2024/05/16 のログ
アーサー >  
半分程の書面のチェックを終えれば、漸く一息をつく。

「…相変わらず血の旅団…アスピダ方面の混乱は続いている、か…」

直接関わるでもない管轄の話である。
しかし一時的な派兵などは規定数ながら行っているため、その報告が挙がってくる。

「膠着状態にあるのであれば、他の師団と連携をとって…というのも、そう簡単にはできないのだろうな…」

ギ…、と背もたれに背を預け、天井を仰ぐ。
窓から吹き込む季節の風が涼やかに彼の金髪を撫ぜる。
心地よい風の筈であるのに、それがどこか、ただただ冷たいものに感じる──。

「ましてや第一師団は主部隊を王都から動かせない制約もある…。
 僕が表立って口にすれば波紋もある…か…‥。歯痒さは、耐える他ないのだろう」

整理の終わった書面をとん、と飾り紐にまとめ、小脇に抱え立ち上がる。

「──それでも私的な相談程度なら構わないだろう。
 見守るだけと何もしないことは同じだ。動かなければ…」

目を伏せ、自分に言い聞かせるようにそう言葉を呟きを残して青年は執務室を後にした──

ご案内:「王都マグメール 王城・王国軍執務室」からアーサーさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城 テラス」にベアトリスさんが現れました。
ベアトリス > 王城内様々な庭園があるが、そのうちの一つを臨むことのできるサロンルームのテラス。
設えられているテーブルの一つに腰を下ろし、仕事の合間の余暇を静かに過ごす女がいた。

気持ちの良い初夏の緑。
馥郁と薫る春薔薇の香りが庭園に降りずともここまで香ってくるよう。

季節に合わせた春摘のお茶の味わいもまた舌に軽やか。
カップを取り上げ静かに傾け。
今度の休日くらいは……官舎ではなくタウンハウスに戻るべきかを少し考える。

自分自身の義務と責任を放棄したわけではなく。
そこも本来は自分自身が管理すべき場所であることを自覚しているからだ。

(───そのためにもキリのいいところまでは書類を片付けないとなりませんね…。)

執務室に残っていた書類の山を考えると──柳眉が少々、歪んだ。

ベアトリス > ──カチ、とソーサーにカップの底がぶつかる。

は、と淡い色の双眸が軽く瞠られ、視線を巡らせた。
景色はさほど変わりはしないが、陽の傾き具合にかすかに目を細めた。

休憩を終えて、仕事に戻る時間が来たよう。
小さなため息を零して、カップをテーブルに戻す。
控えていた侍従を招くと辞去を伝え、ティーセットを片付けてもらうように頼んだ。

ゆったりとした仕草で立ち上がると、もう一度庭で咲きこぼれる花々に視線を流す。
穏やかな笑みを口元に宿して、淡く薫るのを楽しんだのち、踵を返すと自身に宛がわれている執務室へと静かに戻ってゆくのだった。

ご案内:「王都マグメール 王城 テラス」からベアトリスさんが去りました。