2024/02/23 のログ
ロイナ > 「えーっと、あとは何だっけ…」

夜の貧民地区。
人によってはおよそ物騒だと感じる時間帯の区域、季節に関係なく薄着の少女がメモに目を落としながら歩いていた。
今日は魔族仲間から頼まれた買い出しに来ている。
魔族の国で揃えればいいのにと文句を垂れたが、王都じゃないと手に入らない素材もあるだとか何とか。

半ばパシリ同然の扱いに散々不満をぶちまけたものの、結局根負けして現在に至る──というわけで。

「……ったく。あたしも別に暇じゃないってのにー」

普段王都をぶらぶらしている姿を見られたらそんなことも言えなくなるだろうが…
今その本人が傍にいないので好き勝手ぶつぶつ呟いている。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にリコッタさんが現れました。
リコッタ > 「わ…………」

お忍びで夜のお出掛け中だった少女は、前から歩いてくる相手の格好に目を丸くした。
真冬は越したといえど、まだ夜は冷え込む季節。そんな中で大きく肌を晒して歩いているとは。

(もしかして、娼婦の人……なのかな……?)

なんにせよ、満月が近付き性が狂っている自分には目に毒な格好だ。
フードを目深に被り、できるだけ相手を見ないように……しかし、無意識にチラチラ視線を向けながら。
小さく会釈だけして横をすれ違おうとする。

ロイナ > 「………これどこで売ってんの…?」

王都になじみがあると思っていた自分だが、いまいちどういう店に行けば買えるのかわからない品が幾つか。
メモと睨めっこしながら歩いていると、視界の端にふと人影がちらつく。

パッと顔を上げてみれば、此方をちらちらと伺いつつ歩いてくる小柄な少女。
まぁ視線を向けられることには慣れている。この格好だし…と。

「………あ。ちょっと、そこのひと」

特にロイナからも興味は持たぬまますれ違わんとしたが、ふと思い至って声をかける。
王都に住んでいる者であればわかるかもしれない。メモの品を幾つか指さしつつ…

「……えーっと、これとこれ。どこら辺のお店で扱ってるかわかる?」

なんて首を傾いで問いかけ。

リコッタ > 「ひょえ……っ」

自分に呼び掛ける声に、ドキリと心臓が跳ね上がる。

「あっ、お、お買い物……ですか……?
えっと……そうですね……じゃあ、少し拝見して……」

おろおろと、わかりやすく挙動不審な素振りをしていたが。
あなたとメモを交互にチラチラと目を向けて。
やがて、何かに思い至ったように声を漏らした。

「……ぁ……この商品、確か珍しい素材……でしたね……。
この前、いくつか仕入れた、のが……商会の倉庫に、あったような……」

どうやら、少女はなんらかの店の関係者のよう。

ロイナ > メモを見せ、さて何か知ってるかと期待の眼差し。
やがて思い至った様子に首を傾ぐ。

「……あ、やっぱ珍しい素材なんだ。──ちえっ、あらかじめ聞いていればなぁ」

ここまで長い時間王都を彷徨わずに済んだのに、と小さく舌打ちめいてぼやく。
続いて、商会の倉庫と聞けば瞬く。

「……あ、もしかして扱ってるお店知ってたりする? なら名前教えてくれないかな~」

流石にこの情報を聞き逃し、また一から足で探し回るのは厳しい。身体的にも、メンタル的にも。
両手を合わせ、頼むとお願いしてみせる。

リコッタ > 「あ、はい。最近出荷量が減ってるらしく……。
大半が王都に流れて来るんですが、それでも大分品薄で……」

俯いてぽつぽつと話す小さな声は聞き取りにくいが。
話す内容自体はしっかりとしていた。

「フォルティ商会、です。……えっと、良ければ案内……しましょうか?
時間的に、営業は終わってると……思いますけど……お急ぎなら、話は、通せますから……」

懇願するあなたをフードの下からチラリと見て。
もしかすると重要な用事なのかも……と、そんな提案。

ロイナ > 「品薄かぁ……通りで見つからないわけだ」

珍しいのもあるが、そもそも出荷の量が減っているなら自分どころか王都の民もそうそう探しあぐねているだろうか。
ロイナは存外耳が良い。聞き取りにくいような小声でも、しっかり理解することが出来る。

