2025/04/27 のログ
ティアフェル >  この界隈でも――20人くらい通れば3人くらいは、ボゴられてる女がさすがに気の毒だと思う者もいるかもしれないし、さらにその内の一人は仏心を出してちょっと止めに入ってやろう、と思ってくれるものもいるかもしれない。
 でも人気のないこの路地を通りかかる者は現時刻ではせいぜい3~4人だし、その3~4人が仏である確率はかなり低い。
 だから――知り合いで、ゴロツキなんてまるでハエでも追い払うような武力の持ち主の上、こういった状況を決して看過しない――というもはや今は神にも等しい存在が通りかかってくれるとか……

 どんだけ運いいんだよわたし!!!

 という心境。
 でも、ゴロツキとエンカしてボッコされた時点で結構な不運に見舞われ中ではある。

 けれど、街中でこうして偶然白髪の彼と出会うのは初めてだったので、暗がりで、目には血が流れ込んで視界が利かず、しばらく誰だか分からなかったが。

「もし、かして………ゴー…ザ、さ、ん……?」

 殴られてくらくらする頭で認識した。
 誰だか見当かついた時には、問答無用でゴロツキが股間に一撃食らっていて。
 泡を吹いて悶絶する男を尻目に、こちらへと掛けられる声に。

「……ぇ、あ……うん……大丈夫…と云えばちょっと嘘になるけど……おかげさまで、致命傷はない……――っ…!!」

 と、掠れた声で返答していたところで、気管に血反吐が詰まってげほごほと激しく咳き込みながら。
 面白い、との声に反応して涙目で自嘲気味に。

「っけ、っふ……っは……あ、はは……面白い……かにゃ?」

 ちょうどそばを野良猫が横切ったので、にゃ、とふざけた語尾をつけて……苦し気に笑っては。
 はあぁ…と安堵したのが急激に脱力して壁にべたりと背を押し付ける様にしてだらりと地べたに足を投げ出した長坐位姿勢で。

「あぁ……痛い……」

 頭から血は出てるわ頬は腫れあがってるわ、衣服の下もあちこち殴られて痣だらけだわ……なかなかの惨状。そりゃあ…いかな本職ヒーラーと云えど率直に痛い。

ゴーザ > 「おう、今はゴーザンと名乗っておるが、間違いなくお主と落とし穴で会ったモノよ。
・・・むう」

なお。行きがけの駄賃&知り合い傷つけた落とし前として、ゴロツキに一撃かましはしたが、
いつものように勝負を仕掛けるような、どこか面白がっているような様子はない。
今はヒト型になった事で能力制限されているので、別に全力振るおうと何の利も無いためだ。

ゆえに。立ち直ったゴロツキが這う這うの体で逃げ去ろうと、気配感じている程度でどうでもよく、
それよりも目に見えて弱っているティアウェルの様子が気にかかるようで。

「・・・いや、今のおぬしに向かって面白いなどと言うべきではなかったな、すまん。
癒し手のティアに使う事など無いと思っておったが・・・」

ごそごそと背中のリュック漁って、緑色の石嵌まった指輪らしきもの取り出し自分の中指にはめ。

「これで吾輩の・・・何といったかな、生命力?をおぬしに移せるそうだ。
加減間違えると不必要に元気にしてしまうらしいが、今なら多少多くても問題あるまい?」

指輪はめた手で、力入れ過ぎないようにそっとティアの手を取って

『命をそなたに』

恐らくは単なる指輪発動用のキーワードなのだろうが、聞きようによってはとんでもない事を口にする。
すると、ゆるやかにではあるが、活力のようなものが手を通してティアの中に流れ込んでくるのが判るだろうか。

ティアフェル > 「……落とし穴……っはは……そいや、そだったね……いっちゃん最初は……」

 初めて出会った時に人型へと変化する姿も見ていたので、辛うじて目が霞んでいる状態でも誰だか分かるが……。
 そうか、ゴーザン……人間の姿を取る時はそういう風に名乗っていたのはすっかり忘れていた。
 〝ン〟がつくんだったな、と思い出してそうならば、呼び直そう。

「ゴーザン…さん、ね。おっけ……」

 肯く声もやはり嗄れていて力がない。ボッコボコで血だらけな今元気いっぱいだったらそれはそれで怖いと思うが。
 しかし、ひぃひぃ呻きながら這いつくばるようにして逃げるゴロツキの背を腫れた目で見やると不意に低い声で呟いた。

