2024/12/08 のログ
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ラヴィニア > メグメール喜びヶ原街道「冒険者ギルド出張所」
今夜は夜空を見上げれば月も星々も薄雲により隠れてしまっている。
そんな夜こそ冒険者がこぞって来るはずの真夜中まで営業している『冒険者ギルド出張所併設の食堂兼坂場』。
残念ながら客足はぼちぼちで、今は半分閑古鳥が鳴いている。

で、なぜこんな場所で頭巾をかぶってエプロンをつけて、
食事が終わったテーブルを片付けているかというと、
路銀が尽きた時に偶然ここの店主に拾われて、
食事と一夜のベッドを与えられたその恩返しである。

海魔であってもヒト型に近しい形状でニンゲンに近しい思考が出来るなら『恩も義理も』あるもので、
普段手伝ってもらっている冒険者見習いが冒険からもどってこないと聞いて、
自主的に手伝っているのだ。

決して賄いを頂きたいとか、今夜も一晩宿を借りたいとか、
そんな下心があるわけが……なくもない。

客足が鈍いということは2階の宿も部屋が空いているということ、
流石に準備も水も持たずに野宿はお断りしたいのだ。
海魔、これでも立派なモンスターなのだが、飢えと渇きはトラウマになるほどきつかったのだ。

「カタ、付け、食べ残シ、飲み残シ、モッタイナ、い。」

男女どちらでも聞こえるような不可思議な声色で独り言。
この声もしゃべり方もここの店主は疑問に思わないのか、
あるいは戦災孤児が、何らかの原因で声が……と考えてくれたのか、深く聞かれることはなかった。

ならわざわざ海魔なのでとある種敵である冒険者の巣窟で、敵ですなんて自己紹介する必要はない、だから気にすることなく独り言や鼻歌を歌って仕事中である。

ゴリ、ガリガリ……バリバリ……。

感情ゼロの人形のような相貌で、お客様が割ったお皿やグラスの破片をつまみ食いをしつつだが、
これでもテキパキと仕事をしていた。

ラヴィニア > 店内のすべてのテーブルをきれいに片づけ終わると、
同時に今日の商いで発生した割れた皿やグラスも食べ終わる。
きれいに平らげて、きれいに清掃を終えたら仕事は終わり。

カウンターにパタパタと駆け寄り店主と話をすれば、
少年の手には二階の部屋のカギが握られていた。

こうして海魔は今日も生き延びることができた。
――…そもそもなんでこんな事になったのか、
それをすっかり忘失していることすら忘失しながら、
また人里での1日が終わるのだった。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 冒険者ギルド出張所」からラヴィニアさんが去りました。