2024/05/04 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区郊外//フィ-リス修道院」にライアさんが現れました。
ライア > 貧民地区郊外に佇む、小さな一人住まいの家屋。
道沿いの看板に【フィーリス修道院】と書かれてこそいるものの、
その木の立て札は薄汚れた襤褸板で、書かれた文字も霞んでいる。
よくよく眺めれば窓にはステンドグラスがあしらわれており、
玄関は正面に大きく見開きで、一般家屋とは造りが違う事が伺える。

そろそろ斜陽も山間へと沈み、夕刻が夜へと切り替わらんとする頃。
家屋の中には薄っすらと灯りがつき、郊外の寂れた道を淡く照らす。

「――神よ。今日という日も健やかに過す事が出来ました。感謝致します」

家屋の応接間に当たる唯一広いと言える一室で晩食を前に祈りを捧げる少女の姿。
何も無い一日でも、また明日が有ると思える喜びに笑顔を浮かべながら。少女は硬いパンを独り齧る。

陽は落ちてゆき、貧民街の郊外には一時、不気味な程の静寂が訪れた。
こんな時間に来訪者があるとすれば、例えば貧困を始めとしたトラブルによって宿所に悩む者か。
例えば少女の元へ懺悔やカウンセリングを受けに来る者か。次の依頼を共にする予定の仲間か。

来訪者が有るならば、少女の一日は今暫くの間続く事となるだろう。
来訪者が無いならば、少女の一日は間もなく終わりを迎えるだろう。


門戸は、今暫く開かれているようだ――

ご案内:「王都マグメール 貧民地区郊外//フィ-リス修道院」にクレイさんが現れました。
クレイ > そんな静寂を切り裂くのは扉を開く音。

「おーおー、中は意外としっかり教会だな」

 声等から宿に悩む者や懺悔などを望む者ではないと一発で察する事が出来るだろう。
 しばらく教会の中を歩き応接室を発見すれば。

「ここで良いんだよな。問題ねぇなら入るぞ」

 と言いながらその部屋をノックする。

「ある人物からの依頼でここに来たんだが。前にたぶん世話になった奴からの手紙を預かってる。ここから3区進んだ先の娼館の女主人からだ。夫と喧嘩して家に帰れないからここに1日世話になったとか話してた」

 記憶にあるかないかはわからない。しかしそんな事を言っている。
 そして扉をぶち破ったりしてこない辺り少なくとも強盗などの類でもないとはわかるだろう。

ライア > 「――きゃっ。ぁ……」

少女がパンを口元へと運び小さな口をいっぱいに広げたのと、
扉が開け放たれた音が響いたのはほぼ同時。男が先ず目にするのは、
急な音に身体が跳ね、パンを床へと取り落としてシュンと眉尻を下げる少女の憐れな姿だろう。

「ぇ、ぁ、あの……えぇと……?」

急な来訪者に目をぱちくりとさせる少女。おずおずとした足取りで近寄ると小首を傾げ、
男の言葉に暫く耳を傾けて居たが――眉尻が下がったり、上がったりを何度か繰り返した後、ぽん、と胸の前で手を合わせ、

「――……まあっ。いつか、一晩中朝までお話をして下さったあの方でしょうか。
 とてもお辛そうになさって居て、結局お話を伺う事しか出来ずでしたが……。
 わざわざありがとう存じます。郵便屋さん……では、ないのでしょうね……?
 取敢えず、立ち話も何ですからどうぞソファに掛けて下さい。暖かいミルクをお持ちします」

少女は男へ大きく大きく頭を下げて一礼すると、にこりと笑みを向けた後ソファを促し一度足早に部屋を去る。
戻って来たその両手には銀のトレイ。カップに入った暖かいミルクと、クッキーが皿に並んでいる。

「こんなお時間までお勤めだなんて、大変なんです、ね……ん。ん? うぅん……?」

男の前にトレイを置くと、少女は方眉を吊り上げて男の顔をじっと見つめている。
何かを考えるように、思い出すかのように頭を傾けながら唸る姿は少し異様に映るだろうか。

クレイ >  
「おお、悪い驚かせたか」

 落とした姿を見れば思わず少しだけ笑ってしまう。
 その後の郵便屋という言葉にはハッと笑って。

「残念ながらただの戦争屋だ。でもこの辺りの娼館にはガキの頃に飯食わしてもらった恩があるからな。お使い程度はやってんだ。で、その人で合ってるぜ。話を聞いてもらえただけでも助かったし嬉しかったって答えてたぞ。詳しくは手紙を読め。俺の口から言うべき事でもねぇからよ」

 クッキーを出されればソファに座る。折角の好意だしこの後に行くべき場所がある訳でもない。
 だがクッキーのありかは自分の前じゃなくて真ん中に置くだろう。

「どうせならお前も食えよ。パン落としちまったみたいだしな……あん?」

 頭をひねっている様子にこちらも首を傾げる。
 それから少し考えて。

「あー、なんか噂聞いてる口か? 良い噂も悪い噂も色々流れてっからな俺。人気者は辛いぜ」

 なんてヘラヘラ笑いながらミルクを口にする。

ライア > 「ぃ、いえっ。お気になさらず。修行不足……修行不足よ……」

『驚かせたか』と声を掛ける男に両手をぶんぶんと振って大丈夫だとアピール。
落ち着きのない己を戒めているのか、胸の前で指を組んで何か呟く姿を見せる。

「まあっ。持ちつ持たれつ、人のご縁の成せる事ですね。素敵なことです。
 ……ぁ、はいっ。お手紙、確かに受け取りましたとお伝えくださいっ。お元気そうで良かったぁ」

男から手紙を受け取ると嬉しそうにきゅっと胸元でそれを抱き締め、緩んだ笑みを浮かべる。
男が『パン落としちまったみたいだし』と言うと、幼げな美貌を赤く染め、

「ぃ、いえっ。それはお客様に出す為のお菓子で私が食べるものではないのですそれに
 床に落ちた程度でパンを捨てたりしては罰が当たりますから私はこれを食べるので大丈夫なんですっ」

