2023/11/28 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にリセルシアさんが現れました。
リセルシア > 貧民地区の一画にある古びた教会
管理する者は、居るには居るのだけれど名ばかりでしかなく。
半ば打ち捨てられたような廃屋と化していた―――
そんな教会に週に一度ほどの割合で神官服姿の少女が姿を見せるようになった。

「――ようやく、お祈りできるくらいにはなってきたかな。」

モップを片手に一息つく。
ガタが来ている箇所は、女手一つでは回らない。
けれども他の部分は清められ、古びてはいるものの清潔感は取り戻していて。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にエミールさんが現れました。
エミール > 実家と呼べる、娼館のある貧民地区。
その一角に、教会があるというのは昔から知ってはいた。

「――あれ?」

違和感に気が付いたのは、たまには顔を出せと言われている顔出しを兼ねて、娼館の方へと顔を出したある日の帰り道のこと。
先述の通り、教会の存在自体は元から知っていて。だけれども、それは教会とは名ばかりのただの廃屋の一つ――の、はずだったのだけれど。

しかし、通りがけに目に付いたその家屋は、明らかに人の手が入り始めている気配があって。
となると、管理者の変更でもあって、多少はこの地域の布教に力を入れることにでもしたのだろうか。

「それなら、挨拶でもしておこうかな」

比較的ご近所の付き合いもあるのだし、顔を出しておいて間違いはないだろうと。そう判断をして。
何やら人の気配が感じられた事もあり、驚かせることのないよう、声を掛けながら教会の扉を開くのであった。

「――ごめんください」

リセルシア > 「この花はどこに飾ろうかなぁ……」

元々は主神ヤルダバオートを祀っていただろう祭壇はすっかり荒れ果ててしまっていた。
そんなわけだから、その座には今は何もなく。
代わりにその場を埋めるようにといくつかの花が飾られていた。
そこにさらに別の花を飾ろうとしていたところに、珍しく来客の声が掛かり。

「―――こんにちは。今日はどうされましたか?
 見習いの身でよろしければ、お話を伺いますけれど―――」

ブーケにした花束を手にした少女が振り返る。
見ればこの地区に住まうには小奇麗な恰好をした青年(?)が立っていた。
身長からすれば青年かと思うのだけれど、あまり自信はなく。
それよりもこんな寂れた教会に足を運ぶのだから、何かしらの用事があるのだろうと首を傾げて見せ。

エミール > 「あぁ、特に用事があるってわけじゃあなくて。この近くに、まあ実家みたいなものがあるからさ。
 通りがかったら、教会が綺麗になりつつあったから挨拶に、って――」

中に入って出迎えたのは、思った以上に小さな少女の姿だった。
神官服こそ着てはいるが、身長や雰囲気からすれば管理者の娘かなにかだろうか、なんて当たりをつけようとして。
少し、首を傾げることとなる。

何だろう。なんだか、この少女に見覚えがあるような、ないような。
だけれども直接の知り合い、なんかじゃあなくって。名前を聞くような間柄なら忘れるはずはないし、と。そこまで考えたところで。

「――あ」

ぽん、と手を打つ。
思い出した、割りと学院の図書館で、姿を見ることのある少女――だった気がする。
青年自身、比較的足繁く図書館へと足を通っては本を読み漁っている事もあり、明らかに他と比べても身長の低く可愛らしい少女の姿は、印象に残っていたのであった。

「違ったら、ごめんなんだけれど。……君、コクマー・ラジエル学院に通ってたりしない?」

人違いだったら申し訳ないし、と。既視感が正しいものであるかの確認を兼ねて、そんな風に尋ねてみたり。
もしかしたら見覚えを思い出してくれるかもしれないと、カバンから取り出した眼鏡を取り出して掛けてみたりなどしつつ。

リセルシア > 「あぁ、そうだったんですね。
 最近、こちらでお手伝いさせていただいています、リセルシアと言います。
 んー……一応、神職の端くれなんですが、実は冒険者ギルド経由で依頼をいただきまして。」

