2024/03/29 のログ
■セドリック > どうやらこちらには気付いていない様子、だがそれがこちらにとってはとても都合が良かった。
胸の内ではそれはもう悪い笑みが浮かんでいたが、顔に出さないようにきっちりとしまい込む。
困ったように半笑いを浮かべながら頬を軽く掻きながらも言葉を重ねていく。
「えぇ……と、いいますか、あの時に倒れそうな私を受け止めてもらいましたが、お気づきになりませんでしたかね?」
気づきました? というように首を傾けながら盗人の方にも視線を向けていく。
尤も体を探られ始めた向こうは反応を示す余裕もないかも知れないが。
勿論体を探ったところでそんなものはなく、叩いても揺すっても変わりないだろう。
しかし、取り出される荷物にそれらしいものが見当たらないという道筋をなぞったところで、悩ましげに目交に皺を寄せつつ、顎を軽くさする。
「困りましたね……私としては無事に返してもらえればそれでよいのですよ。すみませんが、彼の口枷を外してもらえませんかね?」
ここからは犯人に喋らせる番と、申し訳無さそうな顔をしつつも口枷を指さしてお願いをする。
無実を喚かせることができれば……次の段階へと進められる。
静かに、静かに、彼女へと向けられる魔の手が、蜘蛛の巣に絡め取るように捕まえんと姿を隠して迫っていく。
■ハク > ごそごそと、盗人の体を漁っているために背後の男の笑みには気づかない。
もしかすると盗人はその笑みを見てしまっているかもしれないが、口枷によりモゴモゴと呻くだけでハクが気づく事はないだろう。
「おっと?
あぁ、あの時の……む、ではあの受け止めた時に落とした可能性もあるでござろうか?」
宝石のサイズ感もわからないので、ひとまず盗人の体をまさぐりながら男の言葉に返事を返す。
まさぐる手つきも体が低級淫魔であることを自覚したためか、時折盗人の性感を刺激してしまい、呻く声に時折違う色が乗ってしまっているものの……
それとは意識せずにある程度まさぐり、見つからなかったので盗人から手を離した。
「ふむ……あいや、仕方ないでござるな。
よしお主、逃げようとするでないぞ?次に逃げたら先程よりこっぴどく捕まえるでござるからな」
一度男に振り返って、うむ、と頷く。
そして再度盗人に顔を向けてから後頭部にある拘束宝珠を手に取る。
するとバシュッ、と音をたててボールギャグが外れてしまい。
同時に手足を縛っていた拘束もほどけて掌サイズの黒い宝珠に戻ってしまった。
■セドリック > 「落とした……一応袋にはしまわれていたのですが、落とせば音とかで気付かと。ぶつかった後、一応確かめたら袋ごと無くなっていたもので」
探る度に何処かこそばゆいとは異なる音が交じる男の様子に、ふむと不思議そうに彼女の背中を見やる。
そして見つかるはずのない宝石、お願いに答えてくれたなら、ありがとうございますと深々と頭を下げていく。
逃げるでないぞと念押しされた賊の拘束が解かれていくと、窮屈さからの開放で何度か深呼吸を繰り返す。
そんな彼の前に片膝を着いてしゃがみ込むと、困り顔で語りかけていく。
「私もあれが帰ってくれば、その分の罪をどうこう言うつもりはありませんよ。だから──」
『知るかっ、俺は盗ってねぇ!! お前さっきぶつかった奴だろ!? だったら、そいつが盗ったんじゃねぇのか!?』
言葉を一気にまくしたてる盗人は、必死の形相で彼女を指さしていく。
何をというように肩を揺らして苦笑すれば、ちらりと彼女へと振り返った後再び視線は盗人。
呆れた様子で額に掌を当てて深くため息を吐く。
「何故捕まえる側が盗むんですかね……?」
