2025/05/10 のログ
■クロス > (パリィを続ける度に相手もかなり疲労が溜まっているのがよく分かった。
その結果、持っていた片方の剣が遥か遠くへと飛んでいくのが見えており、戦力を削ったことを確信した。
その後もこちらの攻撃が当たり、相手の右肩にヒットする感触を感じながらも地面へと叩き落とすことに成功した。)
「あ?なんだ…」
(落としたは良いもののもう片方の武器をこちらに向けて反撃を仕掛けてくるかと考えていた。
だが、相手が行ったのは逆の行動である。
通常、小さなナイフ上の物を扱うとなれば距離を詰め、隙を伺いながらも小まめにダメージを与えるかもしくは致命傷を与えるかがセオリーである。
それを行わないことに疑問を考えたが、そのカラクリを見極めれるほど情報は得られていなかったのだ。)
「…ッ!!」
(相手の行動呼んでいる最中に背後から強烈な気配を感じる。
それを感知すればすぐさま飛び跳ねて壁に張り付くかのように移動する。
男の予想は正しく、遠くへ飛ばしていたはずの剣が戻ってきたのであった。
魔道具の様な仕組みのある武器、避けたせいで持ち主の元へ戻っていってしまい、再び二本揃ってしまったのだった。)
「チッ、めんどくせぇ…」
(舌打ちを打てば路上に響き渡り、再度地面に足を下ろす。
その後は直立をし、相手の動きを伺う体制へと変える。
こちらからは行動せず、相手の攻撃を待ち、逃げるならば追跡をする…どのような状況が起こったとしても動けるよう、相手の小さな動きも逃がさぬように睨み続ける。)
■篝 > 激しい衝撃の直後はさほどではなかった右肩の痛みは、呼吸を繰り返すたびに明確な熱と鈍痛に変わって行く。
声を上げずにいられたのは、日頃の鍛錬の賜物であった。
だが、当然また先ほどと同じ動きを見せられるような状態ではない。
引き戻した黒い剣は、またも男に傷を与えること敵わず手元へと戻ってくる。それを白刃で絡めとるように器用に受け止め、黒剣を再び右手に握った。
そこまでは良い。が、右腕に力が上手く入らない。
小柄は上がらない右腕を地面に引きずりながら、浅く呼吸を繰り返す。
視線は男に向けたまま、逸らせば次は無いと此方も警戒を続けていた。
「…………」
硬直状態のまま、暫くの無言が続いた。
小柄は不得手な交渉に再び頭を捻り考え込む。
そして、色々考えた結果――……
「私は、何も知らない。無関係……です」
ようやく口を開いて言うのは先の繰り返しであった。だが、その後に続く言葉は違う。
「です、が。貴方に損害を与えたこと……は、謝罪します。
それでは、不足でしょうか? 不足であるならば、不足分の請求を……推奨します」
慎重に言葉を選び、敵意も殺意も見せず尋ねる。
このまま逃げ帰って主人がばれるのが最悪の事態。
それなら、このまま自分と相手もろとも全て爆薬で吹き飛ばすと言う選択もあったが、それでこの男を仕留められるかと言う疑問が浮かび躊躇った。
故の交渉である。謝ってお終い、とはいかないのはわかっているが、それ以外に良い解決方法が小柄には見つからなかった。
■クロス > 「・・・。」
(ポケットに手を入れながらその場に直立している男は相手の状況を把握していた。
先ほどの一撃により肩には強烈なダメージを受けており、地面に引きずっている。
おまけに呼吸も浅い、かなり息が上がっているのが伺えていたのだ。
恐らくは先ほどの様にこの狭い空間を生かしての戦い方は難しくなり、単純な攻撃しか出せないと読んだのだった。)
「…まだ言うか。
だったら、テメェの体をバラシて売って…」
(男自身もあまり好んではいないが仕事の都合で様々な相手と関係を持っている。
貧民地区の住民はもちろんの事、裏社会を牛耳るマフィアの様な集団から違法入国や犯罪者…数えたらキリがない程に縁がある。