用件を聞けば、様子を見に来ただけの模様
それでも、わざわざ教会に顔を出すのだから、普段から多少なりともここのことを気にかけてくれているのだろう。
そうであれば、詳しい説明をはしておいたほうが良いだろうと経緯を口にする。
一言で言ってしまえば、管理人が仕事を二束三文で丸投げしたという、それだけのことで。

「はい? 確かに、学院には通わせていただいていますけれど……?」

急に話が転換して、戸惑い気味に肯定する。
眼鏡を掛けて見せられれば、そういえば…というくらいの既視感を覚え。

「もしかして先輩でしたか?
 治癒術の授業ではお見かけしてなかったと思うので……図書館、でしょうか?」

うーん、とあやふやな記憶を辿っていき。

エミール > 「そうなんだ。てっきり、管理の人が変わったのかと思ったんだけれど。……うん、それでも。元のままより全然いいよね」

室内に目を向ければ、しっかりと頑張ったのだろう。
元々の廃屋染みた……というより、廃屋そのものだった建物と比べれば、雲泥の差と言える程度に掃除の手が入ったのが見てとれる。
祭壇には神像の代わりだろうか。いくつかの花が飾られていて、殺風景だったそれまでと比べれば、これまた安心感を覚えることができる。

問題は、この地域であれば信心深いものが少ないこと、ではあるが……それこそ、雇われだという少女にしてみれば大きな問題ではあるまい。

「先輩、かどうかはわからないけれどね。
 うん、そう。図書館で見た覚えがあった気がして。よかった、勘違いじゃなくて。

 下手なナンパと思われる所だったよ」

学生である、と肯定する少女の姿に、くすくすと笑いながら少しおどけて見せる。
必死で思い出そうとする様子には、そこまで深い関わりはないんだ、と図書館で顔を見た程度だ、と告げる。

「でも、学院の外で。それもこんな場所で顔見知り……って言うほどでもないけれど、知った顔と会うなんて思わなかったなあ」

リセルシア > 「ありがとうございます。
 そう言っていただけると、励みになります。」

お仕事ではあるけれど、頑張った結果をこうやって認めて貰えるのは純粋に嬉しい。
素直に、表情を綻ばせて見せ。
何せこれまで全くと言っていいほど参拝者がいないかったのだから。
参拝に来たのではないとしても、こうやって足を運んでもらえるだけでも嬉しいもので。

「あ、良かった。図書館で合ってましたか。
 お出会いしたのに顔を忘れてたなんて粗相をしたのかと思って焦っちゃいました。
 そうですね、この辺りからだと学院に通われてる方も少ないでしょうし。」

ナンパなどと疑う余裕はなかったと首を振り。
一方で、学院の規模は大きいとはいうものの、それを擁する王都はそれ以上の規模で。
何よりもこの辺りの地区なら、学ぶよりも働きに出る者の方が多かろうと同意する。

エミール > 「こちらこそ、ありがとう。このあたりの住民としてお礼を言わせて欲しいな。
 それで……ええと。励みになるのは良いけれど、君、一人なの?」

こちらの言葉に嬉しそうな様子を見せる少女の姿に、別種の心配を覚えてしまう。
他の知り合いというか、誰かしらと一緒にこの教会の掃除をしているのならばいいけれども、そうでないのであれば、こんな場所でこんな子がひとりで密室にいる、というのは少々どころではなく危険ではないだろうか、と。

「ごめんね、こっちこそ紛らわしい言い方をして。
 君のことは見かけたときに、かわいい子だなって思って、僕の方は覚えてたからつい、ね。

 っと。改めて、僕はエミール。学院の方では、精霊術とか剣術とか一般教養とかがメインに、後は気になったのは顔を出させて貰ったり、って感じかな」

治癒術、と先程は言っていたことから、恐らくは授業での顔を合わせたことはないだろうと頷いて。
いつまでも入り口で立ったまま話すのも何だと思いながら、ゆっくりと近付いていき、手近な椅子に座ってよいかの許可を求めてから、腰を下ろそうか。

リセルシア > 「もったいないお言葉です。
 ―――?? はい、ひとりですけれど…?」

向けられた感謝の言葉には、聖職者らしく両手を祈りの形に組んで見せ。
けれど、続けられた問いかけには、年相応の表情で首を傾げる形。
子どものお小遣いにも満たないような額の依頼を他の者が受けるはずもなく。

