2024/01/07 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道「まれびとの道」」にゴットフリートさんが現れました。
ゴットフリート >  
深夜。王都から馬車で半日ほどの簡易的な休憩所。
常駐する者もおらず、暖炉のある広めの部屋と奥には何人か分の寝台がある。
そういう、旅行く者には助かるだろうが、少なくとも貴族が好んで利用するような場所ではない。
けれど休憩所の入口、馬を休める場所には不似合いな貴族が使うような馬車が停まっていた。
暖炉の灯りが漏れる室内には、これまた不似合いな貴族の服を着た初老の男性が一人。
御者や、従者の類を一人も連れることなく、木製のカップを片手に椅子に腰を下ろしていた。

「今夜は随分冷えるな……。」

室内に響く、独り言を聞くべき相手はいない。
灰色の視線を揺れる炎に向けて、酒精に温められた息を吐き出す。
木製のカップには香草をつけこんだ温めた酒。
一人旅の帰り、という風情だ。
無論、こんなことを度々する訳ではない。
ただ、一人が良い場合もある。誰にも知られぬように外出せねばならない時もある。
例えば、誰かと密約を交わすために。あるいは、非合法な薬物の材料を仕入れに行くために。
関わるものが、知るものが少なければ少ない程良い状況がある。

「良い取引だったな――」

今回はそういう旅の一環だった、というだけの話だ。
けれども、護衛の類の一人も連れないのは――という点も問題はない。

……キリ――キリ――……。

揺らめく暖炉、陽炎が一瞬不自然な形に揺らめく。
主と、酒瓶の置かれたテーブルの傍らに何か巨大なものがいるかのように。