小柄な存在でも臓器でも取り出せばそれなりの金にはなるだろう。
しらばっくれる相手の発言に更に青筋を浮かばせて脅すが、その後の言葉を聞けばゆっくりと消えていく。)
「…ほぅ、お前さんが代わりにか…。」
(相手がその発言をするとは思えないために少々驚いた。
男としては客が死に金が返ってこないことが一番面倒であり、そのうえで犯人が分かればなおの事怒りが爆発して当然なのであった。
無関係を通そうが証拠はしっかりと掴んでいるためにいくらでも証明が出来たからこそ、今ここで邪魔をされたことへの怒りを発散していたのだ。
そんな相手が自分が返済すると言われれば仕事の目的を果たせるため、男も殺す気で相手に襲い掛かるつもりはなくなったのだ。)
「…そらッ、こいつはそこで死んだ野郎の契約書だ。
この名義をお前の名前に変更する、その後は書かれている請求額を支払えよ。
…言っておくが不意を突こうが、名前だけ書いて逃げようが無駄な事だ…そんなことをすれば、それ相応の事をさせてもらうかなら…。」
(革ジャンの内側を漁ると巻かれた紙を取り出し広げる。
それは契約書であり、金額や条件に名前など借り入れをするための契約がなされている。
再度丸めて相手の足元目掛けて投げて渡し契約を結ぼうとする。
その後、定められた請求額が支払えば男も大人しくこの場を引くことにするのであった。)
■篝 > 「…………」
一度ついた嘘を付き通せば、当たり前のように男を苛立たせた。
煽るつもりも、喧嘩を売るつもりもないが、それ以外に答えられる言葉がない。
男の口から恐ろしい脅し文句が聞こえるも小柄は変わらず、ストールの下は涼し気な無表情のままであった。
しかし、こちらの提案には意外と良い反応を返してくる。
交渉としては最善の手が打てたと内心で安堵する中、男が掲示した請求内容に思わず口を閉ざしてしまう。
ターゲットが借金をしているとは聞いたが、何故それの尻ぬぐいを小柄がしなければならないのか。
冷静になってくると胸の内には困惑しか残らなかった。
「……脅しですね。強請ですね。非道ですね」
暗殺者がいけしゃあしゃあと借金取りに思いつく限りの文句を言う。
足元に投げ出された契約書を見下ろし、背負わされそうになっている金額を頭の中で浮かべ、逃げても無駄だと言われているのに姿をくらませることを第一に想定して計画を練ってしまう。
「元の契約者の親族……または恋人などの情報を提供する、と言う選択は可能でしょうか?
……あるいは、第三の選択はありますか?」
此方もなかなか非道な提案をしつつ。
「今回の衝突は、互いに非があります。譲歩を」
その場に腰を下ろし、淡々と。或いは堂々と。小柄は交渉と言う名の我儘を言う。
借金の返済に追われ冒険者業に精を出せば、主人の命令を優先できなくなる。アサシンとしての仕事ができない。それは死活問題だった。
■クロス > 「何を言ってやがる?正当だろうがよ…
俺の所で俺の金を借り、そして返すはずが死んでそれが無理になった…となれば、殺したテメェが支払うのが道理だろうがよ。」
(文句を言うがこちらも全く後ろめたそうな様子は全くない。
怒りが消えた男の顔は通常の無表情へと戻ったが、目つきの悪いその目元は全くもって変わらないと言った様子だ。
契約書を見下ろし、数秒沈黙を作り上げている様子を見ればおそらくは逃亡の計画を立てているだろうと男にはお見通しであった。
その時はその時、ハラワタを引きずり出して売りさばくだけであった。)
「…親族やら恋人の情報…それを提供して俺に何のメリットがある?
探すぐらいなそこら辺の関係者を見つけて、それを元に探せば簡単に見つかるだけだ…。
…それとも何か?お前が俺の相手をするっとでも言うのか?
