2024/04/22 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城2【イベント開催中】」にモルガナさんが現れました。
モルガナ > 領主たる妹の名代として領地にまつわる年度初めの報告を終え、
年度行事等数々の書類を提出して文官の執務室を後にする。

「病害の兆候、ですか。」

嘆息一つ、文官より作物に関するよからぬ噂を耳にする。
周期的な流行。その兆し。様々な側面から推測の域を出ないと見過ごすには結ばれる点の数が多いのだと。

幸いなのは流行する地域は国土全てではない。
が、一部ミナスジェイラス領も含まれる所見が見えており、さてどうしたものかと思案顔。

「借りを返していただくついでに、膿を絞り出すのもいいですわねぇ」

かつてミナスジェイラスに多大な援助を受けた名家がいくつか。
そのうち世代交代で薄暗い噂といくつかの証拠が浮かぶ家が更にいくつか。

いずれミナスジェイラスを手のひらで躍らせているつもりの愚鈍共を磨り潰して土地の反映に活かすのも
また王なき玉座への忠義の証になろうかと思案を巡らせて。

「……うっぷんを、晴らしたいところですわねぇ」

予定調和の事務作業。潰した愚者は数知れず。
となれば、相手にするのは退屈な有象無象ばかり、と考えるだけで気も滅入る。

燃え盛るような情愛を味わえるような逢瀬か、
血の滾るような闘争を味わえるような逢瀬か。

そう言う相手と憂さ晴らしをしたくもなるのだが。

ご案内:「王都マグメール 王城2【イベント開催中】」にギュンター・ホーレルヴァッハさんが現れました。
ギュンター・ホーレルヴァッハ >  
「随分と仕事熱心な事ですね」

執務室を辞した彼女に投げかけられる声。
此の王城で、敬語混じりとは言え彼女の様に尊い立場の人間に気軽に声を掛けられる立場の者は、そう多くは無いだろう。
未だ声変わりを迎えていない様な少年の声色。貴女が視線を向ければ、その声質通りの体躯と見た目の少年が、一人。

「しかして、書類の山脈に埋めるには、武勇で鳴らしたミナスジェイラスの御息女にあまりに失礼と言うもの。国政を慮るのも結構ですが、その辺りは良い文官に任せてしまっても構わないのでは?」

優雅に微笑む少年は、彼女の武勇を褒め称えつつそれとなく戦場への出立を煽る。
理由は簡単。彼女の様に優秀な人間に国政を気にされては、王国が"立ち直ってしまう"かもしれない。
旧態依然とした王国に辟易している少年にとって、それは実に宜しくない事なのだから。

「特にお困りの事も無いでしょうが、もし軍資金や武器兵器が必要でしたら幾らでも御支援致しましょう。それが王国の為になるのならば、惜しむ理由もありませんからね」

彼女が戦場に向かってくれるのならば、それくらいの出費は惜しくは無い。清廉潔白な貴族や王族は出来れば中央には居て欲しくない。
そんな内心を露程も見せず、猫を被りに被った少年は穏やかに、にこやかに微笑むのだろう。

モルガナ > 「あらこれはホーレルヴァッハ様。ご機嫌麗しゅうございます。」

 声をかけられれば、王族の序列を争う系譜の一人。
 騎士として胸に手を当てうやうやしく頭を垂れて世辞の一つも投げ返す。

 顔は覚えている。線は細いが、別のものが色々と太い。
 面白い若君だと思う。が、気になっているからこそ不可解な点も感じる人物。

「その良い文官が、領主たる妹ですもの。
 姉として妹の成果を自慢したくもありますし、私の仕事を逆に奪ってしまうほどですもの。
 ミナスジェイラスの家の者として使い走りの一つも嗜みたくもありますわ。」

 代々長女が家督を継ぐ家にあって、妹へその地位を譲った女騎士。
 それは甘さや身内びいきではない、純粋に”伝統を覆す必要があるほどに勝っている”と認めているが故。

 そう言う意味では、勇猛な女傑が仕事を譲っている妹、現領主は
 芯こそ通っているが野心を持つに及ばぬ穏やかな者。
 望んで国を良くするよりは、現状を維持し、領地を豊かにするということに専念するという意味では
 現状打破には敵にも味方にもならぬといった具合。