『俺はお前を覚えてる!! あの時出てきた優男だろ!? それで俺は突き飛ばしたが、逃げてる時にどうやってスリ取るんだよ!! それに……そっちのアマ、お前を覚えてねぇっておかしいじゃねぇか、助けた奴のほうが触れてて、もっと見てるに決まってんだろ!?』
状況証拠というにはかなり拙い話だが、自身にしっかりと触れたのはどちらかと言えば彼女だろう。
それなら顔や姿形もしっかり見ているはずなのに、記憶にない事を矛盾と突きつける。
慌てていればそんなこともあるだろう、現に彼女はそうだった。
それが悪い方向へと向かうように、覚えてないことを際立たせるために助けられた者だという不必要な情報を告げたのである。
『そいつが盗ってとぼける為に知らねぇって言ってんだ、きっとそうだ!』
そこまで喚かせれば十分と思いつつも、再度彼女の方へと振り返る。
先程の呆れた笑みとは違い、困惑気味な表情は天秤の傾きが変わったことを示そうか。
捕物側が急転して捕縛される側へと変わらんとする焦りを煽るための、無言の視線。
■ハク > 「まぁ、それがしと違って急いでいたわけでないでござろうしな」
男が落とせば音で気づく、と言えば、その言葉には全く不審な点もないので頷き同意する。
拘束宝珠を解除したなら、まぁ再度盗人を縛る必要もないだろうと右手の先に魔蔵の魔術を発動させて空間庫にその宝珠を片付けてしまい。
そこで盗人もようやく言葉が自由になったせいか、荒っぽい様子で男と会話を始めた。
ひとまずは自分は口を挟むまい。
そう考えて男が落ち着いた様子で語りかけるのを耳にしながら盗人の言葉を聞いて……
「え、ちょ、待つでござるよ!?なんでそれがしが!?」
盗人に指さされ、男の視線も一度こちらに向けば流石に困ると両手を上げるポーズをしながら無実をアピールする。
しかし、男と盗人の会話が続けば更に盗人の意見が男にとっても同意をとれるものだったのか……ちらり、と再びこちらに視線が向けられる。
その視線に、趣味でこの造形にしてもらった大型犬用の首輪と、そこに刻まれたネームプレートの『ハク』の文字が2人にも見えることだろう。
「いや、それはそれがしがお主を捕まえる事に集中していただけでござって!
まぁ体格のいい男性だな、程度には思ったでござるが顔も見てなかったでござるよ!
そもそも視線をお主から切れば逃げられてしまう可能性もあるでござるし……」
盗人に指さされ、更にこちらが犯人だと強く言葉をかけられる。
それに対してこちらも潔白を証明しようとするが、言葉の強さから男も少しばかりこちらに不審の視線を向けてきているのに気づいて動揺を浮かべてしまう。
そもそも、宝石を盗人の体から発見することはできなかった。
自分の体にもそういうものはないだろう。少しその場で跳ねてみるが、乳房が揺れて乳暖簾が少しめくれて乳首が露出したり、短いスカートがめくれて割れ目が瞬間的に覗けてしまう程度で何かが体から落ちる事はない。
――ただ、先程盗人にも男性にも空間魔術で異空間にアイテムを片付ける様子を見せた。
そこを追求されると……他人にはその空間魔法の中身を見せる事はできない以上、少し困った事になると額に汗を浮かべてしまう。
■セドリック > 言葉を交わすにつれて次第に膨らむ彼女への疑惑。
大型犬用の首輪も性奴隷かそういう趣味の女がつけるぐらいにしか思わないものだが、ネームプレートで名前を確かめていく。
ホールドアップしながら濡れ衣だと応える彼女だが、言い分は今は盗人の方が通ってしまっている。
『そうやって俺に罪を擦り付けて精算しようって腹積もりだな!? 旦那、コイツそこの娼館の女だ。見た目はいいくせにやすいところでばっか見たぜ……さては客からもそうやって盗んで、俺等みたいなのに擦り付けてんだろ!?』
ここまで来ると言いがかりも酷いが、まぁ存在しない罪をでっち上げてもらうのが目的なので良しだ。
