞こえる声は人よりも魔物に近しい亜人種―――ゴブリンか何かのものだろうか。
その気配を察すると女は静かに身を屈め、その腰に差した短杖に手を掛けながら息を潜める。

幸いにして、彼らがエルフ女の存在に気付いた様子は無く。
やがてその気配が遠ざかっては消えて行くのを感じ取ると、先程のものよりも深い、心からの安堵の溜息を零した。

レイリエ > 身を潜める為に一度消したランタンに再度火を灯してから、その明かりを頼りに探索を再開する。
しかし、翳したランタンの明かりは数歩先を照らすのが精一杯で、必然的に周囲への警戒は視覚よりも聴覚が頼りとなる。
遠くから聞こえる獣の遠吠え。木々の葉が風に揺れる音。微かな水音は近くを流れる川のものだろう。

長い耳が捉えるそれらの音ひとつひとつを確かめながら、同時にランタンで照らした足元にも注意を払い、
エルフの女はゆっくりとした歩みで、森林の更に奥の方へと進んでゆく。

「………あれは………。」

そうやって暫く進んだ頃、遠くでぼんやりと光る燐光の存在がエルフの女の目に留まる。
人工的な明かりとは異なる、蛍やヒカリゴケに近しい色彩を持った淡い光。
一歩、また一歩と近付く度に大きく広がるその光に吸い寄せられるかのように、女の足はその出処の方へと向かってゆく。

レイリエ > やがてその光の出処の正体を目視できる距離まで近付くと、その一帯に広がる光景にエルフの女は思わず息を呑む。
花畑、と呼ぶまでには少々心許無いが、付近を流れる小川に沿うように点々と咲いては淡い光を放つ件の花。
流れる川の水面が時折その光を受けてきらきらと輝く様は、我を忘れて見入ってしまう程に幻想的だった。

「すごい………此処ならば、必要な分を採取しても問題なさそうですね………。」

暫くして我に返った女が此処へ来た目的を思い出すと、そっと身を屈めて淡く光る花の中の一輪に手を伸ばす。
花弁は勿論、茎や根も傷付けぬよう慎重な手付きで周囲の土を掘り起こしてから、
採取したそれらを包紙に包んで肩に提げた鞄の中に収めてゆく。
その間も、周囲の警戒は怠らぬよう緊張の糸を張り巡らせながら、採取の作業は暫くの間続くのだった。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森林」からレイリエさんが去りました。