2024/10/29 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にアキアスさんが現れました。
アキアス > 貧民地区の路地裏。
その日は運よく割の良い依頼を請けることができ、夕方には日銭としては上等な報酬を得て。
そうなれば繰り出すのは当然夜の街。

店を幾つかはしごしては、奢り奢られ散財して。
そのうちふらふら転がり込んだ路地裏でぐぅすかといびきをかいて小一時間。

不埒者に身ぐるみ剝がされても、難癖付けられても不思議でないものの、
明らかにガタイがよく手を出しては面倒と思われたり、憑りついている淫魔がしょうがないなぁとばかりに催眠で追い返したり。
幸運にも味方されての、硬い硬いベッドでの、目覚め。

「……んぁ。……ぁ?」

歓楽街が近いからか、喧騒の声も聞こえる。酒場かなにかが近いのかもしれず。
遠巻きに様子を見ている浮浪者の視線も感じるが、気にせず抱えて眠っていたらしい酒瓶にと口をつけ、
中身が無いことに気が付いて近場に放って適当に転がす。

塒のある地区とも違う風景に、まだ酒精の残る頭を揺らしながら、周囲を見回して。
この街に住んでそこそこ長い身であれば、そこそこ知り合いも居る身。
こんなところを知人に見られればどうなるだろうか。心配されるか、笑われるか。

想像しては、いつもの扱いとそう変わらないな、と、地べたに座り込んだまま背伸びをした。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にヴェルソートさんが現れました。
ヴェルソート > 夜の貧民地区にしては、酒で焼けても音程を外れても居ない、鼻歌と呼ぶには場違いな音を路地へとのびやかに響かせ、こつこつと地面を靴で鳴らしながら五体満足とは言えぬシルエットが、月明かりの中ぼんやりと。

「…~♪~……ぁ?」

別に怪我をしているわけではなく、片腕の無い男が通りかかった路地…時折貧民地区のどこかで歌を垂れ流す習慣のある歌唄いが足を止めたのは、見覚えのある姿が目に入ったからだろう。
まあ、路地裏に人の形をした何かが転がっていれば、見知っていなくても足を止めたかもしれないが、それはそれ。

「……おはようさん、そんなところで寝てたら風邪引いちまうぞ?」
明らかに今起きましたといわんばかりに地べたに座り込んで伸びをしている男に、苦笑いしながら声を投げよう。
まぁよく素っ裸に剥かれていないものだなぁ、なんて思いながら。運が良いのか、それとも何か理由があるのやら。
コツリと一歩近付けば、彼が転がした酒瓶に靴先が当たってカラン、と音をたてた。

アキアス > 伸びをしてから、首を左右にゆっくりと傾げる。
固まった関節が鳴り、まだまだ抜けない酒精に視界が揺れて。
そうしていれば掛けられる言葉に、釣った眼をさらに剣呑に細めては声の主を見上げて。

「夜通し寝てたわけでもねぇし平気だよ」

首を抑えては腕を上げて肩を回す。関節がごきりと音を鳴らし、硬い地面の上で寝た代償を示して。
知己からの声かけにも大して調子を変えないのはある意味こんなことも茶飯事ではあるからだろう。
年は取ったが体が資本の商売をしていれば、少々の無理はまだ利くというところだろうか。

のろのろと立ち上がり、衣服に付いた埃を落とす。
雨に降られたりしていないのも幸いと思いながら、腰を抑えて背を逸らして。

ヴェルソート > 「そうかい?…まぁ、大丈夫なら構わねぇんだけど。」
細められた目でこちらを見上げる男に肩を竦めながらも、彼が立ち上がれば、見下ろしていた視線は自然と見上げる形になるのは言わずもがな体格の差。
ゴキゴキと間接を鳴らす彼に苦笑して…さっきまで口ずさんでいたリズムに、歌詞を載せる。
旧い魔力を持つ言語の歌詞が、歌にわずかばかりの癒しの力を添えて響いた。

