2024/02/14 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 乗合馬車」にグラムヴァルトさんが現れました。
■グラムヴァルト >
少女が馬車内の観察を始めてしばらくした頃、不意にバサリと後部の幌布が捲り上げられ、そこから長駆の影が飛び込んでくる。
靭やかで力強いその挙動と手入れの施されていない蓬髪の毛皮めいた質感は、大柄な狼でも飛び込んできたかの錯覚を見るものに与えようか。
しかし、着地音もほとんど立てず馬車中に潜り込んだ影がゆるりとその身を立ち上がらせれば長身痩躯のシルエットは獣では無く人の物であると気付く事が出来るだろう。
街道の凹凸と木の車輪が奏でるガタガタという物音が響く中、銀眼が車内を睥睨し
「―――――ふぅむ……。」
一人の少女の目を止めた。
ゴロ寝する乗客を踏みつける事なく黒髪の少女の傍らへと歩み寄り、長駆の腰を折って寄せる顔。
彫り深く、精悍に整った顔立ちなれど、白目部分の多い三白眼の形作る凶相はどう見たとて善人とは思えぬ物。
「顔は悪かねェ……が、てめェ、オスガキか? メスガキか? 臭いも妙だし、胸もねェ。」
そのまま更に寄せる顔が、少女の首筋に近付けた鼻先ですんすんと匂いを嗅ぎ、肉筋の浮き出た首を傾げる。人を人とも思わぬ己が疑問を解消することばかりを優先させた挙動は、山賊や奴隷商にも共通するもの。
■ニュア > とはいえ───眺めたとて、別に楽しくも無い顔ぶれだ。
目深に被ったフードの翳差した内、半眼にて、一人ずつを見遣り判じてゆく。
一人目、ムサい。二人目、ウルサイ。三人目──ウザい。
そりゃそう。夜間の乗合馬車での共連れなんてたかが知れている。退屈凌ぎは秒で終わった。
「はぁ――……… 、せめて景色とかさァ……… ぁ?」
閉塞感。空気も悪い事この上ない。うんざりと頬杖の儘、馬車の後部──幌布の上がらぬ暗がりを見遣った、とき。
娘の双眸が唖然と見開かれるは、ひらかぬ幌幕が捲れ、ふかい夜が忍び込んだ、気がしたから。
「──────… は? 」
闇か、翳か。それか、獣。
それが立ち上がり、人のカタチを為したとき、奇妙に目を惹いた。
思わず呆けて───いや。いやいや、そんな場合じゃない、と気づく。
しかもその長躯はなにやら此方に来るではないか。思わず───…腰元の短剣に利き手が伸び、背が引いた。
「 ッ───はァ? ガ、ガキじゃないけどオスだよ。てゆうか無賃乗車してんなよ… なんなの!?」
ぐぅぅぅ、と華奢な身を反らし、噛み付くように捲し立てた。
何で突然嗅がれなきゃなんないんだとばかり、威勢だけを武器にねめつけて。
多分これは───ヤバい手合い。気圧されたら、喰われる。そういう獣な気がした。
■グラムヴァルト >
傲岸不遜に小躯を見下ろす銀瞳は、少女が護身の物と思しき短剣の柄に手を伸ばす挙措に油断無く視線を走らせる。にも関わらず、何ら意に介す事なく近付いて、無防備に首筋を晒すかの様に小柄な体躯の匂いを嗅ぐ。
「―――アァ? ンだよオスガキか。………にしちゃあ女の臭いが強すぎンだよなァ。 ―――うへ、マジでチンコ付いてんじゃねェか。」
他者に気を使う事もなく発せられるテノールボイスと、それに噛みつく少女の高音。乗客の何人かが目を擦りながら身を起こす。
そんな周囲の変化には何の興味も示さぬまま、無造作に動かす長腕はその先端をするりと少女の股間に差し込ませて揉み撫でる。幼気な肉棒に触れ、乙女の割れ目を撫で上げる長く骨ばった指先。
素人には決して反応する事の適わぬ達人の動きによる不意打ちは、女の身に付いているはずもない肉棒の存在を感じ取りつつ、しかし、妙な違和感に促されたのかその股ぐらを弄り続ける。
男の会陰とは全く事なる雌溝に指腹を押し当て、クニクニとその形状を確認するかの様に蠢き這う。
■ニュア > 男は、幌馬車の薄燈にすら映えた。闇色を纏うにも拘わらず、夜を従えていた。
だから、胸が騒ぐ。しかも───すこぶる宜しく無い騒ぎ方。
蛇に睨まれた蛙になるわけには、流石にいかずに。
乗り合いの中でいっとうか弱い娘風貌が踏み入った賊に絡まれてるのだ。
声を荒げてれば誰か一人くらい助けるだろう、いや助けろよ、と。──…少なからずそんな気持ちもあり。
「知らねえよ…ッ…!ヤリすぎて嗅覚腐ってんじゃないの!? てゆうかホント何──… ちょ!?」
思わず張りあげた声質はアルト。耳障りは雄とも雌ともつかぬ低めた威嚇だったろう。
