2023/12/19 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にルクスさんが現れました。
ルクス > 貧民地区のとある一区にて、きれいな音色が響いている。
物悲しさを押し出しつつも聞く人の心を穏やかにするような、切ないながら耳をよく通る音だった。
炊き出しをやっている教会。まともな職もなく、家も家と呼べるようなものではないところに寝ている人たちが集まっている。
硬いカビも生えているパンとほんの少し具が入ったスープを手に人々はその音色を座って聞いていた。
木製の椅子に腰かけて、ハーモニカを両手に音色を奏でる青年の姿。
傍らには汚れたマントと装備が置かれているが、それを盗もうとする者は一人としていなかった。


「…………ふぅ、こんなところか」

そうつぶやいて、音色を止めれば周囲の人たちの視線を一つ一つ返しながら。
ゆっくりと立ち上がり、頭を下げて。その音色を聞いた一部の人たちが少しずつパンの欠片などを青年の皿によそった。
青年はこの地区の住民ではない、ましてやこの国の住民でもないため、炊き出しを受け取ることはしない。
だが、こうしてハーモニカを披露する事でほんの少しの食事を彼らに分け与えてもらっていた。

「ありがとう、今日もこれで生きられるよ」

そう、子供や老人に青年は微笑みをかける。その頬には刻まれて幾年か経っているのであろう十字傷があった。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からルクスさんが去りました。