「♪~Tasyue enne weak nosaash…accrroad nuih yaserwe walasye…~♪」
傷み和らぐ夜の安らぎを貴方に…そんな意味の歌詞を口ずさみ、ゆったりと体を揺らせば、衣服の端々についた金属片がシャラリと、音律を刻み、甘やかなテノールの歌声を彩って。
1分と続かぬ数節の歌であっても、節の痛みや不調を和らげることはできるだろうか。

「……ご清聴、ありがとうございます…ってな。」
彼がそれに耳を傾けていたかいないかにかかわらず、そういって芝居がかった仕草で一礼した。

アキアス > 関節を解していれば聞こえてくるのは流麗な歌声。
彼と初めて出会ったのもどこぞの酒場で謡っていたところだったろうか。
冒険者稼業では歌で支援もする術を扱うそれに込められた魔力はどうやら自身の癒しに使われているらしい。

硬い床に支払った対価は彼の歌によってどうやら大分マシになる。
路地裏に響く歌声に、物陰から浮浪者たちやらも耳を傾けているようで。

「相変らずのいい声だなぁ。お代は――……」

彼の歌を褒めながらポケットを探るも、そこにあったはずの稼いだはずの金は少しも指に当たらない。
どうやらすっからかんになるまで使いきってから路地裏に転がり込んだのだろう。

「あー。わりぃな、ツケといてくれ」

ばつが悪そうに苦笑いを見せては、歌の効能で酔いもいくらか醒めたようで。
大きく欠伸をしては、もう一度伸びをし、ひらりと後ろ手に手を振りながら、路地裏を出ていく。

無一文で歓楽街に繰り出すわけにもいかず、腹は膨れているのを幸いと家路につくつもりなのだろう。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からアキアスさんが去りました。
ヴェルソート > 目に見えて効果がわかるような歌ではないので、彼がきちんと癒えたかどうかはわからない、が…良い声だと言われればニィ、と笑って。

「当たり前だろ? これだけは胸張っていかねぇとな。」
と自信を振りかざして返す。そして近くで誰かが耳を傾けているのも、いつもの事。
ここで歌う理由の一つではあるのだから。

「…おや、じゃあツケにしといてやるよ。…じゃあな。」
ポケットを漁るがモノがなかったらしい彼。別にここで歌を披露するのはいつもの事なので要らないと言ってもよかったが、まぁ貸しにしておいた方が、また縁もできるだろう。

去っていく彼にヒラリと手を振れば…くぁ、と欠伸を零し…再び鼻歌混じりに、路地の奥へと、ハミングを引き連れて姿を消して。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からヴェルソートさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にラヴィニアさんが現れました。
ラヴィニア > 王都マグメール貧民地区。
空は分厚い雨雲に覆われ、月も無ければ星もない。
雨音は騒がしく、雨脚も荒々しく、今夜ばかりは貧民地区の住人も鳴りを潜めているようだ。

幼さの残る少年に擬態した魔物もまた静かに時を過ごしている。
場所は以前少年が大きな樽を転がし運び椅子にしていたあの空き家の軒下。
誰も片付けていなかったのか、貧民地区の住人は誰のか知らないものを片付ける気にはなれなかったのか、今も尚あの時の樽があり、少年はその樽に腰をかけて雨雲に覆われた夜空を見上げていた。

「……………ンー♪」

普段はあまり感情を見せないのだが、今宵はすこぶる機嫌がいい、何故って雨が降っているから、そこかしこに水気があるから。

フードの奥底に潜ませているから傍目からは見え辛い相貌ではあるが、今夜は小さな口元が緩み切っていて、時折ちらちらとギザギザの歯さえ見せている。

そして極めつけは鼻歌。
人では到底奏でられない音域であり、海棲生物の鳴き声に近しい音を喉より発し、奏でている。

それもまた雨音で隠れてしまうけど。
若しかしたらその雨音の中から鳴き声を辿る者がいるかもしれない、でも、それでも機嫌の良さに歌うことを止められないのだった。

ラヴィニア > ――…歌声は貧民地区の夜空に響く。
魔物は少年は何時までも歌う、雨が止むまで、夜が明けるまで。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からラヴィニアさんが去りました。