「あら。頼もしくも嬉しい申し出ありがたく思いますわ。
 ホーレルヴァッハ様のような方が王位を目指されておられる以上、
 この国も”安泰”ですわね。

 けれど、大丈夫ですわ。
 我がミナスジェイラスはいずれ王なき玉座に就く傑物に仕える家柄。

 その席が埋まるまで、我等はこの国の為に身を捧げる所存。」

 ゆったりと、穏やかな微笑みを浮かべて返答を返し。

「何より”王族に多少支援をいただいた程度でくつろぐ家”など
 王族の方々のお眼鏡には叶いませんでしょう?」

 満面の笑みを浮かべる。
 己が仕えるは王のみ。王族に非ずと。
 事実、腐敗したこの国の貴族は退廃に至る中で一つの分水嶺……、
 王族の後見、支持を謳いながら放蕩に耽る者も多い。

 腐れに呑まれる程度の家柄。王族に気にかけていただくことがあろうかと。
 それは国情を保つのが是ではなく、王の意志が是であると。

 古くよりこの伏魔殿で代を重ねてきた古参の姿勢。
 王が望むならこの国を一度叩き潰し作り直すこともやぶさかではない姿勢。

 腐れ果てた家々の中で、数える程ではあるが、確かに存在する狂気めいた忠誠。
 高貴なる者の務め(ノブレス・オブ・リージュ)は王に仕える者の責務であって
 王族に媚びを売るためのものではないと、逆に見定めるように。

ギュンター・ホーレルヴァッハ >  
「ミナスジェイラス家の御息女の噂はかねがね。王国の発展と栄華は貴女達の様に優秀な人材あってこそですから」

社交辞令の応酬。何処までが本気で、何処までが世辞か。
まあ、それはお互い様かと内心で小さく嘆息。宮中で仮面を外して語り合う事の出来る相手は、決して多くは無い。

「どうでしょう。所詮私は未だ若輩の身。此の国を真に安寧と安泰の揺り籠に付かせるには、経験不足である事は否定致しませぬ。
そして私がそれらを得る迄、玉座に座する者が不在である事は王国にとっての損害でもある。

寧ろ、本来であれば私が王位を目指す今の環境が、不健全であると言えるでしょうな」

此れはまあ、半分本音だ。
空位の玉座を巡って王族、大貴族、大商人に教会までもが宮中で毒を吐き合う此の環境が、国政にとって良いものである筈が無い。
されど、そうなってしまったからにはそれを受け入れるしかない。
一族の繁栄と、王国の再興の為に王位を目指さねばならない。
……と、憂う様に演じる。吐き出す溜息は重く、下がる視線は国を思うかの様に。
実際には、とっとと滅んでしまえと嘲笑っているのだが。

「ふむ……だからこそ、支援の手を伸ばすのでしょう」

そんなやり取りの後。満面の笑みを浮かべて”王族に多少支援をいただいた程度でくつろぐ家”は不要だと告げた彼女に、視線を向け直す。

「各地を治める領主が、自領の問題を全て自分で解決するのならば、王など必要無い。緩やかな連邦を維持し、玉座など排してしまえば良い。しかし、此の国は最早その様な旧態依然とした体制には戻れない」

こつり、と一歩彼女に歩み寄る。
他意はない。唯単に、話し易い距離を必要としたまでの事。優秀な人材に中央に居て貰うのは困るが、それはそれとして国政について語り合う事は…別に、嫌いな訳では無いのだ。

「時に、受け取って貰わねば困るものもあると言う事です。互いの家の結び付きの為に。王国という器を維持する為に。そして何より……」

僅かに、首を傾ければ。きらきらと輝く宝石に彩られた耳飾りが、しゃらんと音を立てる。

「王と貴族が友好関係である、と言う事。そして王家の支援が受けられる立場だと言う事。自分達の領主が、王から支援を賜る事の出来る存在である、と言う事。それらが民に齎す安堵の想いは、どの様な金銭にも代えられますまい。

だからこそ、真に王への忠義を思うのなら。王や王族からの施しは時に受け入れて欲しいものです。我等は我等だけで尊き立場にある訳では無い。その立場を認め、敬う民衆あってこその…」


