2024/04/30 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にホウセンさんが現れました。
ホウセン > 春の夜。
ふらりちょろりと、王都の方々に姿を現す小さなシルエット。
遊興好きな妖仙が、今宵の遊び場と決めたのは貧民地区の一角。
建前上、蚤の市。
使わなくなった中古品を、元の所有者が仲介人を通さずに直接販売する場所だ。
中間マージンを取られない分、比較的安価で商品を買えるし、
売る側も中抜きをされないで済むという利点がある。
ただ、品質の保証という点では非常に胡散臭く、買い手側の目利きの技量も問われるのが常。

「ふぅむ…目移りというか、雑多に並び過ぎておって目がチラつくというか。
もしや、その混乱で思考能力を乱して衝動買いをさせる魂胆という気がせんでもないのぅ。」

普段の市の立つ通りから一本隣。
やや細い路地に、思い思いに露店が並んでいる。
すれ違いざまに肩がぶつかるような混雑っぷりではないが、人出はそれなりに。
平民地区なら兎も角、貧民地区のここでは、商品の出自が不穏なものが多々紛れている。
盗品なんかは当たり前、没落した貴族から巻き上げた珍品が正しい価値も分からぬままに並べられていたりもするのだ。
妖仙の足が止まったのは、魔術的な装飾具を扱っていると主張する店の前。
魔除けの呪いが施された耳飾りやら、毒消しの魔術が込められた指輪やら。
魔術といっても易しい部類に入るものが付与されているのが精々。
なのに興味を持ったのは、”何か”を感じ取ったからに外ならず。

ホウセン > 店主と思しき者は、取り立てて印象に残るような風体をしておらず。
痩せた中年以上老人未満といった男。
身なりはみすぼらしさを感じないぐらいの、平均的な平民の服装だ。
少なく見積もっても、魔道に通じている者という気配はなし。
軽く会釈をして、陳列台…とは名ばかりの、組み立て式の棚に並んだ商品を眺める。
両手を腰の後ろに組むのは、かっぱらいに勤しむ悪ガキ共ではないと区別化するため。
尤も、斯様に上等な装束に袖を通したストリートギャングが居て堪るかというものではあって。
見る、観る、診る。
並んでいるものの殆どが、少し便利な日用品の域を出ないし、価格も常識的な範疇。
その中の一点、多面的にカットされた青い宝玉をあしらった首飾りだけが目に留まる。
店主がこれの素性に精通しているとは思えないが、話を聞くのは只である。

「――ほう、別世界の自分を垣間見る夢見の効能とな。」

曰く、ちょっと楽しい夢を見る就寝時のアイテムだとか。
素っ頓狂な回答にも、整った上っ面は揺るがず。
妖仙の鑑定では、そんなメルヘンな代物ではない。

アイテムの影響下に入った者の内側に、別の世界を構築するものだ。

押し並べて言うなら、自他の認識を改変する催眠系のアイテム。
似たような物を自力で作成することも容易いが、異なる魔術体系に触れたり突飛な理論構築がされているのか紐解くのも遊興。
しれっと定価で首飾りを購入し、碌でもないことを思いつく。
――嗚呼、折角だから、誰彼かで”実験”でもしてみようか…と。

ホウセン > 妖仙が店の前を辞する。
ペタンと雪駄の底を鳴らし――

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からホウセンさんが去りました。