2023/11/10 のログ
ティアフェル > 「そう? そんなら別に買う必要なんてないけどさ。
 そういう時は『遊ぼー』でいいっしょ」

 作り笑顔のような表情に別に誤魔化す必要なんてないし、と首を曲げるようにして小さく笑気を洩らし。

「……ほらぁー。もう、お肌荒れるよ?
 乾燥する時期だし、がっさがさになっちゃんだから」

 薄暗い中でも隈はあるし顔色は優れないしで、もうこっちの感覚からしてみれば病人予備軍みたいなものだ。
 小さく息を吐いては顔を離し。

「どんな夢? 話してみなよ。
 眠れるようにしないとだめだから」

 握る手に力が籠り。不安を体現するように寄せられる頭をそのままよしよしとあやすような手つきで優しく撫で。

「えー? すっごい面倒なのぉー? それはヤダなー」

 などとわざとらしく高くした声でのたまうが、両手に縋りつく頬を払うでもなく撫でるように触れながら。
 怯えるような双眸に敢えて気楽そうにに、と気さくな笑みを見せて。

「そんなに深刻になんなくったっていーよ? 余計寝られんくなっちゃうじゃん。
 眠れない時ってあるよね。添い寝くらいならしたげるからそんな顔しないで? 笑う門には福来るだし、いつもみたいににこにこしてた方が断然かわいいから」

 重くならないように気やすい口調で宥めるように話すと、ね?と腰を曲げて下方から顔を覗き込むような目線を向け。

サテラ >  
「……そっか、それでいいんだ」

 目からうろこが落ちたかのように、はじめての価値観に触れたようなぽけっとした表情をして。

「あぅ。
 ごめんなさい……」

 叱られると幼子のようにしゅんとして。
 実はしばらく、まともに食事もとれていない事を知られたらますます怒られそうだと思いながら。
 それもいいな、なんて甘えた事を考え。

「その、ね。
 大切な人たちが、居なくなっちゃうの……」

 本当はもっと凄惨なフラッシュバックなのだが。
 そこまで心配掛けるほど、甘えきれない。
 素直で正直なくせに、甘えるのはヘタなのだった。

「ふぇ……」

 冗談でヤダと言われたら、一瞬泣きそうな顔になるが。
 温かな笑みにほっとしたら――

「うん、うん……。
 ありがと、ティアちゃ――あ、あれ……?」

 ぽろぽろと、涙が溢れ出していて。
 慌てて手で拭うが、それでも止まらず。

「ご、ごめんね、すぐ治まるからっ」

 なんて、落ち着こうとすればするほど、涙の勢いは増してしまって、ひくひく、と横隔膜が震えてしまうのだ。
 

ティアフェル > 「うん。だって、友達、でしょ?」

 遠慮会釈してしまっては水臭いというもので。
 そんなの基本、と当然のことを語る顔をして。

「謝ることないけど……気を付けなくちゃ、心配、するでしょ?」

 しょげる様子に年下のように幼げに感じて、少し困ったように首を傾げて。
 飯食ってないなんて聞けば干からびたいのか、と説教の後食事をさせること請け合い。

「そっか……よっぽど辛い夢、なのね……」

 どこか小さな子供みたいに悪夢を語る声に、どんな夢だろうが当人の辛さはそれぞれだ。
 端的な語り口だが、詳細は云うにはばかられるのかもしれない。
 詮索を控えて。

「いえいえ……て、嘘だよっ? さっきのはっ、冗談だから、ね?」

 礼には及ばないとふるり、首を振るけれど、不意に落涙する様子に驚いたように目を瞠り。冗談がきつかっただろうかと前言撤回しつつ。

「よ、よーしよーし。女の子は基本情緒不安定な生き物だしね?
 箸が転んでも笑うし、花が枯れても泣くもんだから。
 泣いたら落ち着くかも、それでよく眠れるかも」

 泣くな、とは云わず。その内しゃくりあげてしまうので、気が済むまで泣くのも手だ、と両腕を伸ばして、ぎゅ、と抱き寄せるとよしよしと背中をさすりながら慰めるように。

サテラ >  
「ぅ、ひく、友達……。
 友達……ふぇぇぇぇぇ」

 友達と言ってもらえたら、それだけでもう堰を切ったように涙が溢れ出し。
 抱き寄せられれば、声を上げて泣いてしまう。

 そうして、泣き止むのには少しの時間が必要だっただろう。
 人前で、それも友人の前で泣いたのはどれくらいぶりだろうか。
 親友の前でも泣けなくなったのは、いつからだったか。
 きっと、自分の素性を知らない場所だからこそ、こうして曝け出せているのかもしれない。

