2024/08/14 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 旧道」にゴットフリートさんが現れました。
ゴットフリート >  
夜の旧道は酷く酷く静かだ。
夏の熱気の音さえ感じられそうな程に静かな夜。
ただ、聞こえるのは虫の音、風の音、そして目の前の焚火の炎が爆ぜる音くらいだ。
薄っすらと紫がかった煙には魔物避けの香の独特の香りが混じる。
低級な魔物が近付き辛くなる効能を、多少なりとも改良を加えて強めている。
もっとも、中級以上のそれや野党の類には気休めにもなりはしないが。
それならばそれで、多少の備えはある。
そんなことよりも―――

「さて、休んだ後に馬車を走らせるか。
 それとも夜を明かすか、迷うところだな。」

燃える火を見下ろしながら、老貴族は嘆息する。
趣味と実益を兼ねた薬草採取。それが思ったより長引いた。
なんとか馬車を独り走らせたが、夜が更けてしばらく経つ。
焚火にかけた金属製のポットから、濃い珈琲をカップに注いで口にする。

「まあ、こうして夜を過ごすのも――」

悪くはない、と髭の奥で唇が笑みを刻む。
自然の中にいるのも、時には悪いことではない。
街の中にずっといると、知らず知らずの間に鈍ってしまうものもあるから。

ゴットフリート >  
微かに、薪の爆ぜる音がまた響く。
暑気が未だに強い季節ではあるけれど。
主要街道から離れ、湖も近いこんな場所であれば僅かな肌寒さを覚える。
また、使い込まれた金属製のポットから濃い珈琲を注ぐ。
酒を混ぜたいところだが、止めておこう。
何が出るかもわからないのだから。

「今夜はここで泊りだな――」

炎から離れれば一歩先も見えない闇夜。
月明かりも曇天に隠れてしまっている。
傍らの黒い馬車さえも、実際に存在しているのかわからない。
見晴らしの良い旧道沿いでさえもこうだ。
もし、迷う旅人や、不埒な誰かがいれば、焚火が遠くからでも目印となるだろう。
ならば、夜明けまでの数時間。
この炎と、ささやかな芳香と、孤独だけを供に過ごすのも悪くはない。

――もっとも、いささか以上に退屈であることは否めないが。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 旧道」からゴットフリートさんが去りました。