2024/05/25 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/酒場」にニンジャさんが現れました。
ニンジャ > 夜。猥雑とした冒険者の酒場。王都によくある、冒険者ギルドと提携している酒屋兼宿屋だ。
他の店と違うのは、給仕(全員女だ)が半裸に近い格好をさせられていること。
下卑た男達は間近にある果実を摘まんでは反応を愉しんでいる。弱みでもあるのか、給仕たちは唇を噛みながら耐えるばかり。

我が物顔で酒場の中心にのさばっている冒険者は8人ほど。彼等がこの酒場の主要顧客なのだろう。まさに傍若無人。
他にも何人か客がいるが、給仕に手を出すほどの度胸はない。ただ眺めて目の保養にしているだけだ。
王国の行く末を暗示するかのような暗澹とした空気は突如、扉を派手に壊しながら転げまわる大男によって破られた。


壊れた扉をくぐりながら現れたのは王国ではやや小柄な人影。藍染の装束に、同じく藍染の頭巾で顔を隠している。
生きる目的を失ったような、沈んだ漆黒の瞳だけが覗く。
特徴的な服装は一部の冒険者を戦慄させる。ニンジャだ。破壊工作や暗殺もこなすという、東洋の諜報集団。

「ドーモ、初めまして、『壊れた車輪亭』の皆さん。『ザ・タバーン』です。殴り込みにきました」

低い、凄みを感じさせる声。しかしその声色から成人した女だとわかる。
ニンジャは平坦な胸の前で両の拳を突き合わせたまま礼をした。交渉の余地を持たぬジェスチャー。

がたん。誰かが倒した椅子の音を契機に酒場は戦場と化した。

ニンジャ > ニンジャが酒場中央の冒険者達に向けて腕を振るうと、男達の影にフォークが刺さった。
そう、木製の床にフォークがしっかりと突き刺さっている。男達は伝説の存在に委縮したのか、動こうとしない。否、動けないのだ。

影縫いの術。物語や伝承を通じて群集心理に暗示をかけ、刺突武器を影にあてることで移動不能にさせるスキル。
これはニンジャを知らぬ者、泥酔状態などで頭が働かない者、共感力の低い――ありていに言えば空気が読めない者には効果がない。
比較的酔いが浅く、『空気を読める』冒険者達を狙った。

酒が回っている者を倒すのは容易だ。体格が優れた者は劣った者を舐める傾向にあり、それが動きにも表れる。
床に押し倒さんと両腕で掴みかかってくる戦士の顎に上段正拳突き。パァン、と乾いた音が酒場に響く。
戦士は膝から崩れる。ニンジャは流れるように中段前蹴りをみまう。頭が一瞬ボールのように宙を舞い、落ちた。
胴体という重りがなければもっと高く飛んでいただろう。

起伏のない身体つきは猫のようにしなやかに動く。極東の武術を使い、打ち、投げ、極める。
数分後、闖入者に対して害意を持ち、なおかつ意識を繋いでいる者は酒場の親父ただ一人となった。