「……死ねばいいのに」

 凍るような冷たい声音が漏れる。心の底からそう願っていると云った響き。

 しかし、ズタボロなこちらの身を案じての声が掛かれば意識をそちらに向けて、痛ましげながら柔和な声で。

「いや? すまん…こと、ないよ…? こんなだっさい状況……自分でも……笑っちゃうしさ……」

 恥ずかしい所をみられちゃった、と少しおどけ気味に笑うと傷に響いてイテテテ…と顔をしかめ。
 それから、生命力を分ける、との言葉にきょとん、として。

「ぇ、と……や、え……ん、ゎわっ……」

 戸惑ってるうちに手を取られ、緩やかに流れ込んでくる力の波動に驚いて反射的に引っ込めてしまい。
 
「っきゃ……」

 じんわりと身体の中に流れ込んでくる自分ものとは異質の力。どくん、と心臓が強く一度跳ねる。
 手を途中で引っ込めてしまったから、十全とはいかないが半回復くらいはしたようで。
 鳩が豆鉄砲食らったような顔で引っ込めた手を胸の前で握り目を丸くしていた。

「い、まの……なに……?」

 ヒーラーの扱う回復魔法とも違うように思え、人の放つそれとも違う異形の波動に体幹がぶるりと震えた。

ゴーザ > 「・・・ああ、まあ気にしなくてもいい。
どうせ街中でゴーザと呼んでも、吾輩知っておる者がおるとは思えんからな」

大したことではないと軽く首振るが、ゴロツキに向ける言葉に含まれた棘には、
思わずこちらも身震いなどして。

「本当におぬしは、遠慮なく暴力振るえる相手には強いのだな。
あいつもそうしてやれば良かったのに、油断でもしたか?
まあ街中であんなのに出会う確率など、外に比べれば低いだろうから仕方ないがな」

なお。普通ならこういう行為の時は目を閉じて祈りめいた雰囲気出すものなのだろうが、
そんな意識の無い白魔族は、擬態ゆえに表情感じさせない片目開けたままで
ティアと手を握り合っていたが、途中で振り払われると多少驚いた様で「おっと」などと声上げた後
別に気を悪くした様子も無く、軽く何度か手握ったり閉じたりして。

「うん?ああ、今のか。
おぬしが知ってるかどうかは知らんが、吾輩はあまり魔法が使えん。
知っているのは今の」

ここで一度自分の胸を軽く叩いて。

「この姿になるためのやつくらいよ。
だが、それだと色々不便だと知ったのでな。
例えば・・・吾輩、傷を負ったとしても多少ならすぐに治るから、生半可な回復薬などあまり役に立たん。
自前で持っておるのは、それこそ致命傷でも直せる強い薬だけだ。
そんなもん例えばさっきのおぬしに使ったら、確かに傷は完治するが
激しい痛みにのた打ち回る羽目になる・・・らしい。

だから、知り合いのつてを頼って、簡単な魔法使える指輪を手に入れて貰ったのだ。
ちなみに今のは、生命力?を移す魔法らしい。
別に使い過ぎて使った方が死ぬとか、過剰回復させすぎると言った事はないそうだから、
安心して使ってみたのだが・・・何か拙かったか?
ヒーラーとしてのプライドが傷つくとかだったら・・・それは、すまん。
だが吾輩が今、ティアにしてやれることと言ったらこれくらいしかなくてな。
悪気があったわけじゃないんだ、許してくれ」

これは初めて見るかもしれない照れくさそうな・・・というか軽くはにかんだ笑顔で
もう一度深く頭を下げるだろう。

ティアフェル > 「そなの? でもま、けじめとして呼ぶわ、ここでは……ゴーザンさんってね」

 と、生真面目気取ってのたまうが……つぎにこのことをきちんと覚えて呼び分けられるかは……自分でもちょっと分からない。

「別に……強かないよ……
 わたしだって、一応は……身長157センチの19歳女子ですよ……そりゃあ、本質はゴリラだけど……むしろゴリラゴリラゴリラ(学名)だけど……」

 時にはゴロツキに後れをとることだってある。それがまあ、今日だった訳なんだけど。
 ぼそぼそした声でぼやくように口にするも、不意の……異能のような気配と確定的な行為には反射的に警戒してしまう。
 それは恐らく彼の本性が人ではないことが脳裏に刻まれていたが故の本能的な回避だったのだが……。
 それでも相手が厚意としての施術を行ってくれたのは分かっているから。思わず手を引っ込めてしまったのに、気まずそうな顔をして。

「ご…めん……急、だったから……驚い、ちゃって……」

 異形の存在はやはり、人間の本能として少し怖いのだ。
 どれだけ理性で抑えても本能だけは御しきれない。
 だけど相手の人柄は知っているから、彼の言葉を静かに傾聴して。

「い、いや……っ、あの、違うの……わたしが…悪いの……ごめんなさい……
 厭だとかそういうんじゃなくって…ただ、本当に……なんなのか良く分かんなかったから…びっくりした…だけで……ごめんね、ごめんね。
 拙いとかは……大丈夫、だと…思う。異常はない、し……あ、ほら、あの……きゅ、急にさ、手とか…握られちゃうと、わたしってば純情一直線なオトメなもんで? 照れる、ってか……いや、それは嘘だけど……」

