2023/10/06 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にオウルさんが現れました。
■オウル > 週末ともなると忙しくなるのが此処の仕事である。
貧民地区に好奇心で足を踏み入れる学生や貴族、近道しようとして迷い込んでしまう平民、えとせとらえとせとら……。
少年は今宵は冒険者ギルドからの依頼で平民地区と貧民地区の境界線に立っている。
理由は様々あれど貧民地区に踏み込む者や、『運良く』貧民地区の何某に追われて平民地区に逃げる者を手伝い安全な場所へと案内する仕事なのであるが、基本何も起きない。
稀に炊き出しのシスターが通るくらいで基本何も起きない。
が、何か起きたときの為に此処で待機して、いざというときの為にいるのだが――うん、やっぱり基本何も起きない。
口には棒つきの飴を咥え。
貧民地区の路地に捨てられている木箱に腰をかけ。
足を軽くぶらぶらさせながら、頼りない街灯が照らす薄暗い路地で時間を過ごす。
流石に一晩中ではない。
ある程度過ごせば交代の冒険者が来るはずだし、緊急の要件があれば伝令もくるはず、後は――…差し入れとかあると嬉しいがそれこそ稀で……。
「……浮かれるのはいいけど、警戒心ってのもって欲しいよなぁー………。」
次の日が休日となれば浮かれる者達が多いのは解る。
解るけどもだ、危険な場所に踏み込むなって話で、安全な場所で生活できる人たちは一時のスリルの為にこんな所にこないで、安全な場所で過ごして欲しい、少なくとも平民地区は此処よりマシな筈なのだから……。
■オウル > ポロッと落ちないように舌ベロの裏で飴を押さえながら欠伸を噛み締め、欠伸の所為で浮かんでくる右眼の涙を指先で擦り拭う。
「ん、んー………暇。
何か起きるといいなーとは言わないけども、暇だよな。」
眼帯で隠れた左眼、裸眼の右眼を共に一度閉じて、二度目の欠伸を噛み締めながら、苦味のある笑みを口元に浮かべると、舌ベロの上でミント味の飴を転がして、溶かして遊ぶ。
空を見上げても今宵は平和な月の輝く夜である。
耳を澄ませばあちこちで聞こえる喧騒も悲喜交々もいつもの事、今日も何もない一夜で終わりそうで、それはそれで良い筈なんだが、トラブルは求めていないはずなんだが、ちょっとくらい、何て思ってしまう。
足先はぶらぶら。
踵で座っている木箱を蹴って適当なリズムを刻もうか。
■オウル > まあ音楽のセンスはゼロなので、近くから行き成り怒声を頂く事になって、思わず棒つきの飴を飲み込みかけて、咽た。
「…ごめんなさいー………。」
反省である。
大反省である。
魔法や物品が投擲されないだけ感謝である。
頬を引き攣らせて、声のする方に謝罪を向けながら頭をぺこぺこと下げて、仕方なし、箱の側面を叩いてた脚を止めて、片膝に足をのせて足を組みなおす。
交代までまだ少し時間がある。
――飴の味も残りあと僅か……。
遠くから、誰かが駆け寄ってくる。
交代要員の冒険者だろうか、視認すると組んだ脚を戻して木箱より腰を浮かせると、足先より地面に下りて、一言二言冒険者と引継ぎ対話する。
特に何も連絡はなし。
会話が済めば軽く会釈をして平民地区に向けて歩く。
少年は一人真夜中の平民地区の闇へと消えて……。