「やっぱりナンパなんですか?
 お世辞でもそう言われると照れちゃいます。
 ――精霊術ですか。私は治癒術と薬学を少し…っていったところです。」

並べられた礼拝用のベンチも数は少ないものの、綺麗に拭き清められている。
座っても良いかとわざわざ尋ねられれば、もちろんですと返し。
可愛いなどと評された経験は少ないだけに、はにかんで見せながら、自身が受講している授業を挙げて。

エミール > 「本心だよ、本当。廃屋とかが増えると、やっぱり治安が悪くなるからさ。
 ……うーん、そっかぁ。今日で終わり、とかじゃあ……ないよね?」

御礼の言葉に対する返しは、見目こそ幼いもののそれなりに堂に入った聖職者のそれで。
だからこそ、続いた問いへの返答は、危うさを感じてしまう。
怪訝そうな反応からして、この地域に潜んでいる危険性というか、そういうものに対しての危機感が足りていない、ように感じられて。

「ふふ、どっちだと思う? なんて、ね。
 お世辞のつもりはないんだけどな。可愛いから記憶に残ってた、っていうのは本当だし。

 ふうん。治癒術の方はともかく、薬学の方にはちょっと興味あるんだよね。やっぱり、近場の薬草の植生とかに付いても教えてくれたりする?」

やはりナンパか等とと問われれば、いたずらっぽく笑ってみせて。
許可が得られればベンチの一つに腰掛け、少女に向き直って座って。君も座ったら、などと着席を促して。
軽く褒めただけで嬉しげにする様子には、そういうところも可愛いんだよ、などと小さく笑って見せて。
少女が受けているという科目を聞けば、興味のある講義の名が上がったことからそちらに話を向けて。

リセルシア > 「それは確かにそうですね。
 はい、しばらくはお世話になります。とはいっても、そう頻繁にってわけじゃないんですけれど。」

仕事内容としては、あくまで建物内の掃除というだけで、聖職者である必要も示されてはいない。
何より少女自身も授業や何やらがあるわけで、毎日通えるわけではないと告げ。
心配されているとは露とも思わずに、言葉どおりの質問に素直に答え。

「もう、揶揄わないでください。
 えぇっと、薬学の授業は、そういうのも教えてくださいます。
 今のところ、近場で採れる薬草の処方が中心なので。
 もうちょっと進むと、薬草そのものの栽培方法や採取方法なんかも教えて貰えるみたいです。」

授業で習った内容を説明しながら、この花も乾燥させると薬になるんですよ、と手にしたままの赤い花を示して見せる。
しばらく話し込んでいたために、少し萎びて元気がなくなった様子を見て、花瓶を探しにいったん奥へと。
その日は、その赤い花のほかに他愛無い雑談の花を咲かせることになり―――

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からリセルシアさんが去りました。
エミール > 「だから、ありがとう。なんだけれど……。
 女の子ひとりだと色々と危ないだろうし。暇があるときには、手伝わせてもらおうかな。折角こうやって知り合ったことだし、ね」

少し悩んだ後に、その様に申し出たりした。
聖職者でなくとも構わないのであれば、自分でも手伝いくらいはできるだろうと。
それにやはり、こんな無垢そうな少女がひとりでこんな場所にいると知れれば、よからぬ考えの輩が現れないとも限らない。

「ふふ、ごめんごめん。
 
 ふうん、大体想像通りかなぁ。そんな感じの授業なら、僕も受けてみようかな。
 その時は色々教えてくれるかな?」

少々むくれてしまった少女に、小さく笑いながら謝罪をすればそれ以上の深入りは避けて。
授業の内容の説明に相槌を打ち、知りたいと思っている方向の知識であることに確信を得れば、それも受講科目に加えるべきかと考えながらのリサーチを開始して。

少女が花瓶とともに戻って来れば、手慣れた様子で雑談の話題を振り、話を引き出して楽しませようと努めた事だろう。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からエミールさんが去りました。