2023/08/27 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区・娼館通り」にヴェルソートさんが現れました。
ヴェルソート > 貧民地区から他の地区へとつながる一角にある、娼館や酒場が点々と立ち並ぶ通りにある店の一つから、緩やかに響く甘いテノール。
店の中では、隅に作られた椅子付きの小さな段差程度の舞台で、光沢のある衣装に身を包んだ隻腕の歌唄いが、手に持った七色に煌めく指揮棒を揺らす。
どこからか響く伴奏に合わせて、ゆったりと…語りかけるように唄う歌声が、しっとりと響く。

『さぁ目線を重ねて さぁ手に手を重ねて
 足を合わせ吐息合わせ 見つめ合い踊ろうか…♪』
まるで男女の逢瀬のような、湿り気のある音程で…誰かと踊るように体を揺らせば…しゃりん、と手足や裾に下がる金属が擦れて涼やかな音を立てる。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区・娼館通り」にアキアスさんが現れました。
アキアス > ふらふらと、その日の稼ぎを持って歩く娼館通り。
貧民区のそこは、富裕地区や平民地区と比べればいくらか博打感はあるが、それは意外性だと前向きに。
事実運よく飛び切りの(訳ありなのだろうけど)上玉を安価で拾えることもある。
そもそも自分が対して上等でないのにとも思いながら。

ふと耳に届く歌声を聞けば、それから耳が離せなくなる。
似たように聞き入る者も多い中、その声がする店へと足を踏み入れて、舞台に立つ歌い手の男を見つければ適当な席に腰を掛けて。

「ここいらに着たのは久方振りだけど、上等すぎないか……?」

そう漏らせば近場のよっぱらいがモグリかにーちゃんと声をかけてきて。
彼が歌姫と呼ばれる男娼だと聞かされる。

どうやら自分の印象通り上等な高級な男娼らしい。
そういう印象で見れば、歌声にすら艶が乗り、欲を煽るようにも聞こえるから不思議で。
唄が終わるまで待てば他の客と一緒に拍手やらではやし立て、
おひねりとばかりに彼に向けて、硬貨の入った小さな袋を投げてよこした。
買う気はあるけど、売る気はあるかと、とある地方の娼館で流行った手法。
放られたおひねりから、運よく拾われた、あるいは最初から娼婦が目を付けた相手のものを拾い、
その夜を共にする、というようなものだが……他に真似する者も居なければ単なるおひねりとだけ、取られるかもしれない。

ヴェルソート > 『リズム重ねひとつふたつ 吐息重ねみっつよっつ
 手が離れ 吐息重ね いつつむっつ あなたと 唇重ね 唇離れ ななつやっつ あぁ、あぁ……♪』
湿り気を帯びる声が官能を擽るよう、魔力が分かるものが居れば、魅了のそれが声に宿っているのがわかるかもしれない。
はしばみ色の髪と瞳が照明に照らされ、柔らかな肢体にまとった煌びやかな服の…腕のないひらつく片袖が揺れるたびにひらりとはためき、しかしそれが気にならぬように、歌と伴奏が空間を彩る。
リズム合わせて揺れる指揮棒に従い、艶めいたバイオリンの音色と歌声は途切れることなく…一曲歌い切ったところで…ふっと、音が止む。
静かに一礼する隻腕の元へ、向けられる声と拍手と、投げられたおひねり…その中に、袋に混ざったものが一つ。

「……おや。」
珍しい、このあたりではあまり見ない手法に小さく笑えば、他のおひねりの回収を店員に目配せして任せ、袋入りのそれを拾いあげ…それを投げた男に見せるように、小さく揺らして見せた。
伝わっている、と…売る意思を伝えるために。

アキアス > 唄を聞いている間も、どうにも自分に憑りつき…もとい、共生している淫魔の気配が五月蠅い。
どうやら彼の歌声が美味しい、と言いたいらしく。
どういうことかと淫魔の感じている感覚を少し分けてもらえば、ぞくりと二の腕が震える。
魅了の魔力。自身も淫魔通じて知る類のもの。
この街においては、商売上手、あるいは商売熱心とでも言えそうかと思いつつ。