勝手に2対1の様な構図を作ろうとして、保身に走る汚い動きも彼女を追い詰めるのにちょうど良さそうである。
無実の証明と飛び跳ねる彼女の様子を見つめれば、桜色のニプルやスカートの下に隠れたスリットへとこちらも賊も視線が行くのは、男らしい反応というべきか。
盗人はニヤニヤとしているだろうが、こちらはわざとバツが悪い素振りと一瞬視線を反らして直視しない紳士を装う
そして、動揺を浮かべる彼女を見やりながらも、ぎこちない笑みを作って立ち上がった。
「まぁまぁ、とりあえず疑惑を晴らしましょうか。すみませんがぐるっと一周して見させてもらいますね。貴方が回ると、逃げられてしまうかもですから」
そちらの罪が消えたわけではないと、盗人に一瞥を入れながら牽制すれば、つまらなそうに視線を逸らすのがみえる。
ではと一秒もかからず彼女の全身を眺めるように、周囲を一周していく。
検分というのもあり、遠慮なく視線を向けていくので乳頭が隠れるだけの胸元や、ギリギリ隠れているのか怪しい臀部や股座にも視線を向けていくのだが、彼女の体を盾に体に触れずに服にだけそっと何かを仕掛ける。
とはいえその衝撃も、可動域の多そうな服が風に揺れた程度にしか感じないはずだが。
「あとは……その魔具の中身ですかね。拘束具以外も入っていそうですが……」
そちらの中身はどうだろうかと指差すと、盗人も見せろと言わんばかりに一緒に指差す。
調子のいいやつめと内心思って入るが、苦笑のまま秘めたままの問いかけ。
■ハク > 次第に強くなってくる疑惑の視線に、非常に困ったと狐耳をぺたんと伏せてしまいながら眉根を寄せる。
自分は無実なのはわかっているものの、それを説明しようと口を開くのに被せるように盗人がタイミングよく罵声を浴びせてくるため弁明もうまく行っていない。
おろおろとしてしまいながら、どう説明するか悩んでいる様子を見せればこちらの素性を盗人が口にした。
「い、いやまぁそうではござるが……!
その、安い所で仕事してるのは別にその、それがしの趣味であって……
盗むようなことは決してしないでござるよ!」
人間相手では妊娠しない体質であるのも含めて、実際安い娼館では1発……ではなく1時間200ゴルドという値段で相手をしてもいる。
それだけでなく、何なら貧民地区南東にある『公衆便所』と言われる無料で犯せる青姦公園にも顔を出す事が多いため、盗人がハクの穴を使った事もまたあるかもしれない。
ただ、そういう行為をしたいからするのであって、それで盗みを働くわけはない、とそこだけは必死に訴える。
飛び跳ねて見ても何もでない事で、盗人から好色な視線を。男からは少し気まずそうな視線を受けながら続く男の提案に頷いて、盗人から目を離さずに体の周囲を男が回るのを抵抗なく受け入れた。
その時、たまたま風も少し吹いたせいか、何かの仕掛けには気づく事なく盗人を見続けて。
「……いや、うう、いや、この魔術はあくまでそれがしが物品を出し入れするものであって……
それがしが出すものが全部、とは言えないでござる。
だからモノを出した所で何もそこに宝石がない、という証明はできず……」
正面に戻ってきた男性が、空間魔術の中身を改めたいと言ってくれば、その気持ちはわかる、と頷く。
ただ、他人が制御できるような術ではなく、もちろん何が入っているかはハク本人しかわからない。
であればそこからモノを出した所で証明にならないだろうと、言い訳をする。
――もしそれでも出せ、と盗人が言ってきて男もそれを止めないのであれば、不承不承でいくらか物品を取り出していく。
ハク個人の財布に保存食やら傷薬やらの冒険者用道具一覧。
今は装備していない大太刀や小太刀にちょっとした魔術用の補助具。