言っておくが、俺のがそこら辺に居る男の元と一緒とは思うな。
テメェなんざ穴が裂けて泣き叫んじまうだろうよ…。」
(先ほどの戦闘でも見せた通り、男の能力はかなり高い。
嗅覚や視覚と言った五感を始め、彼の仕事上での付き合いによって生まれた情報網は広い。
仮に情報を提供されて探したところで泣きつかれて面倒になることしか想像できず、返済も長期になることになるだろう。
そして、第三の選択肢と言われれば…あるのはそういうものしかないだろう。
だが、どこまでも規格外な男の体、目の前の存在が相手を務まるとは思っておらず、苦渋の決断もするのならば考えるのであった。)
「言っておくが、俺は仕事にはびた一文も許すつもりはねぇ…
金を支払えと言えば、しっかりとその金額まで払わせる。
それが無理なら、臓器でも体でも売って作るだけだ…お前に残されているのはそういう道だけってことだぜ…。」
(甘やかすことを許さない男。
借りた金は返し、無理ならば手段を作って返済させる。
まるで鬼の所業であるがそれが男のやり方であり、責任を持たせる方法でもあったのだ。)
■篝 > 「対象の身内に借金を支払わせる。そちらの方が道理が通っている……と、考えます」
相手の言う因果応報の理論もわかるが、そんな事情はこちらには関係ないと言うのが正直なところだった。
まったく無関係――殺し、殺された関係を無とは言い難いが、それでも身内の方がずっと小柄より縁も所縁もあるだろうと言いたいらしい。
まぁ、簡単に手に入る情報だと言われてしまえば、否定もできないので口を閉ざしてしまうわけだが。
「……相手? ――ああ、そーゆー」
一瞬首を捻り聞き返し、続く言葉を聞けばすぐに納得して小さく息をついた。
声の抑揚のなさは相変わらずながら、多少低くなる。
「貴方の身体に興味はありません。
加えて、私は貴方のような雄は見飽きています。粗暴で身勝手な理性のない獣は森やダンジョンでも良く見ます。
私が泣き叫ぶほど無様をさらすことは、けしてありません。絶対に……あり得ない。
もしもの話だとしても不愉快です」
数分前まで斬り合っていた時には感情一つ見せなかったと言うのに、少し湧いてきた苛立ちから饒舌に。
男を見上げはっきりと、淡々と言い返し、全てを言い切れば頭を振って気を紛らわせ、また無口に戻る。
「残念ですが、体を切り売りする許可は出ていません。
ん……あ。では、出世払いを希望します」
手厳しく追い込んで来る男に、この期に及んでまだ小柄はふざけた提案をする。
これまた大真面目に言っているのだから性質が悪い。
■クロス > 「んなことはわかってんだよ…。
問題は時間がかかりすぎるってことだ…。」
(先ほどの男相手ならばどのような方法でも返済させることが出来る。
だが、家族や恋人と言った関係者の場合はそう簡単に済ませることが出来ないと言うわけだ。
それ以前に探す面倒も発生するためあまりにも非効率的なのであった。)
「随分と言ってくれるな?
俺も最初っからそんな気はねぇよ…本気で殺り合った相手となんざそそられる気もねぇんだし、抱くつもりもねぇんだからな…。」
(無論、男もそれを望んでいる訳はなかった。
元より性欲の強い性質であるが、流石に客を殺されて面倒ごとを増やされ、そのうえでタイマンを貼る様な状況になって興奮するような程変わった性質は無かった。
故に初めて揺れた相手の感情にも揺るがず、むしろハッキリと言われて清々した気分となっていたのだった。)
「・・・。」
(どこまでも無表情で淡々としている口調で話されるといよいよ男も頭を抑える。
深いため息を漏らせば小声で『めんどくせぇ…』と漏らし、顔面に自身の手を貼りつかせながら顔の皮を伸ばして拭ったのだった。)
「わかったよ…奴の死亡は事故ってことにして親族やら関係者やらに請求することにするさね…。
とりあえず、もうお前には無関係な話だな…」
(投げて落とした契約書を懐に回収して煙草を取り出して火を灯す。
深い呼吸で半分程吸い、煙を吐き出して大人しくクールダウンすることにしたのだった。
