2024/08/13 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にゴットフリートさんが現れました。
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貧民地区の路地。
じっとりと膚に纏いつくような熱気は夜になっても僅かに緩むだけ。
薄汚れた廃屋並ぶこの場所では、まるで饐えたような匂いさえ醸し出している。
薄い壁隔てた向こうで、良からぬ行いがあったのか、もしくは今その最中か。
ずっと前に起こった何かの犠牲者が、弔われもせずに放っておかれているのか。

そんな中を、似合わぬ装いの男が、巨躯を揺らしてゆっくりと歩いている。
誰がどう見ても、貴族としか言いようがない装いだ。
もう少し、娼館や酒場が近くにある場所であるならばいざ知らず
こんな貧民地区でも更に奥を歩く貴族なんて、二種類しかいない。
即ち、何かに狩られる者か、あるいは何かを狩る者か。

「どっちにしろ――」

――愚か者には違いない。
ささやかな、後腐れのないスリルのようなものか。
何の位置もない一時の享楽に生命を賭けることを厭わない者。
自嘲、というにはいささか以上に自負を奏でる言葉を独り言として響かせ
初老の貴族はそのまま、ゆっくりと深夜の散歩に興じる。

きり――ィ――……。

その背後で、僅かに夜の陽炎のように何かの姿が揺らめいた。