そして今身につけているような首輪や、富裕地区用のドレス。
その他は――基本的に出るもの出るもの全て淫具など趣味の品々になってしまうのだが。
大小さまざまなディルドーやアナルプラグにアナルパール、尿道プラグに局部ピアス。
物理的なものや魔術的な能力封印用アイテムや拘束具など、マゾ趣味らしいものが出てきてしまう。
■セドリック > 感情がそのまま表に出てくる耳の動きに可愛らしさを覚えれば、わずかに唇の端を上げる。
隠さなくても良い本心は遠慮なく曝け出しつつ、盗人の弁論が彼女を制していく。
この勢いだけでも表通りなら罪人がどちらにされるかといえば、彼女にされてしまいそうなところがこの国の腐ったところか。
『どうだかな……寧ろ男とヤる時間作るために盗んだんじゃねぇのか? てかお前……良く見たら公衆便所にも顔出してるよな、お前とヤッたことあるから知らねぇとはいわせねぇぞ! 旦那、このクソアマはそういう安々また開く淫売なんですよ、信じちゃいけませんぜ!!』
自分は味方と言わんばかりにこちらに近づきながら、彼女を指差す盗人に苦笑を浮かべる。
公衆便所というキーワードに、噂程度に聞いたことがあったため、なるほどと内心納得していく。
色狂いの女が自ら犯されにやってくるという青姦公園だが、その名前を聞いてわずかに眉が跳ねる。
それは彼女を軽蔑するという意味ではなく、そもそもの前提がひっくり返るのでは……という問題。
(「この方、見た目通りの淫売だったなら、罠に嵌める必要も無い気がしてきましたね」)
性的な格好を理由あってしている者を幾度かみてきた身であるため、彼女もそういうものだと思い込んでいた。
それが異なるならここまで罠を掛ける必要もないが、もう掛けてしまった以上今更引っ込めるわけにもいかない。
ただ、落とし所の選択肢としてやすくなるならそれはそれでよいと思いつつ、謀は続行していく。
『何を……後ろめたいものがあるからそう言ってんだろ、さっさと出しやがれ淫売女がっ!!』
「貴方、人のこと言えない盗人ですからね?しかし、水掛け論のままでは埒が明きませんから、出してみてくれますか? それでなければまた考えましょう」
調子に乗ってる盗人を窘めつつ溜め息を吐けば、彼女の持ち物検査が始まる。
財布に冒険道具、装備品や魔具の類、そこまでは問題なかったが、そこから先が混沌としていく。
首輪は……予備だろうかと思えば分かるし、ドレスもそういう場所に合わせたものかと理解できる。
だが多種多様なディルドやらプラグやらの淫具に、尿道を塞ぐプラグにボディピアス、挙げ句拘束具やら封印用の小道具まで出てくる頃には、盗人の方は表情を固まらせて引いていた。
それらの道具がごとごと出てくるところで、頃合いかと思えば、指先をほんの僅かに引く。
その瞬間、彼女の服に仕掛けた装置が作動する。
装置と言っても単純で、スカートの内側に極細の透明な糸で絡めた宝石を引っ掛けておき、指を引けば留め金は外れて何処かへ飛び、糸が解けて手元に戻って掌の中へ。
しかし、カツンという音とともに、淫具の中へ転がり出る赤い宝石が現れれば、状況は大きく変わる。
わざとそれだと言わんばかりに目を見開いて驚いて見せれば、わなわなと震える指先で宝石を指差す自作自演。
■ハク > でも、だって、それは。
盗人が盗人であったことは間違いなく、それ一点でまずこちらが有利になるはずだというのに……
言葉を扱う巧みさが不得手であるのもあってか、盗人にきちんとした反論もできず、次第に口も閉じ気味になってしまう。
口を開こうとするたびに罵倒と盗人扱いが降りかかればそうもなってしまうのも仕方ないか。
「なっっ!? ち、そんな、だから盗むわけはないでござるっっ……!