早口に捲し立てると、腰掛ける男の隣に何の警戒もなく座る。

「んん……うぅん……、あ……っ!
 そうです、クレイさまっ。クレイさま……ですよねっ?
 学院で何かの訓練……? を、されていたお姿を拝見した事がっ。
 私、学院の特別棟でカウンセラーをさせて戴く事があるのですが、
 庭園を抜けようと歩いていた時、貴方様の声を聴いた事がありましたっ」

ヘラヘラとした笑みを浮かべる男と、キラキラと瞳を輝かせて笑む少女。
どうやら、噂どころか見方によっては同じ職場で働く同僚であるらしい。少女の笑顔はとても嬉しそうだ。

クレイ >  
「了解しっかり伝えておく」

 そう答えるだろう。だが要らないと言われればそうかと言って。
 ジャラッと机に数枚のゴルドを置く。数枚と言っても1000ゴルド近い金額だが。

「じゃ、お布施。相手を満足させるなら自分は相手以上に満足にだ。俺の師匠の受け売りだけどな」

 なんてニヤリと笑う。教会である以上お布施と言ってしまえば断りにくいのを理解した上だ。返しますと言われてもお布施だし受け取れないとこちらも言い切れる。
 その後の話を聞けば思い出すように少し上を見て。

「……あー、そういえばなんかそんな話聞いた事あったな。カウンセリングとか受けようと思った事もねぇから意識してなかったわ」

 そもそもがそういう面目で娼婦を呼んだとか、カウンセリングとは名ばかりのセクハラとかそんな場所だろと勝手に思っていたのは色々と毒されているのだろう。
 クッキーを1枚齧る。

「ま、それなら同僚って訳だ。よろしくな、ご存じらしいし俺の自己紹介は省くぜシスターさん。でも学校でカウンセリングって何を……あー、俺の生徒がよく世話になってる気がするわ。新入生に戦争体験話すと大体吐くし」

 何を聞くんだと聞こうとして4月の風物詩を思い出して顔をしかめた。
 それでトラウマになってカウンセリングを受けるようなのが多そうだと。

ライア > 「はぇ…………、………………っ!?!?!?!?」

ジャラ、と。音を立ててふいに机の上へと置かれたゴルド。
少女は暫くの間その幼げな美貌をぽかんと間抜けな程に口を開いて眺めた後――驚愕の様相で一度ソファから立ち上がってしまう。

「ぉ、おっ、ぉぉぉお布施、ですかっ!? こ、これ、ぜんぶ、お、おふっ、おふせ……っ」

置かれたゴルドと隣でニヤリと笑む男の顔を交互に見返しながら、
少女は視線と両手を右往左往させながら混乱の表情で小躍りしている。
暫くそうした後、漸く落ち着きを取り戻せば謹んで受け取る事を男へと伝え、再び深々を会釈をするだろう。

「ふふふっ。お悩みが無い事は、よい事です。
 今まで直接的なご縁はありませんでしたが、こうして言葉を交わせて嬉しいですっ。
 矢張り、日頃の行いはいつか自身に返ってくるものなのですね。嗚呼、神よ――」

クッキーを齧って貰えれば満足そうな笑みを浮かべた後、少女はこの出会いを神へ感謝し手を合わせた。

「……はっ。そうでした、私はライア。ライア・フィーリスと申しますっ。
 ごめんなさい自己紹介もせずに、今後は何卒お見知り置き下さい、クレイさま」

――と、慌てた様子で居住まいを直して自己紹介を改める。
男が顔を顰めたのを見れば、少女は小首を傾げながら
『どこかお身体が悪いのですか……?』等と、見当違いな心配りを向けるのだった。

クレイ >  
 混乱している様子を見れば思わず笑う。
 良いからもってけもってけなんてジェスチャーで。
 悩みが無いという発言に関しては当然だとばかりにソファに深く座った。

「悩んだってしょうがねぇしな。自分で解決できねぇならすっぱり諦めて終わりだ。明日死ぬかもしれねぇのに悩んだってしょうがないだろ」

 傭兵らしいといえばらしい考え。悩むというのは未来の為、だが傭兵なのだからその未来が無いのは当然だから悩まないという思考だった。

「ライアな、覚えとくわ。今度暇なときに学園でカウンセラー室に遊びに行くかもだし」

 カウンセリングを受けるわけではなく遊びに行くという辺り酷い話である。
 まぁホントに仕事の邪魔をするつもりはないので向こうも暇そうならという前提がつくが。
 体が悪いと言われれば苦笑い。

「いや、たぶんライアに苦労かけてそうだなって思ってな。俺の授業、トラウマ抱えたりガキの頃からの夢がぶっ壊れる奴が多くてよ。たぶんカウンセリング受けに来る奴にいるだろそういうの」

 いたら何割かは俺のせいだからよなんて肩を竦める。