2024/09/14 のログ
オウル > 今夜は快晴とまではいかないけども、星も月もある普通の夜。
ただ今夜も、いやここ最近ずっと【ギルド】が大忙しなのだ。
『飴玉』の素材採取に『試作品』の試験にレポート、それもやはりミレーや亜人向けに特化したモノを大急ぎで準備中だ。

――…確かに売れる時に売る、食い込める時に食らいつく、なのは承知しているんだけども、あまりに急な事ばかりで、少々怪しくも思えている。

ただ【ギルド】がその辺を考えていないはずもないし、自分よりも賢い上層部がメリットとデメリットを天秤にかけて決めた事なので文句なんてありゃしない、あったところで口にだせるわけもないのだ。

「なんていうんだっけ?分水嶺?」

あくまでも自分は下っ端である。
今夜もこうして『飴玉』を配り、『試作品』を食わせて、自分も食べて色々とレポートを頭の中で書く、後で手帳にでも書くために。

一応自分は耐性持ちだから、少々ピリピリくるが効果のほどはわからない。
食べやすいとか、味がわかりにくいとか、その辺の判別はつくのだけど……媚薬効果は、ねぇ……。

なのでいい獲物がいないか貧民地区をうろうろしている。
平民地区でもいい、富裕地区でもいいんだけど、あまりつながりある相手に試すと後でしっぺ返しが来るので。

しばらく仕事をしているが、ターゲットになりそうな相手は見つからず、大きなため息をつきながら少年は平民地区のほうへと消えていくのだった。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からオウルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル > 「あら、道間違えちゃったな……」

 区画整理なんて言葉を云ったらせせら笑われそうな都内でも特に込み入った地区である。少し前までなかった建物があったり、逆にあった筈の店舗がなくなっていたり。道を覚えたつもりでも、しばらく後に来てみれば全然知らない場所のようになっていることもあり、油断していたら迷ってしまう。

「あーぁ……こっちの方は、袋小路、か……――ん?」

 記憶通りに角を曲がって出た場所に見覚えがない。どん詰まりになっているらしい進路に溜息交じりに脚を止めると、そちらから響くぼそぼそとした声と人の気配。
 別に立ち聞きする訳でもないが会話の内容が耳に入って思わず硬直し、建物の隙間から見えた男達の様子に目を見開いた。
 これは、目撃しては拙い現場という奴――こんな場所では珍しくもないが、禁制品の裏取引のようだ。もちろん、見てしまった方もヤバイ奴――

「――………!」

 口を両手で抑えて、そろそろと静かに、静かに。抜き足差し足忍び足で後退して、気づかれない様にその場を離れ逃げ去ろうとした、が――

 こつ、ん……

 こういうシーンでは非常によくあるわざとらしい事態だが、爪先に転がった小瓶が当たって小さな音を立て、

『誰かいんのか?!』

 物音に気付いた袋小路の男たちが振り返り、ばっちり気づかれるという。
 こうなったらもう、逃げの一手。

「見てません! わたしはなんにも見てませんー!!」

『がっつり見てんじゃねえか!!」

 地を蹴って駆け出しながら取引現場に関しては咄嗟にしらばっくれるが、背後を追って来る男たちの即座な突っ込みが刺さって来る。

 追う者と追われる者の足音が路地裏に騒々しく響き渡った。

ティアフェル >  狭い路地を空き缶を蹴飛ばし、木箱を避けて、道端で寝ている酔漢を飛び越えながら、猛ダッシュ。追って来る足音は二つ、逃げる足音はひとつ。その逃げる方からの主張。

「見てない! なーんにも見てない! 見てないことにするからー!!」

 だから見逃しプリーズ。しかしそんな云い分が通るなら苦労はしないし、ここはそんな平和な場所でもない。

『無理があるだろそれ!!』

 ごもっともな応答が後ろから響いて、

「ですよねぇぇぇー!」

 そんな真面目にふざけているような声と足音がみっつ、たまたま通りすがった路地の人影へ迫ってきていた。
 
「くっそぅ、追いつかれたら殴ってやるぅ!」

 無駄に競り合いはしたくないので逃げ回っているが、最悪応戦に臨むハラは決まっている。スタッフを握り込み後ろを振り返りつつ、駆けていたので、進行方向からその人が動いていなければ、避けてなければ真正面からぶつかってしまうような勢いだった――

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からティアフェルさんが去りました。