小さく、肩を竦めて。

「この、贅を極めた王城なのですからね」

モルガナ > 「それもこれも、ミナスジェイラスの祖を爵位に取り立てていただいた
 ナルラート王のご慧眼あってこそですわ。
 地位ある者、高潔なる者とは如何な者か、それを常日頃より念頭に置き研鑽を重ねた結果、
 我が妹はホーレルヴァッハ様の耳にも届くほどには成りえたと言えましょうね」

 貴族然とした、余裕に満ちた微笑み。社交辞令。世辞。
 それはこの城内にあっては真の所見とはなりえない。

 見据えている一方で、己より先に妹を賞賛したことは加点に値する。

「経験、ですか。ですが、その経験が理由となりうるのはこの国が平和である何よりの証左でもありましょう。
 有事にあってはそれが動かぬ理由ともなりません。

 だからこそ、この平和な世にこそ芽吹き育つ才能の花もあるかと。
 そうでなくては文官は目減りする数字に日々胃を軋ませる毎日になるだけですもの。
 御身の若さを憂うより、時には平穏を嗜む余裕も王族の方には必要でしょう。

 それに……、私としては、この城内に足を踏み入れた程度で奢り高ぶっている、泳がせている魔族共が
 何の成果を見せていない何よりの証と心を休めることにもなりましょうが。」

 人のふりをして、魔力を消して、姿を変えた程度で紛れ込んだとタカをくくっている魔族達。
 あの高度な魔術を織るにも関わらず癖には繊細さが感じられない外様共。
 淫紋を刻んでも人には解けぬとタカをくくっている馬鹿共。
 解けぬとも誰が刻んだか分かる。解けぬなら術者を見つけ出して嬲り殺せばよい。
 ……そうした者の一人が泣いて命乞いをしながら、目の前の男と繋がりを持っていることを口にしたので即処断して、
 それを聞いた者達も全員処分したのをふと思い出し。

 だからこそ、不可解。
 そこまで立ち回れるのに、動きが少なすぎる。彼の真意が分からない。
 今のこの国で王座を得るには、さて背中を押しても良い人物の一人だと思っていたが、
 何かが、違う。

 よもや本当に一度国を潰すこともやぶさかではないとも思いもせずに。

「いえ。王は必要ですわ。」

 ふと、地位が上の王族へそう告げる。一歩踏み出す目の前の少年の瞳を見据える。

「連邦制も優秀な家のみに集約した統治を分担し、それ等が掲げるのではなく
 傅くに相応しい。一様に是と謳うに値すると信じて疑わぬほどの王。

 各家の特性が、性質がどのようなものでもかまいません。ただ優秀であれば良い。
 ただお互いが競い合い磨き合えばいい。等しく各家は敵であり味方。
 それ等が利害を排して仕えるに値する、という王であれば。
 それは国王制も連邦制も越えた、昇華した一形態ともなりましょうか。

 まあこのような見解は例えの一つ、怠惰を貪る家が多いこの国への逆張りに過ぎないのかもしれませんが。」

 膿は絞り出す。正常な者だけ残す。それを選ぶのは王。優秀な王。
 かつてナルラート王がそう示したのだと。
 未だ答えが見えぬなら、一度突き詰めて旧態依然のその先からやり直すのもいいだろうと。

 皮肉めいていて、生半可な王さえ不要であるという行き過ぎた忠心が鎌首をもたげる。

「その言葉は正しく、そして的を得ていますわホーレルヴァッハ様。」

 貴族が王族を掲げると言う腐敗の兆し。その逆。
 王がこの家は理想であると、手本であると、誇りであると謡う。

 王より絶大な信頼を得て、安寧に満ちる領土。
 我等は良き主に仕えているのだと人生を謳歌できるだろう。

「ですが、我等ミナスジェイラスが毎年『鉱山』より納めている宝石の数々は

 王への供物なのですよ。ホーレルヴァッハ様?」

 名を呼ばぬ。家名で呼ぶ。王族を。
 王への忠義は示している。だがそれは王族へ向けたものではない。

 王への忠義は見返りを求めてのことではない。
 元よりミナスジェイラスは領土を挙げて王に尽くす。

 故にミレー族も【備品として日々領土に尽くす喜びを抱き奉仕している】土地。

「それとも、貴方は女性と話すのに社交辞令や金勘定で楽しませられる手合でして?」

 そう言いながら、手近な部屋の扉を開けながら、王族を挑発する。
 微笑みはとうに消えていた。

 不適に笑っている。愉快だと。面白いと。
 まだ仮面をかぶりながら言葉の端々から聞こえて来る見解は聞くに値すると。
 少なくとも会話で女を喜ばせられる男だとみていると。