 ハニカミながらこうべを垂れる所作に、思わず慌てて首をぶんぶん振って。
 むしろごめんなさい、すみませんっ、とぺこぺこと彼の倍は平身低頭、只管謝罪する。

ゴーザ > 「・・・今思い出した。
この魔法をヒトに対して使うつもりなら、その前によーーーく相手に説明しろと
指輪の制作者から言付かっていたと言っていたな、あ奴」

急だったと言われれば、くれぐれもと念押されていた注意を今頃思い出したか、
ぼりぼりと軽く頭を掻いて。
普段から魔法に疎く、また説明などと言う事が本当に苦手な白魔族は
事実さえ述べれば相手には判るだろうと、たかをくくっていたらしい。
そして手を振り払った事に対しての謝罪は、此方もふむ、と顎に手当てながら真剣に聞いていて。

「いやまあ、碌な説明も無しにやるべきではなかったな。
そこは改めて謝っておく。
魔族たる吾輩が、『人間』に対して命を分ける、などと軽々しくやっていい事ではなかった。
すまん。

それでだな・・・もし元気が戻ったなら、まだ少し吾輩の懐には余裕もある事だし、
例の店に肉でも食べに行かんか?
助けた礼・・・と言う訳でもないが、こんな嫌な事のあったまま家に帰るのも何だろう。
さっきの詫びも兼ねての誘いなんだが・・・受けてくれるか?」

ティアがそれこそコメツキバッタのごとく頭下げ続けるなら、
意図していなかったとはいえ嫌な思いをさせたなと、もう一度だけ頭を下げてから
気分変えようと食事の提案してみたり。
本当は相手は女性なのだから菓子店など紹介したいところなのだが、あいにく行きつけには無く、
その辺りも今度知り合いに聞いておこうと思いながら。

ティアフェル > 「あは。ッはは……だろーね。
 人によっては気にしないだろうけど……それこそ人によっては……結構びびるもん。
 わたしは……肝が太いと思われるから、うっかり説明端折っても驚かないって、感じだし?」

 我ながらそう思う。
 だから彼もうっかり、何をしようとしてるか伝え忘れて一刻も早く怪我を治してやろうと施術してくれたのだろう。
 でも、手を振り払ったつもりはない。急に手を握られて何か始まったのでびっくりして引っ込めただけで、そんなつもりは微塵もなかったが。
 結構相手はデリケートだったようで振り払われたと認識されたらしい。意識の相違はあるあるだが、切ない。

「ううん、本当に謝んないで……っ、そんな、あなたが今さらわたしに悪さする訳なんてないこと、分かってるし……
 本当にちょっとだけ、びっくりしただけだから……えっと、もうごめんはなしで、お互い様…ね?」

 もう一度すまん、と謝罪を受けて恐縮してしまう。傷つけてしまったのかな、とおじさまの繊細な心を案じた。
 そして、肉を食べに行こうという誘いは嬉しかったが。

「あ、うん、ありがとう。いいね、あそこのお店おいしいし行きたい。
 でも、ちょっとどっかでこの血…洗って着替えてからでもいい、かな?
 さすがに血だらけで服も汚れて髪もぐちゃぐちゃで肉貪ってる女とか怖すぎだし?」

 と、傷は半ば癒してもらったからいいとして、髪や肌や服に付着した血や汚れまでは物理的対処が必要である。
 いつも迷惑をかけてしまって申し訳ないと思いながら、身だしなみを整えてからなら喜んでお肉食べいくと伝え。
 そして、その後改めて、きちんと自分で傷を塞ぎきって。回復し。
 許されれば手近な公衆浴場でさっと汚れを落として着替えを調達して。

「にっくにくー!」

 お肉ごちそうになるのである。最終的に図々しい女であった……。
 もちろん、お着換えに難色を示されれば、そのまま今日はおとなしく真っ直ぐ帰ることになったのである……。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からティアフェルさんが去りました。
ゴーザ > 「・・・そうだな、流石にその格好だとあれも・・・いや、彼女も
いい顔はしないだろうから、そうしてくれると助かる。
金がかかるなら、その分も吾輩が持とう。
ここまで来たら少しくらいの散財は構わんしな」

どこかで着替えたいとの希望には、あっさりと頷いて応じる。
どうせ、ティアフェルの腹具合によるとは言え、
それなりの物(少なくとも店に落とせるお金が多いもの)を
頼んでもらわないといけないのだ。
多少の出費などは今更である。

そして、喜んで肉を食らうティアを機嫌治ったかと嬉し気に見つめる白魔族は
店の女店主にも妙に熱い視線向けていたり・・・。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からゴーザさんが去りました。