2024/01/28 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にトロさんが現れました。
■トロ > 夕暮れ時のこと。
女はのんびりと貧民地区を歩いていた。見るからにこの区域に不釣り合いな身なりをしているが、絡もうとする者はいない。
周辺住民が腫物のように扱う理由は、この地域で起きた事件に由来する。
半月ほど前のことだ。昼間、今のようにてくてくとのんきに歩いていたこの女を取り囲み、路地裏で事に及ぼうとした一団がいた。
しばらくしないうちに男の野太い声で「ケツが痛い」「口を何かで突かれた」といった悲鳴が混じる。
おこぼれに預かろうとした男達(あるいは女やふたなりもいたかもしれぬ)も、何分もしないうちに逃げてしまった。
残された女は満身創痍で倒れ伏す男達が持っていた酒を回収してはひたすら呷り、飲み干していたという。
『小綺麗な金髪アル中赤服女』としてその存在はまたたく間に認識され、忌避されるようになった。
さて、肝心の女はというと。
「自家発電は効率が悪いのですが……」
半月前に若干とはいえこの地域で稼働限界時間を延ばすことができたため、二匹目のどじょうを狙っているところだった。
■トロ > 悪事――悪事ではないが、悪い噂はすぐ広まるものだ。
女を狙う者達は噂を聞きつけて、距離をとっている。
『やったことが己に返ってくる』ならば、関わらないのが一番という結論に至ったらしい。
「……エールを」
露店なのか店なのかわからない、机と椅子がいくつか並ぶ空間を見つけると店員とおぼしき者にそう告げた。
店員は小綺麗な女がこの界隈に訪れるなど思ってもみなかったのか、あたふたしつつも酒樽からエールを汲む。
陶製のジョッキが届くと女はぐいぐいと呷りだした。
眠るなど、意識がない状態ならば――そんな悪党たちの期待は、数時間後に裏切られることになる。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からトロさんが去りました。