「……ご、ごめんね。
 その、泣きだしたら止まんなくなっちゃって」

 すっかり赤くなった目元で、優しい友達を見上げる。
 それからまた、その胸元に甘えるように頭を摺り寄せて。

「こんなふうに、してもらうの、その、久しぶり。
 ティアちゃん、とってもあたたかいね……」

 ひと泣きしたからか、少し胸の中が楽になり、声も穏やかに落ち着いたが――。

『ぎゅるるるる――』

 と、大変豪快に、お腹の音がなるのだった。
 

ティアフェル > 「泣きどころが弱いよ……!?
 やっぱり……寝てないとねえ……揺らぐもの……」

 友達、のワードで一層泣きじゃくってしまうのに反射的に突っ込みを入れてしまうも。
 まあ、寝不足だと情緒不安定に陥りやすいもの。
 さもありなん、と抱きしめたまましばし泣き続ける様子を根気よく背中をさすって、よしよしとあやすように見守り。

「ううん。気にすることないし、何かよっぽど堪えてたんでしょ?
 あんまり溜め込んじゃだめだよ? 自分には優しくしてあげなきゃ」

 真っ赤な目をして涙に濡れた顔をハンカチを取り出して拭って。
 甘えるように擦り寄る頭に擽った気に肩を揺らしながらもまたよしよしと掌で柔く撫でて。

「そう? 時には遠慮なく甘えるといいよ。女の子の特権でしょ。
 サッっちゃんも泣いたせいかぽかぽかしてるねえ。
 ………あら」

 一頻り泣いて落ち着いてきたかに見えたところで、今度はお腹が泣いた。
 こっちの心配もしてくれとお腹が主張しているように思えて、くす、と笑声を零しては。

「ごはん、食べいこっか。
 消化に良くて温かくておいしいものね。沢山泣いて沢山食べたらきっとよく眠れるわ」

 まだ開いている店も探せばあるだろう。ぽん、と柔く背中を叩いて促してみて。

サテラ >  
「そっか、えへ、特権かぁ」

 温かさを分け合うようにしっかりと抱き着いていたら。
 お腹の音がなって。

「あぅ……実はしばらく何も食べてなくて……」

 しゅん、と『ごめんなさい』と、言いながら、恥ずかしさを誤魔化すように胸元に顔を埋めつつ。
 ご飯、のお誘いには『うん』と短く頷いて、ぎゅ、と友達のドレスに皺を作り。

「――いっしょに、寝てくれる?」

 と、恥ずかしそうに潤んだ瞳で、見上げるだろう。
 

ティアフェル > 「そうそ、いいよって云ってる人には泣けばいいし甘えとけばいいよ。
 ……もー。寝てない食べてないってどうなってんの? マジで干物になるよ」

 しょうがないなあ、とお腹を鳴らして隈を作る、ぼっろぼろな有様に息を深く吐き出して。
 胸に顔を埋められて、これはわたしの方が恥ずかしい奴では?と、つんつんと後頭部辺りをつついて。

「うん、いーよ。ごはん、ちゃんと食べたらね?」

 おかんみたいなことをナチュラルに云いだしながらこくりと首を縦にし、それじゃあ行きますか。と
 泣き濡れた後、恥ずかしそうに潤ませた双眸で見上げる様子に、小動物のような愛らしさを感じて。
 抱擁していた腕を解くとその代わりに手を取って、何はともあれ食事にいこう、と勧め。歩き出そうか。

サテラ >  
「えへへ、ごめんなさい。
 ……ふふ、ティアちゃんのこと好きになっちゃいそう」

 すりすり、と友達に甘えては、こんどはちゃんと立ち上がり。

「はーい。
 じゃあ、さっき取り返してくれた金貨で、美味しいの食べて、良いところにお泊りしよ?」

 立ち上がったら立ち上がったらで、優しい友達の腕にしっかり腕を絡めて抱き着いて。
 それこそ、飼い主に甘える小動物のように、ぴったりくっついて歩いていく事だろう。
 

ティアフェル > 「謝んなくっていーよ。
 やだぁー、そんな、照れるぅ~」

 照れ照れと後頭部に手を当てアホ毛を揺らしつつ。
 自分には甘えっ子に見える彼女の頭をぽすんと撫でて。

「あ、いーね、やっぱり奪還しといて良かったわ。お金はそうやって有効に使わなきゃね」

 あんなおっさんにくれてやってる場合じゃなかった、と笑って肯き。
 腕を絡められると、不安定なピンヒールなのでむしろ安定を図ろうとこっちもさり気に掴まる感じのバランスで歩き出し。
 泊まるなら平民地区の方がいいかと貧民地区を抜けてまずは終夜営業の飲食店を探しにいくのであった――

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からサテラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からティアフェルさんが去りました。