2025/02/27 のログ
レト > 理不尽に耐え忍ぶ精神労働負荷は半端ない。
中には既に、こんな仕事をいつまで続けるのかと自問自答している者さえいるに違いない。
そこで不意に発された、冒険者稼業を薦める声には目を丸くする。
しばしの沈黙の後、一同は皆してためらいを捨てて口を開けば

『俺明日に退職の相談しにいこっかなー』
『冒険者の方が夢あるしカッコいいよな』
『ヤバい仕事は受けない自由もあるし』

口々に始まる、衛兵から冒険者への転身を本気で打診する声。
冒険者生活も決して楽とは言えず、組織という後ろ盾がなくなるが窮屈さを感じるならアリかもしれない。
中には『レヴィさんと働けるんだろ?』と早速ふしだらな気持ちが前面に出ている者まで。
男は冷や汗をかいて同僚たちの移り気に引き気味だったが、その気が全くない訳ではなさそうな顔だった。

「メット割れちまうかも……」

レンガなんて重量のあるものが、家屋の上からなんて想像するまでもなく殺傷力が凄まじい。
手で持ち上げて殴りつけても人を殺しうる威力なのに、なんて恐ろしい事をするものだと肝が冷える。
野ではあるもの全てを使った殺しの知恵が横行しており、非武装の人間でも恐ろしいと再認識する男だった。

(この中の誰かはやってたかもな。……そうしたくなる子なのは間違いねぇけど)

顔合わせの時点であなたを可憐な少女とばかり見ていて、いい顔をしていた若い衛兵たちを思い返し。
上が上なら、二人きりになればきっと、くだらない考えが実行に出てたに違いないと遠い目をする。
ともあれ、仕事が終わるまで油断はできない。レンガを落とされるかもしれないくだりに死の危険を実感した男たちは、
案内に従って合流地点へと向かい、開けた場に戻ってくれば衛兵たちは挙ってその場に尻もちをついた。


「っふぅ~……今日の巡回、終わりっ!!!解散だぜみんな。
 レヴィさん、本当に今日は助かりました。今回の報酬ですけど、細かいのがなくて」

そうして、あなたのもとへ近づいていけば懐から金銭を取り出し、依頼書に書かれていた額を計算する。
余りが出る額だったが、少し考えた後に「面倒だし特別手当ってことで」とおつりは要らないと伝えよう。

足手まとい同然の不慣れな同僚たちも全員無事なのは、まぎれもないエキスパートの導きあってのもの。
久々のまともな助っ人に、衛兵たちは頭を下げて感謝を伝えた。

レヴィ > 生きるために仕事は必要ではあるが、できるだけ苦労は避けたいと考えている自分。
そういう意味では冒険者は天職であり、衛兵のようなお堅い仕事はまさに合わない。
そして上官に苦労している男たちを見れば、その連携の良さに冒険者でも行けるのではないかと勧めてしまい。

その言葉に口々に始まる転身を打診する声に本当に大変なのだと実感し。
後ろ盾こそなくなるが、仕事は選べ、慣れてしまえば十分稼げる仕事なので変わるなら頼りになる仲間が増えると歓迎であり。
責任者の男も止める様子はないことに次に会うときは全員冒険者かもと考えたりして。

「メットで済めば御の字だよ」

襲撃者からすればメット一つを諦めれば、残りを丸ごと得ることができる。
メットの心配をする男に、メットより命の心配ね、とくぎを刺し。
貧民地区ではある意味どんな手段でも殺しに来る輩もいるので警戒は忘れてはいけなく。

そして今回はセクハラやあからさまなお誘いをしてくる者が居なかったことに気をよくし。
もしいたりすれば、その者は危険地帯に置いてきたかもしれないが、それよりも身の危険を再認識した男たちは真面目の一言。

そんな男たちを案内して最初に合流した場所につけば、緊張が解けたのか各々に座り込むのを見ては、お疲れさまと笑い。

「気にしなくていいよ。皆もお疲れ様。
それならお釣りを……いいの?」

解散を告げ、自分にお礼を告げた後に近づいてくる男に笑みを向け。
報酬を受け取るのだが細かいのがないとのこと。
お釣りを取り出そうとするが、特別手当、おつりはいらないと聞けば、ありがとう、と笑いかけ。

衛兵たちに頭を下げて感謝をされれば照れ臭そうにし、また依頼を待ってるね、と告げては手を振って去っていくこととなって。

レト > 彼らは同期や親しい間柄という訳ではないが、上からの圧力や閉塞感がかえって仲間意識を生んだのかもしれない。
年齢も近く苦労も分かち合ったとなれば、自ずと阿吽の呼吸が取れる。
上官不在でも、ある程度は自身で行動できるなら冒険者は決して悪くはないが、指示待ち人間には困難が付き纏うかもしれない。
自分で仕事を選べるとは、言い換えれば自分で仕事を取らなければいけない。

ものぐさな男は、偉いだけの人間が美味いところを奪っていくなら と考えたが果たして自分が続くのかと考える冷静さも残っていた。

「確かに……。ま、ギルドじゃなく中古屋にしか置いてなさそうな使い古しの支給品なんですけど」

駆け出し冒険者向けの防具屋でもそれなりに高い防具。
粗悪品の見分けがつかなくても安心な品質だが確実性を金で買うのだから割高となる。

しかし衛兵たちの支給品はそれよりも粗末なおさがり。製造年も使用期間も長く劣化が激しい。
もしもあなたが実際に男達の被っているメットの質をじっくりと確かめようものなら、
レンガから身を守ってくれる程の丈夫さなど全くないと明らかに分かる安物なのだが。


「あー……なんというか。……災難でしたので、見舞金 と言っても安いですけど」

明確に言葉にするのはためらったが、浮浪者に尻を触られた件を振り返る。
単に御釣りの勘定すら面倒臭がるルーズな男はそれっぽい理由をつけ、気を遣わなくていいと告げる。
同僚が『ソイツ雑な性格なんで細かい計算嫌いなんです』とあなたへ補足すれば、あきれ顔で目を逸らす。

あなたが報酬を受け取り、いずこかの店や宿へ向かっていくであろう後ろ姿を見送れば、自分もどこで食事にしようか思案して歩き始めた。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からレトさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からレヴィさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にエレイさんが現れました。
エレイ > 「──む……」

人気も無ければ灯りもない、月光だけが差し込む寂れた夜の裏通りを、一人のんびりと歩いていた金髪の男は、
脇道から己の前に音もなく躍り出てきた小さな影にふと、足を止めた。

『──ミャーオ』

それは猫だった。暗がりの中でなお黒く、逆に目立つシルエット。
その中で両の眼だけが金色に浮かび上がっていて。

「……なんだ黒ぬこか。よう、見事な黒さだと感心するがどこもおかしくはないな」

などと声をかけつつしゃがみこむと、黒猫は人馴れしているらしく気安く寄ってきて
男の突き出した膝にスリスリと顔や身体を擦りつけて来る。

「……愛想をしたってやるモン特になにもないから無駄だぞ。ってゆーか目ヤニまみれの
汚いツラだなと呆れ顔になる。もうちょっと自分でキレイにすろ」

眉下げてフンス、と鼻を鳴らしつつ猫の顔を見やれば、目頭にこびりつく大きな
目ヤニが確認できて。片手で首根っこを抑えながら、もう片方の手を顔に添え、
親指でぺりぺりと目ヤニを剥がしてやってゆき。