2023/10/16 のログ
ベルナデッタ > 王城の騎士の間に訪れるのは、騎士だけではない。
彼ら騎士に仕事を依頼する王族や貴族、役人等もよく訪れる。
それ故、ノーシス主教の関係者が歩いているのもそれほど特異な光景ではなかった。
その何やら書類を持った修道女はセリアの方を見ると、つかつかと歩み寄ってくる。

「しばらくぶりですね、セリア団長。息災でしたか?」

その修道女は、騎士団長も良く知る異端審問官であった。
ベルナデッタはセリアの対面に座ると、テーブルに広げられた資料に目を移す。

「…魔族は変わりませんね。こちらは賊の討伐で忙しいというのに」

そう、溜息をついて。

セリア > 王城は多種多様な人々が訪れる。見張り、衛兵こそいるが公共の場のようなものだ。
ノーシス主教の者もまた然り。外部の者の中ではさして警戒されない内の一つかもしれず。

声をかけられ、セリアは書類から顔を上げた。
そこに見える見知った姿に瞬き、微笑んで片手を揺らす。

「久しぶりね、ベルナデッタ。まぁ…良くも悪くも忙しいわ」

対面に座ることは止めず、手にしていた残りの書類をテーブル上に置いて軽く伸びをする。

「まぁ……人手も中々足りなくてね。あちこちでお困りの声は上がってるけど…
魔族と賊、それぞれに人手をめいっぱい割いてるものだからどうにも」

ベルナデッタ > 「どこも人手不足が深刻ですね…優秀な兵士は減る一方で敵は増える一方」

血の旅団の蜂起、魔族の侵攻、ミレー族の反乱奴隷、更にはシェンヤン帝国に対する警戒。
人手がいくらあっても足りないが、最近は質の良い騎士も少ない。
どこもかしこも猫の手も借りたい状況であることは、ベルナデッタも分かっていた。

「……そんな状況でお仕事を更に増やすことになりそうなのは申し訳ないですが…」

しばしの沈黙の後、ベルナデッタは自身が持っていた書類をテーブルに広げる。
そこに載っているのは、とある魔族組織の情報。
読み進めれば、それが活発に活動する危険な秘密結社であることが分かるだろうか。
そして、特徴的な蛇の紋章。