投げたおひねりの中、わざわざアキアスのものだけ拾い上げ、他の者は店員に回収させる。
件の地方の娼館では、幸運によるものでなく、娼婦に見初められてのものと示す様な行為。
歌に集中していてあまり進んでいなかったエールを一気に飲み干して。
彼の元に近づき、へら、と、頬を緩めて見せながら。

「アンタになら伝わりそうだなァって思ったのがアタリだったみたいだな」

伝わって良かったとも告げ、そこからは相手の都合を聞いていく。
そこらの街頭で客を取っている娼婦でなく、ここで歌も売っている高級な男娼なら予定もあるかと。
このままこの店でか、場所を移すのか、もしくは男の塒にまで来てくれるのか。
自分の中で、淫魔がやたらと騒いでいる気がするのは、歌以外にも魔を惹きつける何かがあるのかもなぁ、と、彼の方をまじまじとも見詰めつつ。

ヴェルソート > 「ごきげんよう、物好きさんがいると思ったけど、見ない顔だぁね、はじめまして。」
そう言って近づいてきた男に示すように、おひねりの入った袋を懐にしまう。
ここでこの袋を突き返せば一転、目の前で相手を思い切り振ることになってしまうことも、ちゃんと知っているつもりだ。
意図したもの、というよりは…声を磨いた結果、不可抗力もあって宿ったものだが、使えるものは使えばよいと割り切って。

「まぁ、ここではやってない手法だから一瞬迷ったがね…合っててよかったさね。」
戦士も、貴族も、ならず者も…もてなす側として、聞いた話の六割は理解して話を合わせられるようにする娼婦の嗜み。
ならまぁ、この程度は、知っておかなければ。

「あいにく、俺は舞台を借りてるだけだからね…控室はあるけど寝床じゃねぇから…どこか場所があるならついていくし、ここが良いってんなら、そっちの子に行って部屋を借りておくれ。」
予定を聞かれればそう言って、特定の所属の男娼ではないのだと、苦笑いしては彼に予定をゆだねるとしよう。舞台を借りたお題として、店員が回収したおひねりは、後程店側と折半される予定だ。

アキアス > おひねりの入った袋を懐にしまってもらえば、そういうところも解っているのだと。
こういう場でのちょっとした遊び方を知っていて実践するのは楽しいもの。
相手が知らず外れたらそれはそれ、という所だけれど、今夜はしっかり当たりを引けたようで。

「物好き? …まぁいいや、お初さん。ここいらに来るのは久しぶりでね」

王都から少し離れて仕事をしていて、最近戻ってきたのだと。
周辺状況にも慣れ今日は一稼ぎできたから魂の洗濯にネ、と。そんな風におどけて語る。

「はぁー。高級男娼ってのは伊達じゃないってか。そりゃ色々期待も持てるなぁ。
 んー……そうだな、歩くの嫌じゃなかったら、俺んちでもいいか?」

とある大きい稼ぎの際に、王都に構えた自宅。
平民地区にあるその家は一人で暮らすには十二分で。
誘ったのはどうせ高級な男娼を誘うなら場末の宿より勝手知ったる塒のほうがよいのと、
誰に気兼ねすることも無く楽しめるから、というところ。
彼が頷くなら、二人連れだって男の家にと移動していくのだろう。

アキアス > 【移動します】
ご案内:「王都マグメール 貧民地区・娼館通り」からアキアスさんが去りました。
ヴェルソート > 「まあ、俺もなんだかんだおじさんだからね。やっぱ若い子の方が人気あるわけよ。…なるほど、おかえり、とでも言った方が良いかい?」
首を傾げられるとケラケラと笑いながらも…もちろん、歌は変わらず好評だがね、とそこは主張を譲らずに。
なんだかんだで自分を買ってくれたのだから、損をした気にさせたくはない。

「ふはっ、じゃあ期待に応えねぇとな。
 ん?OKOK、なんなら、払うもの払えば冒険者の随伴だってしてるしな、歩くのは慣れてるさ。」
これでも呪歌は折り紙つきだぜ?なんて自慢を一つ挟めば、じゃあ行こうか、旦那様。と…彼の腕に隻腕を添えるように付き添って、連れ立って店を後にするだろう。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区・娼館通り」からヴェルソートさんが去りました。