公衆便所に通ってるのも、娼館の案内と治安維持の一貫なのは使用者ならわかってるでござろうっっ……」
盗人が男に近づき、自分を淫売と罵りながら信じるなと声を上げる。
その視線は嘲りと侮蔑、好色混じりのものであり……公衆便所の事を思い出してハクのことを『便器』だと思いつつあるからだろうか。
ザーメンまみれになりながらも犯されては喘ぎ、男に小便を浴びせられても蕩けた牝顔を晒す。
その上穴はちゃんとした高級娼婦のモノであり、房中術の効果で男が何度射精してもすぐに精力と体力を回復させて、男が満足するまで穴を提供していたのだ。
今の大人姿でも子供姿でも使った事はあるかもしれず、もしかするとそれを思い出し盗人のペニスは勃起しはじめているかもしれない。
「う、後ろめたいものなどないでござる……うう、でも、うう、仕方ないにござるな……」
盗人と男が指示をしたなら、様々な道具に装備品、様々な淫具を並べていき――
魔術のかかった淫紋シールとオナホールのセットを取り出し並べた、そのタイミングで……かちゃり、と音がする。
みれば先程まではなかったものが。
淫具の並びの中に、赤くキレイな宝石が転がり並んでしまっていた。
「え……っっ、な、なんで……!?」
それをみて動きがとまり、冷や汗をたらりと。
■セドリック > 言葉数が少なくなり、閉口していく様子に舌戦は得意ではなさそうなのが分かる。
あまり謀も得意なタイプではなさそうかとつながれば、次の手でチェックメイト出来ると考えていく。
その合間も盗人は無遠慮な罵詈雑言を浴びせるが、盗人猛々しいとはまさにこのことか。
『どうだかな!? それに、わざわざ大人の姿やら子供の姿やら変わりながら股開きにくることが治安維持とは呆れたもんだぜ。まぁ、マンコは一級品だしこっちのザーメンが枯れるまで絞ってくるわ、ザーメンだろうが小便だろうが浴びせられりゃ喘ぐわ、レイプしようって気持ちは削れてるがそれもお前の趣味なんだろ? なんなら今やってやってもいいんだぜ?』
あの時の様にというようにニヤリと笑いながら薄汚れたズボンの股間にテントを貼る盗人。
そんな勢いも流石に自らを壊してしまいそうな淫具の数々に、ドン引くのも常人なら無理はなかろうか。
この男は寧ろ、それでも尚肉欲を求むかと内心驚きながらも、興味は深まる一方だ。
彼女に向ける視線は困惑ではなく、その興味が爛々と輝いて浮かんでしまうのが隠しきれないだろう。
エンチャントインクで作られたであろう淫紋のシールにオナホールまで出てくると、良く集めたものだと感心しつつも、転げ出た宝石を拾い上げる。
「……これですね。しかしこれで、貴方が盗ったのはほぼ言い逃れできませんね?」
ほら言ったとおりだろうと言わんばかりに腕組する賊を尻目に、手元に魔力で光を生み出すと、二本指で挟んだ紅玉をかざす。
傷がついていないかの確認だが、本来はここで傷物になりましたどうしますか? というつもりだったが、彼女にはその必要もないだろう。
彼女を咎めることもなく、ただ淡々と石を確かめ続けるのは、沈黙が彼女への圧になればという意地悪でもある。
おそらくは10秒程度の検分の後、光を消して、ゆるく吐息を吐き出して苦笑を浮かべた。
「幸い、傷はないですね。戻ってきたことは良かったとしましょう、さて、犯人はというのも……後は無実の証明も難しいですからね」
ローブの内側から取り出したフェルトの袋に宝石を仕舞い、懐に収めていくと、今度は腕を組んで頭を捻る。
数秒ほど無言のまま瞳を閉ざし、悩む素振りを見せた後、ゆっくりとそれを解いてパチンと指を鳴らした。
「貴方に興味が湧きましたので、一晩お相手ください。仮に盗んだとしても盗んでいないにしても、それでこの件は終わりです。そういうのがお好みなら、悪いお話ではないと思いますが」
交わることが好きならば、それで綺麗スッキリ片付くなら悪くないだろうという着地点を示しつつ、鳴らした指で彼女を指し示す。
