2025/03/28 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にグアルティエロさんが現れました。
■グアルティエロ >
貧民地区、空地。
割れた酒瓶、いかがわしい雑誌、何かの包み紙、砕けた注射器、等、等、等、等、等。
あちらこちらにゴミが散らばっていて日中夜中を問わず時折違法薬物の売人が立つ……
そこはしかし今は兎角目立つ男が占拠していた。
ド派手な髪色に、ド派手で趣味の悪い上着、やたら背丈が高くて体格も良く、
「毎度ぉ!!!」
声までやったらめったらでかくって周辺にそれはもうけたたましく響き渡るおまけ付きで、
「お、まいど! 今日も顔色悪いやんけよう生きとんなわれぇ!
おうまいど! 顔赤いでぇ? 何や俺ん顔に見惚れ、あ、二日酔い? 期待さすなぼけ!」
通りがかった人間に対してほぼほぼ罵声をぶつけているというとんでもねぇ目立ちっぷり。
今直ぐにでも物取りやら何やらに襲いかかられたって何も不可思議な光景ではない。
が。
周りからの反応は、また始まったよ……ぐらいのノリで済んでいた。
「今日も説法! したいとこやけど。朝したばっかやからな。今んとこはちゃう。
お菓子作りすぎたからお裾分けに来てん。ほれほれほれほれ寄ってこい、タダやでぇ~~~」
適当なところに巨大な手提げ鞄をどさりと置けば中から出すのは小綺麗な包に赤いリボンで可愛らしく締められた、菓子袋。
中身はクッキーやら飴やらたまにシュークリームやら。
■グアルティエロ >
ノーシスの教えを広めにきている宣教者で説法のたび菓子を配る変人で善人。
そんな男を襲うのはいかな悪漢でも気が引ける、のか、はたまた別の理由か。
目立つにしても限度があるというものをとびきりにぶち超えていく変人と関わりたくないのもあるかもしれない。
兎角、治安の悪い場所でも何故か平和に事は進む。
「ぎょうさんあるから持ってき持ってき。
いやほんま、分量派手に間違えたわー」
ふはははははは!!! と一人で喋って一人で笑いだす笑い声がこれまたでかい。
「やかましいやと。ええんかそんな事言うて。
俺が本気ではしゃいだらどうなるか教えたるぞ?
ここいらの家屋がまとめて倒壊するぞ?」
受け取りにきた者からただ単に世間話をする者まで、ちらほら、人が集まり始める。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にメアリさんが現れました。
■メアリ > 用事で早朝から貧民地区に訪れていたメアリは昨晩から何も食べていなく空腹。
これから平民地区の酒場まで戻り食事をとろうかと向かっていた矢先、鼻の利くメアリはふと道中で
貧民地区に似つかわしくない甘く魅力的な香りを感じ取る。
「なんでしょう、このいい匂い……。
――え、なんです、あの賑やかな集まりは。」
空腹ということもあったが単純に興味もひかれて、匂いの感じる方向へと視線を向ける。
その先にあったこの辺では珍しい賑やかな人だかりを目にすると、驚きながらも遠巻きにそちらへと歩み寄り。
賑やかな人だかりというよりもその中心にいる派手な見た目をした人物が賑やかなのだと見て取ると、
貧民地区で見覚えのないその人物を少し離れたところから観察するように見つめる。
そしてしばらく観察したのちに、その賑やかな輪の方向へと歩み寄り――
「こんにちは、私もひとついただいても良いでしょうか?」
にこりと微笑みを向けながら派手な男の前へと立つとそう声をかけて。
輪の中で集まっていた者の一部は、メアリの顔を見るや否やそそくさと立ち去る者もいて
■グアルティエロ >
バター、砂糖、バニラエッセンス、チョコレート、スコッチなどなどなどの香りがふわりふわり。
喧しくて賑やかすぎる派手な男当人から鞄の中身からたっぷりと放たれる甘い匂いは空地全体――
鼻が良い者には遠くからでも芳しく、まるで、誘うよう、そして、誘われてきた彼女に目線が向く。
「お? まいど! あ、こんにちわみたいなもんやねん。訛っちょおて聞き取りにきぃと思うけど勘弁な!」
遠巻きに見ている間は、にこりと爽やかな……本人的には爽やかなつもりで傍から見ると胡散臭い笑みを向け、
眼の前へと歩いて話しかけてもらえば声量は大きくて声質がまた良く通る訛った口調が親しげに掛かる。
「?」
彼女の顔を見やった一部が気まずそうに、或いは慌てて去っていく後ろ姿に首を傾げたものの。
鞄の中に手を突っ込めば小包をまた一つ取り出してから両手で掌にちょこんと乗せて差し出した。
「中身は開けてからのお楽しみぃ~。
とか言って雑に突っ込んだもんやから俺がもう何入ってんやかわからんのやけどな! ふはははは!
