2023/08/11 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にジーゴさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にヴェルソートさんが現れました。
ジーゴ > 「だから、よこせってんだろ!」
徐々に日が沈み、暗闇が広がり始めた頃。
人通りのかなり限られる貧民街に何やら鈍い音と揉めるような声が響く。

浮浪児と思しき子どもを崩れかけた塀際に追い詰めているのもそう年齢の変わらない子どもだ。ミレーの少年は浮浪児の胸ぐらを掴んで、壁に押し付けようとする。

「だから、金よこせって」
浮浪児は悲鳴をあげて、体を捩り逃げようとするけれども、ミレーの子供も腕の力は弱めない。
追加で足蹴りまで追加して、より一層、浮浪児と思しき子供を塀に押さえ込もうとする。

ヴェルソート > 「さってと……今日は良い感じにおひねり集まったし、早めに帰っ…て…」
娼館通りで歌を披露し、そこそこにおひねりを手に入れて懐が温まり上機嫌な隻腕の男。
どこかで果物でも買って今日は早めに帰ろうかと思った矢先、何やら揉める声が聞こえて、足を止める。
さて、チンピラ同士がもめてるなら止める気はさらさらないが、聞こえた声がなんとも聞き覚えがある気がして…覗いた先に、一瞬思考が停止する。
聞き覚えがあるはずだ、気になるはずだ。
……うちの子が…知らない子供の胸倉掴んでカツアゲの真っ最中であった。

これは…良くない、非常に良くない。
しかしここで声を張り上げたら逃げられるかもしれないと…気配をなるべく殺して、少年の背後に。
以前どこぞのカラスさんにやったのと同じように…ガシッ、と隻腕で、イヌ科の耳が目立つ少年の頭を鷲掴んでやろうとする。

「わぁ~るいワンコはこぉ~こかぁなぁ~?」
音程も音量も自在の歌唄いの喉は、まるでしわがれた得体のしれない何かのような声を、かもしだして。

ジーゴ > 「だから、よこせっつの」
足での蹴りまで加わると浮浪児の抵抗は少し弱まって。
ミレーの少年が壁に押し付けている浮浪児のポケットに手を突っ込んで金目のものをむしりとろうとしている。

「あ゛?」
ポケットの中の小銭に手が触れたちょうどその時。
背後から接近する人影に気がつけなかったのは、彼自身が正気ではないからだ。
突然何者かに頭を鷲掴みにされて、反射的に振り返る。
浮浪児を掴んでいた手は咄嗟に離して、自分に掴み掛かってきた何者かに手を伸ばす。
振り向きざまに体重を相手にかけて体制を崩させようと試みて。
相手が「誰」なのかは、興奮している少年はまだ気が付かない。

ヴェルソート > あーあ、蹴りまで入れちゃってまぁ…これはなんともいただけない。
いやまぁ、たまに手癖の悪さを見せることはあって、見かけたその都度拳骨して注意していたが…流石にこれはある意味予想外であった。

「あ゛?じゃねぇよバカワンコ。
 人の物を取っちゃいけませんって、何回目だぁ?ん?」
振り返りざまに体重が動き、体勢を崩そうとする動きにパッと手を放すことでリセットをかけ、なんだかんだで目線の位置がそう変わらない背丈の少年をじ、と見つめる。
放した手が拳を握り直し…口元に寄せられれば、拳にハァ~、と吐息を吐きかける。
興奮している彼の記憶に残っているかは知らないが、今から拳骨落とします、の仕草である。

ジーゴ > 「あ゛?なんだてめぇ」
完全に逆上しているミレー。
既に自分に攻撃をしてはいない相手に対してもその敵意は収まることはない。
明らかに自分の主人と気がついていない様子でつかみかかる腕の力は弱まらない。

「オレは金がいるんだよ」
その瞳はいつもよりもひどく興奮して、獣の気配が強く
触れられるくらいに近くによれば普段はしない独特の香りが鼻をつくだろう。
金がいるから邪魔すんなとばかりに再度掴み掛かって。
腕がない側の肩を狙ってバランスを崩そうとしているのは本能的なものだろう。
もはや理性は飛んでいるけれど。

ヴェルソート > 「なんだてめぇ、って見てわかるだろうが。…んお、っと……こりゃあ、思った以上にバチ切れてんなぁ。」
まさか真正面から睨んでなお気付かないとは思わなかった。
というより、理性が飛んでるのだろうか…でも、理性が飛んでてあれなら…まぁ、まだカワイイ方か、などと頭の片隅で。

「金に困るような生活させた覚えはねぇぞ?…って、なんだこのにお…いっ!」
鼻についた独特の匂い…記憶の引き出しを漁っている間に、獣の瞬発力で肩を掴まれて一瞬舌打ち、袖口を引っ張られればグラリと揺らぐ体。
腕の無い側に倒れたら、受け身を取るに取れないのが本能的にわかっているあたり、なんともいやらしいなぁ…こんな体術教えたっけ?いや…多分カラスくんだきっと。
しかし、匂いのもとは酒か、薬か…知識のそれと照らし合わせながらも…揺らぎ倒れる体は、衝撃を逃がすためにごろりと転がろうとする。