その後、すっとその手を傍らで偉そうな顔をしている族へと向けていった。
「ということでこちらの賊に用はありませんの、あとはお好きに。突き出されるなら、その後お相手いただくということでどうでしょうか?」
今更何でと言わんばかりに喚きつつ後ずさる賊。
再び立場が逆転していき、彼女に主導権を返していった。
■ハク > 実際、治安維持などの名目は本当に建前。
ハクだけでなく、他にも三度の飯よりザーメンが好き、というような色狂いの娼婦たちが金より快感を求めて集まっている所はある。
ただし実際にそれで娼館にも金を払えないような浮浪者が性処理を行え、結果的に凶暴さが削がれて貧民地区の凶悪犯罪の抑止になっていることもまた結果的に事実。
結果、男の罵声に何も言えず……堂々とズボンにテントを作り、勃起を見せてくるのを見て少し顔を赤らめそらしてしまう。
今の状況はそういうものではないというのはわかっているものの……自分に向けて性欲をぶつけられると、興奮してしまうのだ。
精神的には悔しい気持ちになりつつ、反論もし辛いので完全に黙ってしまう。
「っっ、っぁ、そ、それは……」
その状態であるので、完全に犯人扱いで宝石を拾われても言い訳もできない。
自分が盗ったわけではない。
もしかするとただ服に引っかかっていただけ。
そんな程度の言い訳はいくらでもできるだろうが、今はそういう程度の言い訳もできずに男が宝石を手に取り改める様子を見ながら尻尾も垂らしてうなだれた様子を見せる。
「……わ、わかりました」
10秒程度の見分の後、盗みの対価として一晩の同衾を求められれば否応もなく頷く。
それどころかその場で地面に伏せ、土下座して頭を差し出す。
「私の不注意で、お手を煩わせてしまい大変申し訳ございません。
そちらの方も不当な冤罪を押し付けてしまい、まことに申し訳ございません……」
事実はどうあれ、自分の手元から男の宝石が出てきたことは事実。
恥じる気持ちを言葉に乗せて、土下座したまましっかりと謝罪の言葉を述べていく。
もしこのまま男や盗人に頭を踏まれても抵抗などせず受け入れる気持ちで、真摯に謝罪していき。
「先の冤罪は申し訳ありませんが、はい。スリの現行犯ではありますので、詰所に連行させてください。
その後、ご指定の場所がありましたら向かわせていただきます」
頭を伏せたまま、盗人をどうするか尋ねられれば……少しだけ呼吸を置いたのち、盗人ではあるのでやはり詰所につれていかせてほしい、と男に願う。
ただ、男がダメだというのであれば、仕方ない。スリの被害は自分の財布から補填しようと思っている程度には、冤罪を負わせた事に対して申し訳無さが勝っている。
■セドリック > 肉欲を向けてくる盗人に、平手打ちの一つでもすれば良いものをと思うが、恥じらいが艷やかに映る。
そんな中で偽りの証拠品が見つかっていけば、うなだれていく仕草に尻尾がつられていた。
わかりやすい子だと思いながらも、赤く透ける世界越しに覗き見ては手をおろしていく。
後は彼女を連れて楽しむだけと思ったところでの土下座は、完全に想定外。
恭しく謝罪を述べる彼女に、瞳が瞬き驚きが隠せないが、盗人は違った。
次第にクツクツと沸き立つような笑い声を上げれば、おうもっと謝れといいながらその頭に足を下ろそうとする。
しかし……その足が彼女に降ろされることはない。
「貴方……なにか勘違いをしているようですから、はっきりといいますが……貴方は完全な黒ですよ。彼女は黒っぽくみえるというだけですよ」
降ろされなかった理由、それは盗人の胸ぐらを掴んでこちらへと引き寄せたからだ。
上体が崩れ、たたらを踏んで耐え凌ぐ盗人はそれどころではなくなり、凄まれたことで言葉を失っていた。
金色の瞳が先程までの柔らかな気配を消して、殺さん勢いで睨みを聞かせると、黙っててくださいねと念押ししてから胸ぐらを離す。
