2023/12/14 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 冒険者ギルド出張所」に影時さんが現れました。
影時 > 急ぎの仕事というのは意外と実入りがあるものだが、同時に面倒でもある。
属する冒険者ギルドに顔を出した際、運よくまたは運悪く人手がなく、声をかけられた際に二つ返事で請け負ってしまった。
それが運の尽きである。足の速い馬に引かせた早便の馬車の護衛というのは、楽な仕事のようで楽ではない。
何せ、激しく揺れる馬車に乗るのだ。
それだけで不慣れなものはすぐに酔ってしまう。慣れていてもなお、ガンガンゴツゴツと揺れる荷台は居心地が良いものではない。

「……――荷下ろしの手伝いまでしちまうたぁ、ね。俺もつくづく人が良過ぎるもんだ」

そんなぼやきが零れるのは、街道沿いに幾つも立てられた冒険者ギルド出張所の傍の広場。
何台もの馬車が止められ、荷下ろしと補給を経て発車するさまは場所が場所なだけに王都には負けるが忙しい。
先程まで乗っていた馬車に摘まれた樽や木箱、数々の布袋を下ろし、その後に御者から受け取る証書を雑嚢に仕舞う。
依頼は片道の護衛であり、果たした仕事の報酬は王都のギルドの窓口に証書を提出することで受け取る。今回はそういう契約だ。
空を仰げば薄曇り。太陽は雲の向こうだが、まだ夕刻までには少しは時間がある。

「乗合馬車を捕まえてから帰るか、それとも“走って”帰るか。……いや、ついでだ。何か無ェか覗いてくか」

冗談とも本気ともつかない言葉を吐き出しつつ、ぶらりと手近に見えたギルド出張所の方へと歩む。
冒険者のみならず、行商人たちも利用するためか。建物は意外と大きく人の出入りもそれなりにあるらしい。
扉を押し開き、向け遣られる奇異とも興味ともつかぬ眼差しを受け流しつつ、貼りだされた掲示板の方へと向かおう。
何か面白いものがあれば良し。無ければ無いでも割り切れる。出先で容易く稼げると思うのは、早計が過ぎる。

影時 > 「めぼしいのがソッコーで掃けるトコばかりは、何処も大して変わりねぇか」

面白いものがあれば、という僅かな期待は出張所の受付近くの壁にある掲示板を見れば、苦笑と共に揮発する。
簡単で稼ぎやすそうな仕事ほど、真っ先に奪い合いの末に掃けるのはどの土地のギルドも変わりないらしい。
その後に残る仕事やら依頼というのは、手間暇のわりに実入りが少ないものばかりだろう。
危険と引き換えに稼げるハイリスクハイリターンな仕事もまた、腕に覚えがあるものが奪い合うのだから。
残っているのは採取というよりは、害獣、または害獣同然に見なされている野盗の掃討のようだ。

(やっても良いンだが、手間だよなぁ……)

獣同然とされているのは風体の問題か、それとも悪辣過ぎて害獣と見做すに至ったクチか。
否、どちらもかもしれない。そこまで至るとまだ、獣の方が利用価値を見出されるだけマシともされる。
獣は種にもよるが毛皮を剥げるうえに、肉は食用に出来る。だが、堕落し切った人間はそうではない。
ひょいと肩を竦めつつ、隣接する酒場の方に向かう。
この時間でも人の入りが良く、出入りの流れもあるのは、行商人も顧客に見込んだ品揃えの良さなのだろう。

「あー、お勧めのやつをくれ。……あと、米の酒はあるかね? ……無いか」

カウンターの空きを陣取れば、口元を隠す襟巻を引き下ろしつつ目に入った品書きを頼もう。
遊びついでに偶に呑みたくなる酒の有無を問えば、「ンなもの無ぇよ」というにべもない回答がカウンターの向こうより返る。
だよなぁ、と思いっきり肩を竦めれば、大人しく麦酒を頼む。