ジーゴ > 「じゃましてんじゃねーよ」
理性がバチ切れて普段よりも随分凶暴になっている狼の動きに迷いはなくて
力だっていつもよりも強い。
狙い通り地面に転がった相手には踏みつけるような蹴りを放つ。
体重は軽いし、靴も簡素なものだからそこまでの威力はないけれど
自分の体勢は崩さすに相手に打撃を与えられることがメリットだ。

カラスくんに濡れぎぬを着せられていることなどいざしらず。
相手が倒れたら深追いする必要もないのに、振り下ろす足が止まらないのは
理性ぶっ飛びの産物だ。
本人だって何を摂取したのかはもう覚えていない。
ただ、目の前の相手を痛めつけることを目的に体が動く。

ヴェルソート > 「邪魔するに決まってんだ、ろっ。」
とはいっても、地面にべしゃっと転がされたままでは格好がつかない、そのまま二転三転転がって足から逃げては起きる時間を稼ぐが、一発背中に足がめり込み、ゲフッとせき込む。
これは言葉だけでは止まらないなぁ、と思い直しながら、ブンッと隻腕を軸に足を振り回しながら牽制し、一気にバク転じみて立ち上がろうか。
しゃん、と服の裾や袖先にきらりと光る「楽器」が擦れ合い、音を立て…息を整えた。

『一つ目の夜が来る 月が昇り光が海に差した…♪』
シャラシャラと、リズムを取る体と一緒に金属片が触れ合い音を立て、口から歌が紡がれる…ゆったりとした、数え歌のような、子守歌のようなメロディを口ずさんで…。

ジーゴ > 「クソがっ」
普段のジーゴであれば、ご主人様には決して言わないような言葉。
一発しか蹴りが入らず、大したダメージにもなっていないことが腹立たしくて言葉が漏れる。
それでも、相手が体制を整えると蹴られないように間合いをとってまた手のひらを握りしめる。

「ん?」
『知っている音』だ
そのまま、再度体勢を崩させるべく、殴りかかるつもりだったけれど、
聞こえてきた音に獣の耳が反応して、握りしめられた拳が緩んで
ほんの一瞬前まで、気が立って鋭かった瞳もその攻撃性がおさまる。
まるで、寝てしまう寸前のような力の抜けた幼い顔の狼がぼんやりと立っている。

「ヴェル?」
きょとんとしたミレーは目の前の主人の名前を不思議そうに呼んだ。

ヴェルソート > 服が砂まみれになったのは歌姫(ディーヴァ)として不覚だ。
意図せぬ汚れは歌の魅力を下げる。それは歌い手として恥ずべき事だ。
なんだかんだで、護身術を磨き直すべきかと考えるのは、もうちょっと先の事。

癒しと鎮静が込めた子守の数え歌…彼の動きが止まれば楽器の演奏を引き継ぐように腰の指揮棒を引き抜いて、揺れて不安定な楽器の音色を幻影のフルートが引き継ぐ。

『二つ目の夜が来る 月が満ちて雫が零れる
 三つ目の夜が来る 月が欠け落ちて欠片が踊る
 四つ目の夜が来る 月が沈み消えて海が凪いでいく
 あぁ あぁ 夢を見よう また月が昇るその時まで…♪』

傷が癒え、毒が抜け、狂気を鎮める子守歌…さっきまでカツアゲされていた子供も、痛みが失せればそそくさと逃げ出すことだろう。

「おう。で、ジーゴくぅん……誰かクソだって、ん?」
ワンコーラス歌い切り、フルートの音色が途切れれば…己の名を呼んだミレーの少年につかつか近づいて…ニンマリ笑う。

ジーゴ > 「ヴェル、なに?」
普段よりも幼く見える獣の耳はぴくりと揺れた。
きょとんとしているのは、
なんで自分がここにいるのかもわからないし、
なんでご主人様とこんなところで向かい合いっているかもわからないからだ。
なぜか痛かった拳も痛みが治っていくのはご主人様の歌のせいだろうけれど。

「やっべ」
記憶はなくても何かまずいことになっていることは雰囲気でわかる。
即、踵を返して逃げようとする。
今、ご主人様から逃げたって帰る家は同じだし、
ずっと帰らないことはできないのに、都合が悪くなるとすぐに逃げようとするのは
彼の悪い癖の一つだ。

「あ…」
すぐに後ろを向いて、貧民街を駆け抜けて逃げてしまおうとした
一歩目で、さっきまでクスリだか酒だかに浸っていた少年は崩れ落ちる。
ご主人様が近づいてくればそのまま見上げた格好になるだろうか。

ヴェルソート > 「なに?じゃねぇだろなに?じゃ。」
ぱたぱたと、服についた土埃を叩き落としながら、こつこつとジーゴに近づいていけば、踵を返した彼がカクン、と崩れ落ちた。
そりゃまあ、明らかに何か体に悪いものを摂取したんだろう彼の毒を軽く抜いたところで、反動が消えてなくなりはしないだろう。
すぐに追いつけば、上から覗き込むように見下ろす形になり。

「まったく、何飲んだか知らないけど、俺の顔分からなくなる程ラリった挙句に子供カツアゲするなんてまぁ、はしたない事してくれちゃって……ん?」
そう言って再び少年の頭に手を伸ばし…がし、と頭を鷲掴む……ギリィ、とそのまま握り込む勢いで。

「仕事でもない限り、人様のものを勝手に取っちゃいけませんって、俺教えたよなぁ…ジーゴくん?」
人並みの腕力だが、アイアンクローっぽいことを、試みてみるのだ。