恐らく、これ以上やりくりしても相手から請求することはできないだろうし、だからと言って仕留めた所でメリットも無い。
交渉も無駄だと考えれば大人しく切り上げるしかないと思い、少々飽き飽きした様子で手を打とうとするのであった。
そう思い、煙草を片付けてポケットに手を入れると指先に当たる硬い感触。
取り出せば、先ほど拾った相手の物とされる小瓶が入っていたのだった。
戦闘中、邪魔になると思い途中で仕舞っていたのを今思い出した。)
「…これ、お前に返すぞ。
俺が回収して脅しに使おうが、どっかの質屋に売ろうと考えたが…まぁ、面倒だと思ったから却下だ。」
(そのまま、小瓶を相手へと投げ捨てる。
今度こそ回収して不意を打つことも再度取ることもしない。
相手がキャッチすればそれはそのまま返す、ただそれだけのことになる。)
■篝 > 流石専門。ごもっともな意見に頷き返し、これも駄目かと目を伏せまた悩む。
「それはお互い様……」
相手は思ったままに言い、此方も正直に言い返した結果である。
小柄は特に罪悪感を持つでもなくぼんやりと眺めていた。
ふと、相手の言葉に引っ掛かりを覚え、また地面に落ちている契約書に目を向け思案する。
相手が言うそそらない理由はよくわかる。
少し前まで殺し合っていた関係なのに褥を共にするなど、それこそ獣だ。
そういう点では歯止めがきいているのだから、この男はまだましなのだろう……。非道ではあるが。
「……確認をしたいことが二つできました」
再び煙草の煙が闇夜に漂い始める様子を見上げながら、小柄は尋ねる。
「一つ、私が何かの形で支払えば、その借金は帳消しに……本当に誰の負債にも、ならないのでしょうか?」
自己犠牲などするつもりはないが、相手の答えを確かめる為の質問を先に投げかける。
二つ目は、放り投げられた小瓶を慌てて片手でキャッチして、ホッと息を吐いてから再び視線を上げて。
「二つ、私の値段は……貴方なら、幾らをつけるのでしょうか?」
興味が半分、他者からの評価を確かめたい気持ち半分だった。
顔も、声も、種族も、性別すら隠している状態で尋ねることではないのだが、聞いてみたいと思ってしまった。
値が付いたのは昔、奴隷として売られた時と、主人に飼われた時。
今なら、どれくらい自分の価値は上がったか……。
小瓶を懐に片付け、双剣をホルダーに戻して立ち上がる。
■クロス > 「あぁ?確認だぁ…?」
(互いにボロクソに言い合ったのにも関わらずに疑問を持つ様子に対して片眉を上げる。
だが、まぁ答えるだけタダなのだから聞いておくかと素直に聞いた。
聞かれた質問は二つ。
一つは帳消し、もう一つは評価であった。
片方は答えやすい内容であったが、もう片方は答えにくい質問であり、少し面倒だと考えてしまったのだった。)
「…そうだな。
さっき見せた契約書、あれに書かれた通りの金額か…もしくはそれ相応の物を払いさえすればそれ以上に請求することはねぇよ…。」
(金融業とはそういうものだ。
目的はどうであれ金が必要であり、そのために借りたのだからそれを返すのは当然の事。
少しばかりの利息と合わせて定められた請求額、それ通りに収めるかもしくはそれに相応しい物を納品すれば契約は終了するのである。
ただし、見合っているかどうかは男の感覚次第である。)
「もう一つの質問だが…それは知らん。
お前さんとは初めてあったし、拳を交えたのも初めてだ…評価なんざつけることなんか出来ねぇよ。
だが、まぁ…お前さんの動きから見て、おそらくアサシンだろ?
そらなら、成長する見込みはあるんじゃねぇのか…?」
(男も基本的に他者を評価することはあまりない。
まして、今日初めて会った相手にどうこう言えるほどの物も見いだせていないのだから。
だが、拳を交えて感じた事はある。
それは、アサシンとしての才能はしっかりとあると言うことと、今見えている相手の外見。
どういうわけか違和感がある。
ただ、布で姿を隠しているだけでなく、その上からもう一枚姿を隠してる…そんな違和感を覚えているがそれはおそらく相手の術か魔術の類だろうと予想した。
それを考えれば、かなり高い評価なのではないか?