 それで乗るかは貴方次第。

ギュンター・ホーレルヴァッハ >  
「平穏は、時に国家を蝕む。故に闘争は必要なのです。我等の国の外で…という注釈は付きますがね。

緊張関係程度で収まる隣国の存在が望ましい。魔族なら益々大歓迎。奴等は明確に我等人族の敵と成り得る。
……とはいえ、闘争も戦争も適度なものでなければならない。少なくとも、我々で操る事が出来る程でなければならない。そも、我等マグメールは……『まれびとの国』は、土地の豊かさと多くの者、種族が訪れる交易の土地として発展してきたのですから」

彼女の言葉や問いかけには、律儀なまでに答えるのだろう。
それは、彼女の才覚や才能に対して、彼女の意志や知見を知る事に対する喜々の感情が勝るからだ。
例え王国の滅亡と、新たな"帝国"を夢見ていたとて…いや、だからこそ。優秀な女性故に、宮中には居て欲しくないと願うからこそ。
その彼女との会話を楽しんでいるのは、事実なのだ。

「魔族、大いに結構。彼等が我等が王城に土足で踏み入るのなら、憲兵達の練習台にでもなって貰えば宜しい。
諜報を主とする者達の餌となり、時には厳しい教官となって貰えば宜しい。
とはいえ、現状ではそれが高望みである事は否定はしませんが」

僅かな苦笑い。見目麗しい魔族に篭絡された同族は、決して少なくは無い。
自分の欲望の為に国を、民を売る。それは許せぬ事ではあるが、人の欲望として理解はしなければならない。
故に、責めるが攻めない。所詮、自分も同じ穴の狢だからだ。

「……そう、王は必要です。民を導く王が。国を守る王が。外敵を滅ぼす王が。

名君は名を歴史に刻む。しかし、どの様な名君も何時かは死ぬ。故に、王という機構を維持しなければならない。王になる、と言う事は神に選ばれる事では無く、自身の名を高める手段でも無く。
王という存在に、自らを置き換える。その様なモノであるべきでしょう」

此方の瞳を見据える女性に、訥々と紡ぐ言葉は…とどのつまりは、王とはシステムであるべきだ、という論であった。
国に尽くし、民に尽くし、国家の繁栄の為の存在と化す。必要なものは個人への忠誠ではなく、王という記号への忠義。

「そういう意味では、貴女の…いえミナスジェイラス家の立場は実に鮮明で好ましい。王が誰であるかは関係無く、王に忠義を尽くすその立場は、王に強い責任感と、貴女達に王と認められるべきだ、という自制と克己心を抱かせる。
故に、好ましい。好ましいが故に……」

扉を開いた彼女に、歩み寄る。
彼女の方が背が高い。純粋な筋力や武芸での勝負なら、きっと足元にも及ばないだろう。魔法を使うなら兎も角、それは話が違う。
ヒト、という種族としての純粋な能力において、少年は彼女に勝る部分は無い。
にも拘わらず…挑発するかの様に扉を開いたその行為に返すのは、捕食者の様な、獰猛な笑み。

「好ましいが故に、欲しい。気高く強い花は、手折るその瞬間こそが最大の愉悦なのだから。
王への忠誠を誓うその唇を。我が家名を呼び続けるその喉を」

そっと、手を伸ばす。貴女の頬に触れようと。

「それを全て我が物にしてしまいたい、と思うのは。
社交も財貨も関係無く、純粋に男としての私の欲望だよ」

その伸ばされた手を受け入れるも払い除けるのも、貴女の自由だ。

モルガナ > 「私の見解はいささか違いますわね。
 魔族は、国ではありません。只の害獣。ただの脅威。
 敵、というには、敵の方に、そうですわね。緊張感も滅ぼそうと言う気概もない。
 なにせ魔王、仮にも王の名を冠する存在達が王の自覚もなく放蕩に明け暮れているだけ。
 人の姿をして、人と対話して、人と価値観が違う事にも気づいていない。
 私達は人間に歩み寄って”あげている”などと増上慢も甚だしい人獣共。

