2025/02/14 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区「酒場」」からキールさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にホウセンさんが現れました。
ホウセン > 冬の透き通った空気は、天頂に差し掛かった月からの光を、殊更怜悧なものにしているきらいがある。
寒々とした夜気によるバイアスが掛かったせいか、ほんのり青白くさえ見えるのだ。
それも街行く人々の活気があれば薄められようものなのに。
貧民地区の裏路地を進む今、すれ違う相手にさえ恵まれない。
強いて言うなら、どこぞかの猫が横切ろうとするぐらい。
狭い道の半ばで立ち止まり、チラと道行く小さな人間の影へ目を向けて。
にゃぁ…だのと短く鳴いては、現れた時よりも俊敏に駆け去っていく。
理解しえぬ”何か”であると、獣の本能が囁いたかのように。

「猫助め、儂を見て鳴くなんぞ心配性が過ぎよう。

別に獲って喰おうとは思うておらぬのじゃしな。」

ふむ、と緩めた歩みを再開しながらぼやく声すら、もこもこの襟巻を通して白い湯気となり。
外気に露出している頬やら耳朶やらは、冷えてほんのりと赤く。
猫が逃げたのが、この通行者の表情を読み取ってのものだったなら慧眼だ。
事実、小さな商人はやや不機嫌。
何しろ、取引の為に己を呼び付けた相手が、現場に現れなかったのだから。
人目を避けたいというから、寒中に此処まで出張ったというのに…!と。

事情があるならと営業用スマイルで伝言役を見送るも、ほんのり八つ当たりモードである。

ホウセン > さて、八つ当たりモードといっても、所構わず何かをしでかす程の短慮さとは無縁だ。
上っ面から認知できることは少ない。
左右の細い眉の間に、薄っすら皴が寄っているぐらい。
襟巻の下では、柔らかそうな唇を少しだけ尖らせているかもしれないぐらい。
精々が棘のある表情をしているというぐらいで、それさえも整った顔立ちのせいで毒々しさが薄れ。
奇特な性癖のお歴々には、陰のある美少年なんて受け取られるかもしれない。
だが、だが、しかし。
温室育ちのお子様にそぐわないものがあるとしたら、長い睫毛に縁取られた黒い瞳。
愛嬌の源泉たるそれが、しん…と感情の起伏を平板にしてしまうと、途端に無機質な相貌へ。
特段に奇異な話でもあるまい。
人に擬態するのを止めれば、どこまでも人外なのだし。

「……憂さ晴らしの必要を感じんでもないのぅ。

されど、八卦山まで出張るのも億劫じゃ。」

ぽつりと零したのは、北方敵国に存在する妖仙達の拠点。
人を弄ぶのを好んでいるから、妖仙だらけの其処に顔を出す頻度は低い。
それでも名が転がり出たことから、この子供にしか見えぬ人外の思考を逆行させるなら。
人外相手を想定した”憂さ晴らし”が頭のどこかにあるのだろう。
超常の殴り合いだとか、人の身では耐えられぬかもしれぬ”遊び”であるとか。

そういえば、最後に全力で活動してからどの位経ったかのぅ等と、ちっちゃな手で指折り数え。
一本一本開いて、一本一本閉じて。
開閉が一巡したところでカウントを止めた。

『あれ、儂、丸くなり過ぎておらぬか?』

等と、よそ様にとっては災厄でしかない気付きを得てしまったものだから。

ホウセン > ふむ、と小さな声が漏れた。
思案さえ済ませれば、行動は速やかに。

そうして小さな影は、ふつりと消えて――

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からホウセンさんが去りました。