2024/06/24 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にシースさんが現れました。
■シース > 偶々時間が出来た。だから寮から外出する事にした…それが、昼間の話。
「ま…っずぃ、何で…こんな事に……」
予定の無い散策はずるずると時間だけを浪費して。気が付くと、もうすっかり。日が暮れていた。
とっくに門限も過ぎているのだが。怒られるのを覚悟で戻らなくてはいけない。
そう考え焦り過ぎて。覚えのない道が、近道になるかもしれない、と。当て推量で飛び込んだのが悪かった。
……足を早め急げば急ぐ程。回り道になっているどころか。
学院の有る富裕地区側とは真逆の、どうやら、貧民地区の方へ。来てしまったらしい。
嫌な臭いがする。勿論呑んだ事は無い、アルコールの刺激臭や。もっと生臭い、望ましくない臭い。
例えるのは嫌だが…自分も吐き出す事のある、あの臭いだ。
誰かが犠牲になった後なのか…真っ最中、なのかもしれない。出来れば巻き込まれたくはない。
その侭立ち止まっていると、酔っ払いの怒声やら、男達の喧嘩の声だけでなく。
誰かが襲われているという、悲鳴の一つでも聞こえてしまう、かもしれないと…そうしたら流石に。無視出来なくなりそうだからと。
ぎゅっとフードを被り直して顔を隠すようにしながら。地区の出口を探す足取りは、ますます早足気味になっていく。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にアキアスさんが現れました。
■アキアス > 貧民地区の中、入り組んだそこは衛兵などの姿も無く。
酒場や娼館などもありはすれど、平民地区やまして富裕地区などのそことは比べ物にならないほどの荒れようで。
建物の影や路地裏、酷い時には周囲に人が居ても構わず売春などが行われており。
むしろそれならばまだましな方で合意の伴わない行為なども茶飯事である場所。
そんな場所の場末の酒場から安酒で気持ちよく酔って出てきたばかりの男。
其処らで春を売る女たちの声を受けながら歩いていれば、
酔ってふらつく足取りと、フードを目深く被った誰かの進路が重なって。
「お、っと、っと、おいおい、危ねぇなぁ」
足早にそこから離れようとする小柄な相手の進路上、その視界を覆うように巨躯が現れるだろうか。
男も避けようと思えば避けられたのかもしれないがそうする様子はなく。
ともすればぶつかってしまうかもしれないけれど――……
こういうところから、退屈は凌げるものだと内心ほくそ笑みながら、相手の反応を見遣って。
■シース > 少なくとも、見た目は…というより大半は、女性側。そのつもり。
だからこういう場所が危険なのだという事も。理解しているつもりだった……のだが。
そのせいで殊更に顔を隠そうとするあまり。返って視界が狭まり、前方不注意にならざるを得なかった。…つまる所。
「………… ひぁっ!?」
注意の足りない少女と、避ける気のない男と、の接触は。半ば以上必然だったと言わざるを得ない。
伏し気味の視界の中に、唐突に飛び込んで来る、誰かの足先。
ついで声が聞こえた…と思ったその時には、もうフード越しの顔面に、大きな障害物がぶち当たっていた。
ついていた勢いは此方側の物でしかないものの。ぶつかっても揺らぎもしないその障害物に。反動をもろに受けた形で後方に蹌踉めき。その場に尻餅を突く。
…そうやって地面に倒れてから。酷く遅れる形で、今ぶつかったのが人間である事を。
それから、こうしてへたり込んでいても…立ち上がっても尚、見上げるしかない大柄な人物である事を。
最後に、高い高い身長の天辺にあるその顔が。少なくとも少女からすると、なかなかに強面の物である事を。
順繰りに頭の中が理解して……たっぷり数秒経てから。跳ねるように飛び起きた。
「っ、す、す、すぃま……せ、んっ…!ぁの、っぁ、あぁっえ、えっと…
ぶ、つかって、っ、前…怖くて、ちゃんと見れてなくて……!」
知らない大人。思わず素が出て身体が強張り。謝っているつもりなのだが…震える声は。ちゃんと伝わるかどうか。
■アキアス > 避ける気が無かった男のほうは、体格差からか、ぶつかるのを想定してか。
少女の顔面が腹筋に当たり相手が路地に転がるまでを酒精の入ったほのかに赤い顔で見送る。
どこか楽し気な様子で、相手が尻餅つき、こちらを見上げ――しばらくしてから、
飛び上がるように立ち上がって言葉を詰まらせながら謝罪と言い訳とを繰り出す様子を眺めていて。
「注意一秒怪我一生ってなぁ。急いでるときこそ落ち着いて歩くもんだぜ、お嬢ちゃん。」
身長差から見下ろすようにしながら、釣り気味の眼を細めて口元引き上げ笑う。
その笑顔が状況からして彼女にはどのように映るものか。