淫売だろうが、自身の興味が湧いたものを蔑ろにする輩を許すことはできない。
神妙に大人しくなる盗人を尻目に、彼女の方へと跪くと掌をとって握り込み、持ち上げながら視線を合わせようとしていく。
「冤罪ではありますが罪はあるわけですからね、貴方がそこまで謝る必要はないですよ。私はその分いい思いをさせてもらえれば十分、そっちの盗人は……冤罪分恩赦貰えるように少し口添えすれば問題ないですよ」
それでいいですよね? と言わんばかりに盗人に振り返るが、冷え切った鋭い眼差しが否定を許さない。
首肯が見えれば、ほらこのとおりと言うように笑顔で彼女へと振り返り、手を引いて立ち上がらせよと試みる。
■ハク > 土下座した頭の所に、盗人が近づいてくる気配は感じる。
悪辣な気配の笑い声も聞こえてくるなら、やむを得ないと。自分が仕出かした罪業の結果と受け入れようとする。
だが、そこまで。男が止めてくれたのだろうか、盗人は足を頭に下ろすようなことはせず、また下がっていくのを感じた。
「……わかりました、ご厚意感謝します」
それから暫く。土下座したままの頭に聞こえてくる男の声は盗人は盗人で黒、というもの。
その後に顔をあげるように声をかけられれば頭を上げて。
差し出された手をとり、立ち上がる。
「承知しました。全身全霊で、ご奉仕させていただきます」
盗人は怯えたような顔を見せつつ、男はこちらに笑顔を向けてきて。
何かあったのだろうと察するが、そこを深く考えることなく『いい思い』を捧げる事に気合を入れる様子を見せた。
――むしろ、それにどこか嬉しそうな気配を漂わせてしまうのも、淫乱らしい証拠かもしれず。
「そういえばお名前を伺っていませんでした。お伺いしてよろしいでしょうか?」
そこで、男の名前も聞いていないことを思い出して話を聞き。
後ほど、男の指定する場所に向かうと約束をして盗人を連れて表通りに向かうのだった――
■セドリック > 淫乱ながら純粋というか、危うさのある娘という印象へと変化していく。
所詮悪党は悪党なのだからと、自身の冤罪など気にせずに切り返せばよいというのに、小さな罪すら大罪の様に受け入れる姿は、この国では食い物にされかねないと思える。
興味とともに心配が浮かび上がるとは思いもせず、面白い出会いもあるものだと胸が踊る思いだ。
そうして調子にのった盗人を変わりに断罪すれば、手を握ってともに立ち上がる。
「そうかしこまらなくて大丈夫なのですが……ふふっ、期待させてもらいますよ。厭らしい真面目さん、ハクさんとお呼びすれば良さそうですかね?」
畏まる様子に緩く頭をふるも、その瞳に映る性奉仕への期待にくつりと小さな笑みがこぼれる。
そしてゆっくりと解いた手が首輪に触れると、そのままなぞるようにしてネームプレートへと触れていく。
犬の名前を確かめるような、そんな仕草があったほうが彼女としては熱が入りやすかろうかと思っての戯れ。
その合間も逃げなかった盗人は相当先程の睨みが効いていたのだろう。
「あぁ、そう言えば名前がまだでしたね? セドリックです、ここらで輸入品などの売買をするしがない商人です。そこの大通りを北に抜けたところに屋敷がありますから、そちらで」
自己紹介と共に小さな魔石を取り出すと、彼女へと差し出していく。
魔力が当たると宙に光で地図が浮かび上がり、屋敷までの道順が人目でわかる代物だ。
そこでお待ちしていますと緩く頭を下げた後、再び盗人を連行する彼女を小さく手を振って見送ると、今は一度屋敷へ。
どんないい思いがやってくるかは、後に知れること……。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からハクさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からセドリックさんが去りました。