 私としては、シェンヤンがもう少し矛先をこちらに向けて下されば、と思うのですけれどね。」

 平穏とは別の浸蝕なのだと。人が人として営みを続けるには、あれは病気の類なのだと。
 使い道はあれど対等ではない。戦争ではなく討伐。首級を上げるのではなく駆除であると。
 在り方からして人類との敵対者である以上、緊張感と評するには生ぬるいと。

「何せ駆除する以上に流れ込む数が多いですからね。
 やはり、顔なのでしょうねえ。なまじ人に似ている者だから躊躇する者もいる。

 ……ひとでなしを駆除するには、ひとでなしが必要かとも思います。
 が、民を不安がらせるのも本意ではありませんからね。」

 その気になれば魔族を狩って回るように動けばよいが、それは”品がない”
 力を、権力を振りかざして、民の意図を汲まぬも愚策であろうと。
 この欲望の国で欲望に従って何が悪いと言うある種の不文律も、国を成り立たせている一つ。

「ええ。王とは在り方です。地位や血筋ではありません。
 機構、崇められることで機能するなら、王は神の片鱗を宿すものかもしれません。
 それも答えの一つであるからこそ、王は時に神の代弁を口にすることもありましょう。

 ですが、代々の王は王座に就くことが目的である者が多かった。
 故に破綻する。故にここまで腐敗する。……そうは思いません?」

 面白いと思う。この”男”は王であることの意味を理解している一人だ。
 惰弱な勢力争いの末に座にしがみつく”玉なし”とは少なくとも違う。
 それがのちに魔族に骨抜きにされるかは別として、現時点では面白いと思う。

「王とて人。ましてや数々の肥えた貴族が互いの神輿を押し退け合った末に座らせた王など、
 それは王冠をかぶせた木偶と言うものでありましょう?

 もし機会があればダンタリオの方ともお話をされてみては?
 あの家こそ狂人こそ真理に至ると言う典型。
 王以外の気高きを騙る者を須らく引き裂き血に沈める凶行なれど
 行いは間違いなく王への忠義一つを研ぎ澄ませた”凶刃”ですわよ。」

 二通りの王への忠義。それ故にこの魔窟で君臨する二つの家。
 共に女傑が傅く王を求めているのだと。
 王たらんとするならば、その首を切っ先に晒して見せよと。

 いつの間にか、謙遜を捨てた言葉を語る貴方へ愉快そうに微笑んで。

「やっとそれらしい顔を見せましたわね? ギュンター様?」

 名を呼ぶ。己の意志と、表情を見せる者に。
 何より、魔族と渡り合うなら相応に何かしらの術を扱えるだろうに、
 そう言った素振りを、隙を伺う様子さえない。

「欲して口説くならきちんと女の名前ぐらいお呼びくださいな。
 それとも、妹が優秀で輝くあまり姉の名前など忘我に消えておりまして?」

 皮肉ではなく願望。それは妹の才能に嫉妬するのではなく、誉れであると才能ある者を純粋に評価する者の誘い。
 手折る。その言葉が成し得るか否か、楽しみで仕方ないと、伸ばされた手に触れて、
 開いた扉に招き入れて。

「それで、手折るのは舌戦で? それとも、褥の中がよろしいかしら?」

ギュンター・ホーレルヴァッハ >  
「王の在り方、或いは王に求められる物がヒトと魔族では決定的に異なるのでしょう。我々は王たる者に絶対的な強さは求めませんし、肉体、魔術に優れている事を絶対の条件として求めない。

しかして魔族は別。奴等は一つの巨大な個が、弱き群れを纏め上げる。ヒトを超える躰。ヒトを超える魔術。ヒトを超える寿命。単体でヒトに勝るからこそ、連中はヒトを侮り、驕り、蔑む。