低い声で語る言葉は年相応に若者に言って聞かせる教訓のようで。
けれどもその教訓を実践するには、少々遅かっただろうことが、男の手が少女の肩に乗せられることで悟れるだろうか。
「ま、次から気を付けな。次からな。
……丁度いい気分に水差した詫びに、ちっと付き合えよ」
そう言っては、肩に乗せた手はそのまま。
隣を過ぎて、背後から回り込むようにすれば、小柄な相手の隣に身体を寄せて肩を掴むような姿勢。
大きな体を屈め、顔の位置を少女の表情覗き込むように下げて猶更口端引き上げて笑う。
■シース > 「 …ほ っんと……に。し、失礼しました。 …その通りですね、っ、ぇえ……
実際、見当抜きで彼方此方走ったから、今正に……私、こんな所に、迷い込んでる…のに……っ」
ぐぅの音も出ない。貧民地区が危険な場所なのは勿論だが。例え余所の地区だったとしても…前を見ずに歩いていたら。
同じように通行人とぶつかる可能性も。更には馬車等に轢かれる危険性だって有るだろう。
ぶつかった相手に対して正論で注意を促してくれる辺り。ぱっと見の印象で恐そうだと感じたが、もしかすれば、そうでもないのかもと…
考えるのは。どうやら早計であったらしく。
「 ………っ、ぁ。 ぁ゛、っぇと………」
顔面丸々掴まれてしまいそうな程、大きな手で。肩を押さえられた。
更に傍らから触れて来る体格の差で。堪らず半歩分程横へ圧されてしまう。
胴体の大きさと。手の強さ。二つの間で板挟みとなり、片手だけであっさりと、少女は相手に囚われたような形となって。
「っぅ、ぁ、その…! すみません、すみ…ません…っ……!
ぉ…酒とか無理ですし、そのっ ……ぁぁう、いやその、 ……っそ……れ以上だって、私では……」
こういう時「つきあう」というのが如何なる意味か。ましてこの地区では…どれだけ深刻か。
流石に想像出来てしまうから。ぶんぶんと首を振り、身を退こうとするものの。完全に掴まれ、押さえられている形。
そのまま…横合いから覗き込んでくる眼差しを。不安げに眉を寄せきった瞳が見返して…
いつからだろう。触れられてからか、覗かれてからか。
相手の言わんとする事を察している筈なのに、少女の拒絶めいた返答は、「相手の意図を拒む」というよりも。
寧ろ「少女自身が力不足だろうから」とでも言うような。無自覚のスライドを起こしつつあって。
■アキアス > 少女の振る舞いは貧民地区で一人でいる事や、
そこでいくら急いでいても周囲への注意を疎かにすることの危険性も、解った上でのもののようで。
男の言葉に肯定示しながら、結局はその危うさに肩を掴まれた状態というのもしっかりと理解しているよう。
その証拠に、肩を組むように捉えてしまえば、男の言葉に込められた意図も十二分に汲み取っており。
「別に無理にキツいの飲ませたりしねぇよ。
それ以上? ぁあ、ま、そいつは、どんなもんだかなぁ?」
聡い相手が眉尻下げて紺色の瞳を向けてくれば、やや笑みを険が取れた緩やかなものにして。
けれどもそれは決して獲物を逃がす気になったからではなく。
むしろ、ただ怖がったり怯えたり、ではなく『私では』と、自分を下に置くような物言いに興味を覚えてのもの。
相手が声を上げたり、必死に抵抗したりしないのなら。
あれこれと言葉を交えながら、なし崩しに彼女を連れて移動していって。
■シース > これでも、暫く王都で生活していたのなら。それなりに夜道の危うさや、一人になる事の迂闊さも。きちんと教わっている。
それでも…人間はいつだって。実際にその身で体験しなければ。
本当の意味での危機感という物を。抱くには至れないのだろうと。
だからこそ。こんな状況が。起きてしまっているのであって。
従って自業自得。ぶつかってしまった瞬間から。この後起きる事というのも、きっと確定されてしまっている。
どう見たって抵抗のしようが無さそうな性差と体格差が有るので。
寧ろ其処を汲む形でこそ、少女は頷いてみせたものの。
「それじゃぁキツくない物なら、呑ませるつもりだったのか」、等と言いたげな。少しばかり藪睨みになる視線。
但しそんな生真面目めいた素振りと同時に。賢しらぶって無駄な抵抗はしないのも。少女の側面の一つ。
「……ご期待には添えない……気がするんです、よ、ね……」
結局押されつんのめるようにして。歩かされる少女は、男によって何処かへと。
連れられながらも、ぽつりと零す疎ましげな声音。
聞こえたとしても、男がその理由を知るのは…もう少し。先の事となっただろう。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からアキアスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からシースさんが去りました。