まぁ味にゃあ自信あるから安心して口ん中入れてもろて。不安やったら俺ん口に突っ込んでええで!」
富裕地区、平民地区でさえ、見知らぬ他人から無料で受け取る食物など何が入っているものやら解ったものでなく貧民地区ならその危険性は跳ね上がるし心配もある。ので、変なもの入ってるか心配ならまず自分が毒見する、と述べながらに渡そう。
因みに中身は、開けてみれば、チョコチップクッキーが数枚と彼女の手ぐらいある大きなシュークリームであった。
■メアリ > 遠巻きに見ているメアリに笑みが向けば、それがそばに歩み寄るきっかけとなっただろう。
「ありがとうございます。ふふ、面白い方ですね。
今日はお菓子を配って慈善活動をされているのですか?」
中身が何かはわからないが、甘い匂いからお菓子だと推測しての発言。
変なものが入っているかは定かではないが、たまに怪しい薬を練り込んだ食べ物を慈善活動を装って配っている
輩もたまにいるため、もらったお菓子はこの場では食べずに鞄の中へとしまいこむ。
「ご存じかもしれませんが、この辺はドラッグの売買が横行している場所ですから危ない方が多いのです。
用心棒もつけずおひとりでいると素行の悪い輩に絡まれるかもしれませんよ。お気をつけて。」
貧民地区自体治安が良くないのだろうが、この辺はドラッグ常用者が多く行き交う都合治安が良いというにはほど遠い。
もう少しすれば辺りも暗くなり一層治安も悪化するだろう、と警告も兼ねて告げるが、そんな貧民地区を無防備な
状態で女一人で歩いていたメアリに言われても説得力はあまりないのかもしれない。
■グアルティエロ >
「どういたしましてぇ。んはは、よう言われるわ、おまけに面も良えからめっちゃ印象残りやすいーて評判のおじさんやねん。
慈善活動ちゅー名の在庫処分やな。作り過ぎたもんやから腐らすんも勿体ないやろ? 普段は菓子で釣って説法しとんやけどさ」
うん、と一つ首肯して、用心でしまわれたお菓子を見ても気分害した様子も無くってにこやかなまま。
お菓子が渡った両手を持ち上げれば、指を組んでお祈りのポーズ。
こうして神のご加護がありますようにーなんてなー、などと宣教者である事を明かしつつ、
「おお。わざわざおおきになぁ。心配あらへんで。身ぃ一つ守れるぐらいやないとこないなとこでこんな真似出来へんから。
それよかお嬢ちゃんみたいな別嬪さんのが余程……ああまあ要らん心配やろけど余計なお世話焼くんが仕事やさかいな」
日が落ちて、西日が差して、次第に暗がりが増していき一層と剣呑な雰囲気が増していく荒れた空地と荒れた家屋の群れの貧民地区の街並み。
サングラスの奥にある瞳がそちらへ一度、そして彼女へと戻ればサングラス越しの瞳から軽快な口元からがまた一層緩んで感謝を告げる。
無論自衛の手段は確保済み、とは言うが、一見して無手で鞄の中身もお菓子ばっかりだから説得力の無さは彼女の言動と同じぐらいか。
「あ。申し遅れたな。おじさん、グアルティエロていうねん、ノーシスさんとこでぼちぼちやっとる人や。
お嬢ちゃんはお名前聞いても良えかね?」
お祈りのポーズを解けば右掌で己を示す、自称おじさん。彼女を左手で示しては、首を傾げる。
■メアリ > 「あら、おじさんと言うほどですか?