男はそう思うのであった。)
■篝 > 「……そうですか。貴方は非道ですが、悪徳ではないことは理解しました」
今回のようなトラブルは、上手くやれば二重で集金することも可能な案件である。
それをわからない相手ではないのは手慣れた様子からわかっている。
脅された弾みに散々なことを言ったが、金融業の越えてはならない一線を越えていないなら……。
納得と首肯を返し、次の回答を待った。
「…………アサシン……では、ないけれど。……成長」
この惨状の犯人ではないと、未だにそこだけは認めず。アサシンかと確認する声に、フルフルと首を横に振った。
一通り話を聞き終え、またコクンと頷く。
「わかりました。それなら、良かった……」
小さく独り言のように零し、重い右腕を反対の手で抱えるようにして持つ。
小柄が向けた質問の真意。
それは、その借金を返すに見合うだけの価値が自分の能力や体にあるのか、わからなくなったから。
ここしばらく失敗が目立つことが多く、アサシンとして価値を主人に示せているか不安があった。
今日などは、目撃者を消すこともできず、返り討ちにあって情けをかけられる始末とくれば自信も減る。
その自信喪失を多少なり回復してくれた相手には小さく会釈を返した。
「評価をいただき、感謝します」
■クロス > 「なんとでも言え、ここで生まれて育った輩なんざどいつも人でなしばかりなんだからな…」
(悪徳かどうかは人それぞれであるが、男自身からすれば別に金にどぎついわけではない。
父親の後を継いだだけの事であり、金にも困っていないために恐らくはここ、貧民地区の中ではまだマシな部類の商いとなっていることだろう。)
「・・・。」
(アサシンであることを否定するが、それならばあの動きができること自体は大したことだと思えた。
その後も独り言を呟き、感謝すると言われると細く鋭く睨む様な目が大きく開く。
鼻で軽く息を吐き出せば頭を掻き、少しばかり牙をギリッと歯ぎしりをする。)
「あぁ…めんどくせぇなぁ…」
(まるでイラついているかのように呟くと懐から小さな麻袋を取り出す。
そして、それを無理やり相手に渡そうとするのであった。
使い物にならなくなった腕を抱える様にして持つ腕の間か、手にかはともかくとして押し付ける様に金貨の入ったそれを渡したのだった。)
「ったく、感謝なんざするんじゃねぇよ。
俺はお前を殺そうともしたし、腕も折った野郎なんだ…そんな奴に礼なんかやる必要はねぇんだよ…。
その金貨で折れた腕でも直しとけ。
…とにかく、二度と俺の仕事の邪魔はするなよ?
わかったな」
(押し付ければそのまま即座に背後を見せて一方的に言い放つ。
まるで照れ隠しの様な対応をすれば煙草を一本吸い切り、吸殻をそこら辺に捨てて足先で踏みつぶす。
新しい煙草を再度一本取り出せばそのまま口に咥え、そのまま男が向いた方向へ歩いていく。
その場から去る様に、一人の小柄な存在と転がる男たちの元から去る様に居なくなろうとするのであった…。)
■篝 > 「富裕地区の人間も、腹の中身は同じです。どう生きるかが問題なのだと、そのように習いました」
二重の意味で腹の中身。文字通り、腹を裂いて見たことがあるが故の言葉である。
互いの素性を“借金取り”と“暗殺者”程度しか知らないが、面倒だなんだかんだと言いながら大損害を与えた相手を見逃す相手は、それなりに良い生き方をしているのだろうと納得しつつ。
突然黙り込んだかと思えば、目を瞠り、何故か悪態をつかれた。
何を考えているのか、急に金を押し渡されれば緩く頭を傾ける。
「何故ですか?」
純粋な疑問をまた投げかけ、赤い瞳でジッと男を見上げた。
「他者に感謝をされることは、良いことです。何故怒るのか、理解に苦しみます……。
殺そうとしたのはお互い様です。怪我をしたのは、私があなたより弱いと言うだけのことです」
金を施すことも、また相手にとっては情けをかける一環なのかとぼんやり考えながら、渡された袋を返すことも失礼になるのではと思うと、不思議そうに視線を向けるだけで終わってしまう。
二度と仕事の邪魔をするなとの忠告には、返事はせずに黙っていた。
それはそれ。仕事とあらば関係なくなるのも、またお互い様だと胸中で思いながら。
「……損ばかりをしたがる、変わった金貸し。初めて見た」
去って行く背中を見送り、ポツリとまた独り言をつぶやくのだった――。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からクロスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」から篝さんが去りました。