それは認めなければならない事実で、我々は個で魔族に勝てる種族では無い事は理解するべきでしょう。だからこそ、我等は手を取り合い『国』を作るのですから」

一見、当然の事を並べているだけだが…彼女の言葉に対する返答となると、その意味合いは変わる。
種族が違う。生命としての質が違う。思考が、理性が、価値観が違う────『だけ』なのだと。
即ち、過度に蔑む必要も無ければ、過剰に恐れる必要も無い。魔族には驕るに相応しい資格があり、人間にはその驕りを打倒する手段がある。
ならば、国家の危機として捉えた時、数多のものと相違は無いのだ、と。

「何故、人に似ていると躊躇するのか。人と異なる種族でありながら、人と近しい感情を有する別の種族に、憐憫を覚えるのか。
それは偏に、我等の…いや、民の意識の問題でしょう。人間同士で戦争していながら、その様な情けを覚えるのは…ひいては、王国の民としての自尊心を失っているからだ。

ならば示せば良い。マグメールの民こそが、他を支配する資格があるのだと。導けば良い。マグメールこそが、世界に覇を唱えるのだと。指し示せば良い。他国の王よりも、マグメールの平民である方が誇り高いのだと。
多種多様な者達の集合体では無く、我々こそが『マグメールの民』だと……いや、失礼。少しばかり熱が入りましたな」

それは片鱗。
群れを纏め上げる為の手段として『国』と『民族』を唱えるべきというのは少年の思想だ。
それは行き過ぎれば他種族の排斥にも繋がる。人族の国。人間の帝国。一つの民族が多数の民族を支配する"皇帝"。

…その片鱗を晒すには、まだ早いか、と。少年は其処で口を閉じて。

「ダンタリオ家の…ふむ。武に携わる同胞としては、確かにかの一族以上に王に忠誠を尽くす者達は少ないでしょう。
しかして、貴女からかの家の名を聞くのは……ふふ、少し愉快ですね。

王たる資格と素質を、愚鈍な王侯貴族よりも貴女達は有している。けれど最優の女傑たる貴女達は、共に傅く王を求め、頂くべき王冠を求め、玉座の主を欲している。

貴女達の忠誠と忠義を真に受け取る事の出来る者は、確かに傑物たる王になる事でしょう。それだけは、私も保証致しますとも」

マグメールは女王を否定する国では無い。オグドアスの剣を戴くのが女性であっても何の問題も無い。
だからこそ、それでも尚、王への狂信を深める彼女達の一族は…王国に取って必要なものなのだろう。
惜しむらくは、彼女達の忠義が尽くされるのと、王国の荒廃と、どちらが早いかという状況まで陥ってしまっている事だが。

…そんな政の話も、男と女。欲望を互いに紡ぎ合う者達の話になれば、只管に無粋なだけだ。
自らの名を呼ぶ彼女に、ゆるり、と唇だけを歪める様に嗤ってみせれば。

「欲するからこそ、呼ばぬのさ。こう見えても情緒を好む部類でな。面倒なしがらみや、宮中の些事に囚われぬ時こそ、敢えて呼ばぬ……いや、其方の名を呼ぶ時は、私が決める。
私の口から名を呼ばれる事を欲する。其れもまた、味わい深いものさ。だからこそ、私は別に其方が私を何と呼ぼうと構わない。

呼ばせてみせれば、良いのだからな」

彼女の妹の話が出たからこそ、敢えて彼女に返す言葉には一切その存在を口にしなかった。
それは、今この瞬間は彼女しか見ていない、という証。他の女の話など無粋で、比べる等と思考の片隅にも在りはしない、という"口説き文句"

「舌戦で手折るのは好かぬし、そもそも意見のやり取りには勝敗など付けるべきではない。
故に、答えは一つ。誉れ高いブルズガングの主たる其方が、褥の中でどの様な"武勇"を誇るのか…」