私とそう年も変わらないように見えますけれど。」
よもやこの目前の男が50近い年齢だと思いもせず、冗談かと思っては首を傾げて笑う。
――神のご加護と、そう告げて指を組みお祈りのポーズを見せる宣教者のその様子に、メアリの視線がほんの一瞬だけ
軽蔑じみた冷たさを帯びるも、すぐに先ほどと変わらぬ柔らかな笑みが浮かぶ。
「そうなのですか。こちらこそ余計なお世話をやいてしまいましたね、すみません。
――私はメアリと申します。こう見えて傭兵だったり用心棒をしている者です。」
自衛の手段とやらは見当たらない。武道に優れた人物なのだろうかと思いつつ、余計な世話を焼いてしまったことに対する謝罪を。
名前を尋ねられると自己紹介をしながら、胸に手を当てつつ軽く会釈をしてみせる。
■グアルティエロ >
「んふふ、ようツッコんでくれた! えらい親切やしほんま気ぃ効く子や! ええ子にゃたくさん神のご加護ー……。……は、いらんか!
構へん構へん。けど、余計なお世話にお節介まぁよぅ言うがどうか勘弁な? 47にもなると年季入ってもうてもう止まらへんねん」
瞬き一つの間に浮かんで消えた冷たい眼差しが、暗くなっていく中で随分見えにくそうなもの掛けておいてよく見えたらしい。
貧民地区で宣教なんてする類の割にはそんな様子にぐいぐい突っ込むこともなく、そういう人も居るわな、ぐらいの軽いノリ。
さらっと明かす実年齢。
「見えへんやろ。見えへんだけや。最近筋肉痛が2日後とかに来んねん……かなわんわ……」
腰も痛いしちょっと目も悪くなってきたし、云々。腰抑えたり、サングラスを外して目頭揉んだり、と大げさな仕草をしてから笑う。
「いやいや、別嬪さんに心配されて嬉しならん男が居るかぃ、気にせんで? ありがとな!
宜しゅう。メアリはん。身ぃこなしがえらい靭やか思うたけど、そうか、傭兵さんと用心棒さん! どうりでなぁ……」
こちらへとやってくる足運び、こうして会話をしている間の身動ぎ、すらりと胸へと持ち上がる手付きや腰の折り方、等、等……
喧嘩慣れしている程度の身のこなしじゃないとは思っちゃいたがぁ、とは見る目がありそうな事こぼしつつ納得したように頷いた。
両手がついまたお祈りの形になって返礼しかけ、両手を解いてから胸に手を当てて右足を下げてから返礼し直す。
「何かお仕事頼む事もあるかもしらんな。なんぼぐらいで請け負うてくれるん?」
よいしょ。とか実におじさんくさい掛け声で、礼から腰と頭を持ち上げてから、彼女にお仕事頼む折のお値段が気になって首も傾げるし問も出る。
■メアリ > 「……?」
神に仕える人間にあまりいい印象を抱いていないメアリだが、それが一瞬表情に出てしまっていたのは無意識で。
なぜ男が急に神のご加護はいらないか、と言い出した理由が分からず、不思議に思うも理由は深く問うことはなく。
「よっ、47……?嘘、ではないですものね。
とてもそんな年齢には見えないです……。」
明かされた実年齢には驚いた表情を浮かべるも、相手の話し方や態度から見て嘘ではないのだと理解する。
大げさな仕草を浮かべる様子をまじまじと見つめるも、やはりそんな年齢には見えず、人間ではないんじゃないかと疑ったり。
「筋肉痛が二日後に……?そ、そんなおじさんみたいな……あ、すみません。」
動揺のあまりつい失言してしまい、慌てて口元を抑えながら謝罪を述べて。
「お仕事ですか?んん、そうですねぇ……。内容にもよりますが、用心棒程度ならば大体このくらいでしょうか。
あぁ、でも、お菓子をいただいたことですし、少しオマケしておきましょうかねぇ。」
受けるとしたらこのくらい、と言って出した指、それが示す料金はベテランの傭兵一人を雇うにそれ相応の相場。
だがオマケと言ってメアリは指を一本減らしてみせる。
■グアルティエロ >
「んはははは! 反応良えな! 嬉しなってまうわ! ほんまおおきにやで?」
宗教を信じる人は多いが信じない人嫌う人もまた多いのはそらぁ当然よ、
等の自論はまた何れそういう話になった折にでも披露するだろうが……
今は深く突っ込まないし深く突っ込まれもしなければ年齢の話にするりと移る。
顔いっぱいに驚きを浮かべてくれる様子に手を叩いてそれはもう嬉しそうに喜び、
「若者こうしてびっくりさせんのは若作りのモチベの一つやな。趣味悪ぅて申し訳ないが。
……おじさんぽいのそれどころじゃないんやでぇ~? 夜もおトイレによう起きる! 人の名前もよう出ん!」
おじさんみたいなところが、ずらずらずらずら出てくる出てくる。
ぽろっと漏れ出た失言にも怒るどころか顎まで逸らして大笑いだ。
しまいには涙まで出てしまってサングラスを畳んで懐にしまいつつ代わりに取り出したハンケチーフで目頭を拭う。
まじまじと、見ても見ても、彼女の感想通り彼女とさして変わりなさそうな面構えはずうっと胡散臭い笑顔のまま。
その表情がふと、眉根が寄り、悩ましそうに顎に手を添えてから提示された値を今度はおじさんがまじまじ見遣る。
「オマケしてくれるん? かたじけない。しかしこの値段なら、あんな、いや、ちょい、早速頼みたい事思い付いてな……」
そして視線が移り、在庫処分に来たはいいもののあまり捌けなかった中身一杯の菓子袋詰まった鞄と彼女を見比べ。
「……作りすぎた言うたやん? ……実はこれ三回目くらいでな、世話んなっとるとこの大家さんに怒られてん、俺。
捌けずに戻ったらまた怒られるし今度こそしばかれてまうかもしらん……!
