2024/04/08 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」に枢樹雨さんが現れました。
■枢樹雨 > 今夜もまた、ふわりふわりと霊体姿で街を眺める妖怪。
今日はだいぶ城壁の近くまでやって来た。
今にも闇夜に呑まれてしまいそうな月の灯りは心許なく、城壁近くはとくに暗い。
夜に生きてきた妖怪は夜目が効く方ではあるが、いかんせん興味を引くものを見つけづらい。
ふわり――。地面に降り立った妖怪は、その瞬間に実体となり、頭に被る薄絹を揺らす。
人の子が見ていたなら、急に姿を現した怪しげな女。
何のために頭の角を隠しているのかという行いだが、妖怪は気にする事もなく、仄暗い瞳で周囲を見渡した。
――見つけたのは、目を丸くしてこちらを見る浮浪者数人と、大柄な男。
「………アキアス?」
それは見覚えがあった。
カラリと下駄を鳴らし、貴方の傍に歩み寄ろうか。
■アキアス > 歓楽通りからの光に反比例するよう、貧民街の路地は暗い。
明確に、文字通り明暗分けるような区域。
酒を飲み潰れて無事なのは大分、幸運なほう。
更には知己が通りかかるのなら、上等な夜。
〝力の及ばない者には手を出さない〟は、貧民街の不文律に近しい。
それでもそれすら考え及ばない者がいるのもこの地区なのだけれど。
流石に唐突にその場に姿を現したような者に対しては、遠巻きに眺めるのがせいぜいか。
それでもその姿が見目麗し気な女と気付けば、解らないけれど。
「んぉ……おー、クルル。相変らずの出で立ちだなぁ」
異国情緒あふれる恰好の相手を建物の壁に背を預けては座り込んだ姿勢で見上げ。
ひらりと手を振って見せては、その手に空の酒瓶があるのに気づき、適当に脇に放る。
未だ寝惚けた頭を振っては、身体を伸ばすようにし。
歩み寄る相手を一端放って関節を鳴らしたり、欠伸をしたりと、酔いの残る頭を起こそうとはしている模様。
■枢樹雨 > 灯りの下ならば、快活で陽の気を放ちそうな紅の髪。
それもこの闇夜の中では霞み、どこか廃れた雰囲気を醸し出す。
人違いと、思わなかったのは何故か。
声を聞けば尚の事、互いの名を知る相手と認識できる。
立ち止まるのは、貴方の前。座り込む様子を、前髪の隙間から見下ろして。
「そちらは結構な様子だね。ここは君の第二の塒だろうか。」
放られた酒瓶が、高めの音を鳴らし割れる。
それを一瞥した後、寝起きとも取れる貴方の仕草を眺めよう。
淡々とした口調は、果たして冗談か本気か。
少し首を傾げると、おもむろに左手を差し出し。
「それとも、酔って立ち上がれない?」
■アキアス > 先日、偶さかの縁からゆっくりと時間を共有した相手。
その時の様子よりは、随分草臥れて見える事だろう。
低めなのによく通る声だけは、酒焼けもせず変わらぬままで。
直ぐ傍まで歩いてきた相手の髪の合間から見える蒼い瞳。
それをちらりと見上げながら、差し出された掌を眺め。
申し訳程度に上着の裾で手を拭ってから、握り、立ち上がる。
「まぁ、ちっと寝苦しいが、運が良けりゃ臭い飯付きの宿に案内される好いトコだよ」
あまりにひどいと見かねた衛兵が適当な罪状で一晩留置するのだと迂遠に漏らす。
当然彼女の言葉とは違い、こちらは冗談でしかない。
立ち上がれば途端に見下ろす側になる体格差。
握った手は何とはなしに放さないまま。空いた手で紅い髪を搔きむしり。
あー、と、考えがまとまらなさげに声を漏らしてから。
「クルルは散歩中か? それとも今夜の宿でも探してンのか?
なんならまた、俺んちにでも寄るか?」
彼女は最近身体を得た妖魔の類とは知っていながら。
まだこの国に居たのだな、くらいの感覚で今宵の動向を伺う。
その上で〝また〟と、塒に誘うなら。男の思惑も知れようものだろうか。
■枢樹雨 > 差し出した白い手。それを握るに際して手を拭う仕草。
構いはしないのにと、言葉にはしないが、手が重なればきちんと握り、立ち上がる手助けをしよう。
残念ながら貴方の体躯を引き上げる力はないが、少しのとっかかりくらいにはなるはずで。
「それはなかなかにお得だね。途方に暮れることがあれば、私も使わせてもらおうか。」
どうやら本気だった妖怪。
先ほどまで貴方が腰を落ち着けていた地面を、思案気に見下ろそう。
しかし貴方から問いが投げ掛けられるなら、碧眼を見上げる。
頭の角度の変化はなかなか大きなものとなり、長い前髪が少しこめかみの方へと流れ。
「宿は不要だよ。だから、散歩。知らない何かを探して。」
ひとつに首を横に振り。ひとつに肯定を。そしてもうひとつ。
じぃ…と貴方を見つめる数秒の後、握られたままの手を上下に揺らし。
「約束。…おしゃぶり、教えてくれるか?」
■アキアス > 彼女の手を無理に引いたりせず、酔いの残るわりに確りとした足取りで立ち上がる。
知らない何か。彼女はまだまだ身体を授かりたてで、色々と経験中なのだろう。
男の誘いに彼女も否やはなさそうで。
以前共に過ごしたときのやり取りを持ちだしてくるのなら、へらりと緩んだ笑みを浮かべて見せる。
「そうな、そんな約束もしたな。じゃあまぁ、またいろいろ教えてやるかねぇ」
握った手を離し――すぐに、彼女の腰元に添えるようにし、身体を寄せ。
貧民地区を後にし、自身の塒にと足を向けていく。
体の経験だけでなく頭の知識もどこか偏りのある彼女は、
妖でなければとっくに奴隷かなにかにされていそうだとも思いながら
道中、一応は〝お得な〟宿の話は誤解がないように冗談だと訂正して――……。
■枢樹雨 > 「頼もしいかぎりだ。礼は、酒のお酌で良い?」
貴方が妖怪の好奇心を満たしてくれると言うのなら、薄い唇を緩く弧を描く。
添えられる手に自らも身を寄せるのは、面識がある故か。
提示する対価がだいぶ安いが、一応真面目に礼を返す気はある様子。
カラコロと、暗い路地裏に鳴る下駄の音は、心なしか軽快。
お得なお宿へのフォローには、その軽快な足取りが若干鈍ったとか―――…。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からアキアスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」から枢樹雨さんが去りました。