2024/10/12 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にラヴィニアさんが現れました。
■ラヴィニア > バリ、ガリガリ、ゴリ、ガリガリ、ゴリ、ゴリゴリ
王都マグメール貧民地区。
空を見上げれば星と月が太陽の代わりに街を照らす時間。
人気(ひとけ)のない路地に硬質な物を砕き削る音が響く。
その不気味な音は路地の片隅にある空き家の一つから。
屋内ではなく出入り口の階段に腰を掛ける人影から。
フードを深くかぶった小柄が何かを喰らっているようで、
先ほどからその齧る音と咀嚼する音が路地にまで響いている。
袖から指先すら出ないオーバーサイズの穴と継ぎ接ぎだらけのローブ、同様にかぶっているフードも人影には大きく鼻下まですっぽりと包み、まるで汚らしい布の塊がもぞもぞと動いているようにも見えよう。
その汚らしいローブに身を包む人影が食らっているのはパン、見るからにカビが斑に生え常人であれば食べるのを拒むパンを平気な顔をしてギザギザの歯で噛り付き、食いちぎり、食らっている。
浮浪者ではない。
孤児や家出をした人間でもない。
かびたパンを喰らっているのは魔物である。
ぼろぼろのフードをかぶっていて傍目からは顔が見づらいが、青白い血色の悪い肌と中性的な顔立ちをした少年。
とある要件の為に人に擬態して王都に入りこんだ魔物だった。
話しかければ言葉を返し、対話することも可能な魔物。
衛兵や冒険者から身を隠すようにして、一人食事をしている。
本当ならこんな場所で一人ではなく、もう少し賢く立ち回れるのだが、王都に入り込む際にふさわしい姿に身体を変化させたのだが、そうしたら想定外、見た目同様に少々頭が回らなくなってしまって、今は見ず知らずの貧民地区の住人に戦災孤児かと哀れと思われカビたパンを投げつけられて、空き家の出入り口の段差に腰を掛けて、堅く乾いたカビたパンを食べている。
■ラヴィニア > こうして魔物は王都に入り込んだ。
本来であれば王都の外側で人間と対話する筈が好奇心に負けて、王都へと。
暫くは王都に滞在し活動することだろう。
本来の目的を忘れて人としての在り方を楽しむために。
この食事はその為のエネルギーを蓄える為の準備。
すべて食べ終われば指先すら出ていない袖でローブにこぼれたパンくずを叩きながら立ち上がり、今夜眠る先を探しに貧民地区の奥へ、奥へと、パンくずを零しながら歩いて消えて。
「…………ドコヘ……行コウ、………カナ。」
貧民地区の路地に吹き込む風に、誰かの声が混ざり響いて。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からラヴィニアさんが去りました。