遠慮無く下腹に手が伸びるに到って、声色は更に跳ね上がり。───そこで、甘口の甲高さが滲み。
「~~~~~ふざ、… ッけんな! 勝手に触るんじゃ、ねぇ……!」
小さな膨らみの、僅か下――控え目な雌の柔筋を隠し、男の手がそれを探り当てた、時。
娘の繊手は刀を抜く。フードは何時しか肩から黒髪を零れさせた。
ほっそりとした細面。儚げな、──…表情を屈辱にわなわなと震わせた、そんな貌。
そして、刃は男と娘の間隙に、横振られるのだ。
無礼を通り越して侮辱だろう横暴に。牽制の一手として。
■グラムヴァルト > この場に居合わせた他者からの救いを求める少女の気持ちは最もな物。
しかし、他の乗客が馬車の走り始めた際には同乗していなかったはずの不審者に食って掛かるどころか、咳き一つ漏らさぬのは、長駆から滲む暴力の気配を素人目にも感じ取っているからに他ならない。
下手に動いてこの男の癇に障れば、次の瞬間には殴り殺されたとておかしくない。血も涙もない山賊に抜き身の蛮刀を突きつけられているかの心地を、皆一様に味わっていた。
「あぁ、溜まり過ぎて少々おかしくなってるってぇのはあるかも知れねぇなァ。例えオスガキだろうとてめェくらい器量が良けりゃ、ヤギに突っ込むよかぁナンボかマシだろ。 …………にしても、てめぇ、臭いだけじゃなくて妙な身体――――おぉっとォ!」
未成熟な肉棒の下、男であれば陰嚢と会陰と膨らみが存在しているだろう箇所を嬲る指先。ぷくりと膨らむ恥丘の中央、男には存在せぬ肉溝を指腹に感じ取り、こいつの身体はどうなってやがるんだとばかりに撫で回す。
そんな傍若無人な振る舞いについにキレたか、素早く動いた少女の手が白刃を閃かせ、次の瞬間男の手指にその手首を掴み取られていた。
つい先程まで興味深げに少女の股ぐらを弄んでいたその手が、少女自身のぬくもりも残る手の平でガッチリと鷲掴む手首。然程の力を込めているようには見えぬと言うのに、万力に締め付けられているかの力強さ。
女の手指とはまるで異なるサメ肌めいたザラ付きすら感じられる握撃は、少女の本能に知らしめる事だろう。『絶対に勝てない』という絶望的な力量差を。
「ま、このままここで周りの連中にも見せつけながら確認するってェのも悪かねェが………オレもすっかりその気になっちまったからなァ。場所を移してじっくり愉しませてもらうぜ。」
折り曲げていた腰を伸ばし掴んだ少女の細腕を引く。
同時にその身を反転させて掴んだ腕を捻り上げれば、小躯はすっぽり男の胸板の中。剣持つ腕を後手に捻り上げられ、背後から抱きすくめられる様な形となる。
そうして少女とも少年ともつかぬ獲物を捉えた狼は、そのまま馬車後部へと身を投げ出す。
捲れ上がる幌布。街灯の一つも存在しない屋外の暗がりに消える不審者と少女の姿。
――――しばし後、乗客から話を聞いた御者は探索ではなくそのまま王都へと急ぎ、衛兵への通報という形での対処を選ぶ事となる。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 乗合馬車」からグラムヴァルトさんが去りました。
■ニュア > 娘とて護身の心得はあった。俊敏さに物を言わせた細腕の一撃は、野犬一匹だったなら難無く仕留めただろう。けれど。
牙を翻した途端、気付くのだ。──────あ。無理だ。これは。闇に棲まう獰猛な狼の類だ、と。
掴まれた手首が白み、血の気を失せさせ。威勢を失った舌の根が、ヒリつき乾いて───… 停滞した。
早まる鼓動に圧し潰されるを拒むように、娘は再度、声を荒げるのだ。
「~~~~~~~ッ ぉ、…お前らも何見てんのさ!? 黙って見てないで助けろよ!! ────…だぁーかーらーーぁ!離せって!!クソが!!」
そりゃあそうだよな、思う。馬車に蟠り息を殺す男らにどうにかできる手合いじゃないのだし。
莫迦は莫迦なりに莫迦じゃなかったんだ、なんて冷静に思いつに───此方は、喧しく声を上げてやろう。
煩いクソガキだと愛想つかれた方が断然マシなので、そりゃあもう盛大に。
猫被りなんてお構いなし、腕を張り爪を立てて力を込め。────── ぎゃあぎゃあと。
それは嵐か疾風か。見る見る間に、拐かされた娘の姿は闇に攫われ───。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 乗合馬車」からニュアさんが去りました。