それを取りなしつつしばかれそうになったら守るー……みたいな事お願い出来たりー……せん?」
そして零れ出る、なんとも情けない依頼。
■メアリ > 口元抑えながら次々に出てくるおじさん要素に驚きを隠せない。
こんな自分と年齢も変わらなそうな男が夜にトイレに起きている想像ができるだろうか。否、メアリはできるわけもなく
嘘だとは疑っていないが未だに信じられないといった表情を浮かべていた。
「頼みたい事ですか…?」
中身一杯のお菓子袋とこちらを見やる男の顔を見ては不思議そうに首を傾げた。
用心棒がなくとも自衛できる術はあるといっていた男に、一体何を頼まれるのだろうかと。
「そんな怒られたくない子供みたいな……。
二度もなんとかなったのなら三度目もどうにかなるのではないですか?」
何かと思えば出てきた情けない依頼内容にメアリはあきれた表情を浮かべ、小さくため息をつく。
「おじさんかと思えば子供っぽくなったり、なんとも不思議な方ですねぇ、貴方。」
■グアルティエロ > 依頼内容。怒られたくないから助けて!
怒られたくない子供が頼むなら微笑ましいものだろうけれど、見目が青年で実年齢がおじさんの頼み事としては……
まざまざと浮かび上がった呆れも嘆息もそれはそうだろうというものであるのだが当人としてはかなり切実であった。
「大家さん怖いんや! 俺ぁ戦れて言われりゃ羆でも勝つ自信あるけどあん人にはぶちのめされる自信もある!
肝っ玉母ちゃんていう言葉で出てくる見目を想像してみ? まんまやで? 何かとても敵わん気ぃすんねや!」
尚、お怒りの内容は、自分で消費しきれないし自分で捌いてもこれねぇもん作んな何度目じゃこら、等の至極ご尤もなもの。
「まぁ。まぁまぁ。我ながらな? 思うとこはあるけんども。怒られたないのは童でもおじさんでもそうやろ……!」
自分でも情けないとは思う、凄く思うが、怖いものは怖い。
口元を掌で抑えながら目線はあちらへこちらへうろうろと彷徨っては、ふと、
『ああどないし……』
「あかん。すまん。気色悪いもん見せてもうた。あかーん……ついなぁ……しもたぁ……」
口元を抑えていて顎が動いておらず喉仏も上下していなければ胸元も膨らんでいないのに、声が出た。
――秘密は彼女の瞳にも映ったろう。右手の甲に、唇と歯と舌、手の甲にある筈のないものが浮かび声を発したのだ。
泳いでいた視線が一気に下れば口元から右手を離してから下ろして上着のポケットへと突っ込む。
すまん、と左手を手刀の形に立てて胸元に添え、謝罪の形を取った。
「マジ怖すぎて制御ちょい失ったわ。あー。化外とかやないで? バケモンじみとるけどな? こーゆー体質やねん」
やらかした、と顔に書いてあるような表情しながら気まずそうに目線が明後日の方向へ向く。
■メアリ > 「肝っ玉母ちゃんですか……そういわれましてもねぇ。
別に仲介人として入ることは構いませんけれど、人間、怒ってくれたり叱ってくれる人がいる内が華ですから、
大人しく怒られて反省した方がグアルティエロ様にとって良いのでは……?