触れ合った掌を、掴む様に握り締める。
決して強い力では無い。されど、それは明確に雄として雌を欲する、肉欲の誘いかの様な。

「……今からとても、楽しみだよ」

モルガナ > 「若い、ですわね。」

 ぽつりと呟く。魔族への見解に。
 国民の自尊心への見解に。
 そしてこの国が世に知らしめる、世界を見据えている。

 そう、この国の貴族に、王族に欠けているもの。
 玉座の争奪戦。熟した果実の奪い合い。

 その先を未だ誰も見据えていない。
 なるほど、魔族と通じているわけだ。この思想に優れた血筋が合わされば渡り合える。

「でも少なくとも下を見ていない、惰弱な者に絞り尽くされて己を喪うことのない若さですわね。」

 国とは本来そう言うものだ。優たれと謳う。確かに優しさを説く、憐憫を抱く情は必要だろう。
 だが、それを許すにはまだこの世界は血生臭い。
 だからこの国では優しいものから慰み者になっていく。

 だから、価値観を、方向性を、人と言う存在を一つどころにまとめあげる時代の流れは必ず必要となる。
 理想論であろう。だが、少なくとも片鱗は見せた。

 この少年が王となった時は、不貞を経ても孕んでも良いと思える程度には。

「あの家は狂人と呼ばれているだけで、狂人そのものではありませんわ。
 人として考え、人として判断し、故に人として王に忠義を尽くす。
 ただ刃に馴染みすぎるが故にその忠誠を理解する人間が未だ少数派なだけ。

 メイラとは美味いと思ったお肉を出すお店の見解は一致しますしね。」

 単なる狂人であれば戦場で生肉を貪り喰らう。
 焼いた肉は衛生面はともかくより強い体を作るには不適。
 だがいつぞやたまたま同じ店に訪れたが故に相席となった女傑は
 肉の味にこだわりを持っていた。
 確かに、欲する欲に人の軸が備わっているのだと。

 ともすれば、王に忠義を示す二振りの刃(ダンタリオとミナスジェイラス)
 ともに腐敗に対して惰弱を絞り出す機会とさえ思っている。
 王が座に至るまで、その腐敗を切除し続ける。

「ふふ、仮面を剥がせば随分と豪胆な物言いですわね。
 ですが、一つだけ言うならば、貴方の名は貴方自身が軽んじることは仰いませぬように。

 何と呼ぼうと構わぬと、己の名を軽んじることは。

 貴方が”王族”から”王”となる時、その名は民が耳にするだけで活力を得る金言となるのです。
 親から、恩ある者から賜った名であろうと、貴方自身を示すものであるとなさいますよう。

 己を現す定義一つ軽んじる王に、誰が従うでしょうか。
 だから私は、貴方の名をちゃんと呼びますよ……♡」

 笑みを浮かべる。ブルズガング。己が奮う不屈の剛刃。
 その名に覚えがある者、名を呼ぶ者。ならば己は心に、この身にその名を刻む。

 そして胎にも、この日の出来事を刻んでくれると言うのだから熱がはしたなく巡りもする。

「しかしそうですね。」

 身に着けている重鎧。七つの宝石を宿た鎧の留め具が、指を鳴らせばいくつか外れ、最低限の留め具を外して綿入れ(クロスメイル)姿を晒す。

「お互いその気になったんですもの」

 籠手を外し、具足を外す中、分厚い保護衣越しでも伺えるほどの豊かな胸が、大きな尻が弾んで見せる。

「腹の奥底まで繋がり合う男と女に無粋な言葉は不要ですわね……♡」

 保護衣の合わせ目を緩めて、舌舐め擦りをしながら、両手で大きく広げて見せれば、
 下着を身に着けていないおわん型のたっぷりと弾む乳房を曝け出して。

「扉の鍵を閉めてくださいます? そのほうが滾りますので……♡
 未来の奥方をきちんと孕ませられるか、私の胎に”武勇”をお示しくださいな……♡」

 褥で媚びる雌ではなく、舞台で”鍔迫り合い”に応じるよう求める武人は
 既に股間へ視線を這わせて。

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 【此方の都合により一時中断。後日継続予定です】
ご案内:「王都マグメール 王城2【イベント開催中】」からギュンター・ホーレルヴァッハさんが去りました。
モルガナ > 【後日継続】
ご案内:「王都マグメール 王城2【イベント開催中】」からモルガナさんが去りました。