「……うーん。とはいえ時間も時間だしな……
今日中、とは言われてるけど、ぶっちゃけあたし自身そんなやる気ないし…」

私情マシマシで渋り始める。
結局のところ、必要としているのは自分じゃなくて仲間の方なので、だ。

「……それに、わざわざ案内してもらうのも悪いしねぇ。
あ、折角だし自己紹介しとこうか。あたしはロイナ。…君は、今の口ぶりからするにその商会の関係者?」

リコッタ > 「そ、そう……ですか……」

少し残念そうに、しかしどこか安心したような雰囲気も漂わせつつ。
少女はフードの下で小さく息をついた。

「私は……問題ない、ですけど。でも、もう夜遅いですし、ね……。
急用でないなら、よかった、です」

しかし「今日中」と言われてるのは大丈夫なのだろうか? と、ちょっと思うが。
そこは自分が心配しても仕方がないだろう。

「あ、リコッタ……リコッタ・フォルティ、です……。
お店は……私の実家、ですね。最近は、ちょっとお手伝い、してます……。

……えと、良ければ、今後ともご贔屓に……よろしくお願いします、ロイナさん」

ほのかに笑みを浮かべると、ぺこりと礼儀正しく腰を折るのだった。

ロイナ > 「営業時間外に突撃していくってのも何か、ねぇ」

どこか残念そうにしている雰囲気を敏感に感じ取りつつも、深く踏み込むことはしない。
今日初めて会った相手へ、一気に距離を詰めていくのは何だし…
それにロイナ自身、今日はあまり"お腹"も減っていなかった。

「リコッタ。……成る程、実家なんだ。じゃ、帰宅ついでに…って感じだった?」

それとも実家と言うくらいだから、今は一人で暮らしているのだろうか。
さておき。

「うん。明日、改めて買いに行くよ。…覚えてたらだけど。よろしくね、リコッタ」

自分よりはだいぶ小柄な相手に笑顔を向け、お互いの名前を知る。
覚えてたら、なんて不穏な言葉が最後にくっついたが。

「あ、でもお店の場所くらいは教えてもらわないとダメか。…えーと。
このメモの裏に描いてくれる?」

等と言いつつ、先程のメモを手渡して。
どこからともなくペンも引きだし、一緒に渡して促す。

リコッタ > 「えっと…………そう、ですね。
店舗と同じ建物じゃ、ないですけど……すぐ近く、なので……」

提案の理由はそれだけではないのだが。
みなまで言うことなく、あなたの予想に合わせるようにコクリと頷き。

覚えてたら、という言葉に苦笑しつつ。
お互いに自己紹介を済まんだので、今日のところはお別れ……と、思っていたが。
差し出されたメモとペンに、きょとんと目を丸くした。

「ぁ、地図……うー……下手でも、笑わないでください、ね……?」

困った様子ながらも、頼まれると断れないのか裏面に地図を描き始める。
しばらくして返されたのは……下手と言う程ではないが、ふにゃふにゃの線の地図であった。
おそらくは平民地区と富裕地区の丁度中間あたり。とりあえず迷うことはないだろう。

ロイナ > 「笑うわけないじゃん? 教えてもらってるのにさー」

なんて言いながら、裏面に地図を描く様を何となく見守る。
──やがて手渡されたそれに視線を落とし、うん、と一度頷いた。

「…大体わかった。ありがと!」

笑顔でお礼を言いつつ、メモ用紙をポケットに仕舞い込む。
さて、ぼちぼち夜も遅くなってきたか。

「……いい時間かな。じゃ、そろそろお別れしようか。また明日ね」

実際お店で会えるかはわからないが、手伝っているというのだから顔くらいは見れるだろうというゆるい思考。
ぱっ、と片手をあげ、ひらひらと揺らしながら踵を返す…

リコッタ > 「あ、ちゃんとわかりました……? よかった……」

安心したようにほっと息を漏らし、はにかんだように微笑み返す。
営業時間外の対応も遠慮してくれたし、優しい人なのかも、なんて思いながら。
少し顔を赤らめつつ、こちらも掌を小さく振り返す。

「は、はい。それではまた明日……ロイナさん」

そうしてしばらく見送った後、少女もその場を去って行く。
描いた地図の、印が付いた方へ。

「………………、……綺麗な人、だったなぁ……」

ぽつりと呟き、何故かちょっと前かがみになりながら……。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からロイナさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からリコッタさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にアキアスさんが現れました。
アキアス > 貧民地区の路地裏。
その日の午前中受けることのできた割のいい依頼を片づけて、
貰った報酬で昼下がりから安酒を飲んで仲間と騒ぎ。

そうして店を幾つかはしごしては、夜はこれからという時間までに潰れてしまい、
路地裏でぐぅすかといびきをかいて小一時間。

不埒者に身ぐるみ剝がされても、難癖付けられても不思議でないものの、
明らかにガタイがよく手を出しては面倒と思われたり、憑りついている淫魔がしょうがないなぁとばかりに催眠で追い返したり。
幸運にも味方されての、硬い硬いベッドでの、目覚め。

「……んぁ。……ぁ? ……ンだ、カラかよ」

通りから、夜の喧騒の声も聞こえる。酒場かなにかが近いのかもしれず。
遠巻きに様子を見ている浮浪者の視線も感じるが、気にせず手に持っていた酒瓶を口につけ、中身が無くては文句を言って。

塒のある貧民地区とも違う風景に、まだ酒精の残る頭を揺らしながら、周囲を見回して。
冒険者としてはそこそこ長い身であれば、こんなところを知人に見られればどうなるだろうか。
心配されるか、笑われるか。あるいはまだ宵の口だと、連れ回されるか。

想像しては、いつもの扱いとそう変わらないな、と、背伸びをして。