これももう三度目なのでしょう?」
情けない言葉を並べる一回り以上年上の男に容赦なく正論をぶつけるメアリ。
まぁ50近い男が怖い怖い言うほどなのだからよっぽど恐ろしい女性なのだろうな、と内心同情はしていて。
「……!」
――目に入った右手の甲に浮かぶ口のようなもの。否、メアリには本物の口に見えた。
先ほどまで無かったそれがまるで人の口と同様に声を発したのだから、思わず驚いたように目を丸くする。
「体質、ですか……これまた不思議な……」
驚くような奇妙な体質は今まで何度か見る機会があったからか、それともメアリ自身の性格故か、驚きはするも
それを畏怖して気色悪そうにする様子はない。
ただ少し興味ありげに顎を触りながら上着のポケットに隠されたその右手がある場所を見つめていた。
■グアルティエロ >
彼女から齎されるこれまた至極ご尤もな正論に『はい……はい……』というしかない五十路近くのおじさん。
母ちゃんから怒られるの怖いわ、余りにも怒られるの嫌で用心棒頼むわ、挙句その年若い娘から諭されるわ、
大きな背丈がぎゅうっと縮こまってそのうち本当に小さくなってしまうのではないかという酷い有様である。
ある意味では、そんなとてつもなく情けない事態からの転換、ではあるがこれまたの大失態。
「そ。体質。生まれた時は人の姿しとらんかったらしいで? 忌み子やゆうてようそん場で叩き殺されんかったもんや」
あまり人に見せるべきものでもないその“別口”を隠した右手をしげしげと見遣る様子に、眉根が寄るが片眉が上がり片眉が下がり、怪訝な顔。
「……いや。……ふふっ。なんや、人んこと言えんが、けったいな子やねメアリはん?
キャーは傷付くから止めてほしいんはそらそうやけどそない面白そうに見られるたぁ……」
その顔もすぐに解けて、可笑しそうに唇を持ち上げながら、隠したばかりの右手を引っ張り出す。
因みにこっちにも出ます。と、掌を見せれば、ばくり、掌に口が出現して、
『出すとこ出るもん結構自由やで~』
「どえらいしんどいけど2~4人にもなれたりもする。ちなみにそれやった後戻ったら4人分の疲労が2日後にな……」
掌の口と、元来の口で交互に喋って見せて聞かせてから肩を竦める。
■メアリ > 「そうなのですか。それはよかったですねぇ。
……あぁ、すみません。こんなに不躾に見てしまって。」
あまりにも不思議だったものだからつい視線を送ってしまい、男の怪訝な顔を見れば不快だっただろうかと反省する。
けったいな子、と言われれば聞きなれない言葉に不思議そうに首を傾げて。
「けったい、とは……?
あらまぁ、すごい。内側にもお口が出せるんですねぇ。
そしてその分の疲労が二日後に……ふふっ」
手のひらにも口が出現すると相変わらず畏怖する様子もなく目を輝かせて、口元を抑えながらすごいと感嘆の声を零す。
ここで先ほど話していたおじさん要素が再来すれば可笑しそうにくすくすと笑って。
「――さてと、今日はこの後平民地区に行く予定だったのでそろそろ向かおうかと思うのですが、
必要であれば今日だけ特別に仲介人としてついて行って差し上げても良いですよ。でも今日だけですからね。」
四回目以降があればその時は自分でどうにかしてください、とあらかじめ釘を刺しておきつつそう告げて。
どうするかと男に尋ねながら返答を待ち。
■グアルティエロ >
「いんや、構へんよ、慣れんでおかしな気ぃにゃなるが嫌やって程でもないわ」
ひらり、ゆらり、右掌が揺れて、謝罪に応じるのは気にしていないと意思表示。
唇も歯も舌も開いて喋りだした時と同じく閉じると直ぐに見えなくなる。
「うん? ああ、けったいな子いうんは変わった子ちゅー意味やな、流石に珍しいで?
……ちなみにメアリはんにゃ想像も付かんやろうが……
この2日後遅れの筋肉痛はな……3日は治らんねん……3日はずーっとビキビキきよんねん……!」
まるで、まだ読破していない絵本を見つけた、あるいは新しい玩具を思いがけずに見つけた子供の様な……?
そんな目線で見られる事は稀も稀でいまだ胡乱げな目元ではあるが口元はすっかり緩んで語調も笑気で揺れる。
若者は一日後には来てもう一日後には治る筋肉痛は年を取ると、云々おじさんの常識をまたぽろり零していたら、
「……ほんま!? いやもう諦めてたわ、おおきに、おおきにやでメアリはん!
今日だけでもほんま助かる。四度目ないようにほんっま気ぃ付けるから……!」
望外となっていた依頼の受諾に今度はおじさんが目を輝かせる事になった。
両手を、組む、ではなく掌をあわせて拝むように頭を下げてから、放置していた鞄の口を閉じて引っ掴む。
「ほなら、案内させて貰おか。平民地区のまぁ端っこの、長屋ー……いうてわかるかな、まあ集合住宅の一種や」
こっち、と人差し指を立てながらにゆっくりとした歩調で歩み始める。
西日もすっかりと落ちて暗く沈んだ街路、の中でもまだ魔導灯などが生きていて多少なり明るい道。
自分も、彼女も、暗がりを歩いて何ぞに絡まれようともまるで問題にはならないだろうが一応の用心。
■メアリ > 「変わった子……?変わってますかねぇ。
……3日も治らない筋肉痛ってあるのですか?」
変わった子という自覚はあまりなく、先ほどまで少女めいた無邪気な目をしたメアリは不思議そうにそちらを見つめる。
続く言葉には更に首を傾げることだろう。なんせ3日続く筋肉痛を体験したことがないのだから。
「じゃあ行きましょうか。
平民地区ならば向かう方向は一緒ですね。
そうだ、事がすんだら近場の美味しいお店を教えてください。
この後適当な酒場で食事をとろうと思っていたところなんです。」
男が指さした方向、魔導灯に照らされた方向へと歩みを進めながら男が住む場所の近くに美味しいお店は無いか尋ねたいと告げた。
――その後、目的地である長屋に到着し男の話していた大家さんと対面するのだが、果たしてうまく仲介人としての役割は果たせただろうか。
それは後の二人のみぞ知ることだろう。
■グアルティエロ >
「50年近う生きとってそないな目ぇは稀、ちゅーぐらいにゃな?
……ある。おじさんいう生き物は……もう色々あかんねん、何もかも遅うなるんや……早いんはおトイレぐらいや……」
んはははは! とまた大きく笑い声を上げながらに半世紀の中でも物珍しいと語る口草は後半やや乾いた笑いになった。
もう日差しもないのにサングラスを掛けなおして帰路とは違う遠い方向を見遣ると、やや悲しそうなおじさん……の振り、
直ぐに調子を戻しては指折り思いつく店を数え出す。店名。出てこないが。異国料理、郷土料理、等、等、等。
「ええでぇ。メアリはんは何がお好み? まぁ色々あるさかい道すがら聞かせて貰て。
あ、せや、オマケしてもらってこないな事付き合わせるお詫びとお礼もかねておじさんに奢らせてや」
――当たりを付けた料理屋に辿り着くのは、空地を出たのはそんなに遅くもなかったのに結構遅い時間帯。
肝っ玉母ちゃん、等と評した大家さんにどれだけ長く怒られて、さて、おじさんの顔面は無事であったか否か。
それはまた後々二人が出会った時に彼女に呆れられたり笑われたりで語られる事もあるかも知れない――……。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からメアリさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からグアルティエロさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にテオさんが現れました。
■テオ > 貧民地区のとある酒場。
それなりに混雑する酒場内、カウンター席に陣取りの飲酒。
平民地区では見た目のせいもあり、酒が飲めないので飲みたくなればこうして貧民地区へと足を運ぶ。
そしてこの日選んだ酒場は当たりか外れかが判断しにくい混み具合。
とりあえず酒を頼めば解るかと考えては適当な酒とつまみを頼んでしばし待ち。
注文して運ばれてきた酒とつまみは見た目はそれなり、後は味かと酒に口をつけ。
「なんていうか…微妙だな」
美味くも不味くもない酒、しいて言えばもう少し冷えていれば美味いかもしれない。
そんな感想を持ちつまみにも手を伸ばして一口、こちらも同じ感想にか持てず。
微妙という顔をしては酒を飲んでいく。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からテオさんが去りました。