「正式名称は不明ですが、我々は蛇の陰謀団(サーペント・カバル)と呼称しています」

真剣な眼差しで、ベルナデッタはセリアを見る。

セリア > 「最近は冒険者ギルドの方にも応援を要請してるところね」

冒険者の中には、王城の騎士より優秀な腕を持つ者が少なくない。
なので助っ人として協力をお願いしているわけで…これが存外役立つのだ。

最も、結局は騎士・兵士の実力を底上げすることが肝要だと理解してはいるのだが。

「うん……?」

沈黙。のちテーブルに広げられた追加の資料に目を落とす。
──蛇の紋章がまず目に留まった。読み進めていくと同時、仮の呼称がベルナデッタの口からまろび出る。

「……成る程。秘密結社。──秘密である今の内に叩く必要があるわね」

セリアもまたベルナデッタを見る。暫しお互いの意志を確認するように見つめ合って。

「……策はもう、何か練っているの?」

ベルナデッタ > 「冒険者…私も冒険者の知り合いも作っておくべきでしょうか」

傭兵などなら面識のある相手もいるが、冒険者となると中々縁が無い。
一度冒険者ギルドに簡単な依頼でも出してみようか、などと思いつつ。

「そうです…が、まだ全然情報が集まっていない」

出した資料は結構な量であり、セリアの見覚えのあるものも含まれているかもしれない。
それでも構成員や本拠地、戦力等、必要な情報は殆どない。

「ですが構成員の魔族の何人かは大まかな居場所が判明しています。
まずはそれらを潰し、更なる情報を得る」

資料のいくつかが並べられる。異端審問庁が辛うじて尻尾を掴んだ、秘密結社メンバーの情報だ。
どれもこれも強大な魔族であり、並大抵の兵士では相手にならないだろう。

「そこで、貴女と騎士団の力をお借りしたいのです」

セリア > 「まぁ…王都には幾つもギルドがあるし。顔を出してみるのも手かもね」

依頼を出すのも良いが、実際に足を運んで冒険者と交流するのも一つの手だ。
セリアについては、王城に時折足を運んでくる冒険者と繋がりを作ったりしている。

資料の数こそ多いが──肝心な、芯となる情報はあまり見当たらない。
やはり秘密結社というだけあって、そうそう情報は表には出てこないらしい。

「……成る程」

流石は異端審問庁。例え状況が不利だとしても、データを探り当てることに長けている。
追加で並べられた資料の一枚を拾い上げ、目を通していく…

「勿論、力を貸すわ。これまでもそうしてきたからね」

ベルナデッタ > 「ありがとうございます。心強い限りです」

セリアの返事に、ベルナデッタはニコリと微笑む。

「代わりと言っては何ですが、そちらのお仕事にこちらからも人を出しましょう。
新人に経験を積ませるいい機会ですからね」

ベルナデッタはセリアが広げていた資料のいくつかに目を通しながら言う。
人手不足の状況ではさほど強くない討伐対象にも手練れを差し向けなければならない勿体ない状況もあるだろう。
そのいくつかをこちらで請け負えば、要所に主力を集中できるはずだ。

「では早速諸々の具体的な話を…と言いたいところですが」

ベルナデッタは書類をテーブルに置く。
そして、セリアに向けて微笑みかけて。

「どうやらお疲れのようですね?」

明らかな疲労の色には気付いていたらしい。

セリア > 「それは有難い限りね。幸い、今受け持っている討伐対象──この資料に載っている魔族のことだけど──そこまで強い連中じゃないし」

これを持ってくれるのであれば、少なくとも自分たちの多忙は大きく改善されるだろう。
嬉しそうに微笑み、ぜひにと頷いてみせた。

さておき、任務内容の詳細な説明へ──といったところでふと、自身の疲労について言及され瞬くセリア。
バレてたか。と言いたげに肩を竦め、軽く頭を振ってみせた。

「まぁ…最近、王城に詰めっきりで仕事してきたから。やっぱり立場上、疲労は溜まるのよ」

ベルナデッタ > 資料を見れば、確かに訓練を受けた騎士なら問題なく、何なら経験豊富な冒険者でも倒せそうな魔族だ。
こちらの新人にも丁度いい相手だろう。
ベルナデッタは頭の中で誰に担当させるかをしばし考え。

「それはご苦労様でしたね…。騎士が戦うべきは書類ではないでしょうに」

冗談めかしてそう言いながら笑う。
しかし自分より若いとはいえ一つの騎士団を率いる団長だ。
その重責は思いもよらないほどにあるのだろう。

「どうです?本日はここら辺で切り上げてゆっくりと休まれては?」

こちらが持ってきた仕事もあるし、助力もある。
彼女の騎士団の任務には大幅な見直しが必要だろう。

セリア > ともすれば冒険者ギルドに投げてしまうのも一つの手だとは思う。
まぁ彼女らノーシスの者達が対応してくれるなら、それはとても心強い。

「まぁね……文官に任せておけば良いとも思うけど。魔族討伐にあてがわれる文官は中々いなくて…」

今はそれこそ血の旅団であったり、王都外──街道周辺に蔓延る賊であったり。
とかく資料整理・情報収集要員はあちこちの現場で欠かせないものとなっているだろう。

ベルナデッタの助言を受け、セリアは手にしていた資料をテーブルに置いて大きく伸びをした。

「そうね………流石に、少し休まないと。倒れるわけにはいかないから」

等と言いながら立ち上がり、……何やら思いついたのかベルナデッタの方へ歩み寄る。
おもむろに手を伸ばし、彼女の唇や頬をそっと撫でようとしながら。

「…この後、仕事がないなら添い寝してほしい……なんて言ったら怒るかしら」

どう?なんて。冗談めかし問いかけて微笑む。

ベルナデッタ > 「羽振りのいい騎士団は専属の書記官なんかを雇っているそうですよ?」

王国が役人に出す給料はお世辞にもいいとは言えない。
それ故に、金を出せる貴族のもとにより優秀な人材は集まっていく。
どこもかしこも人材不足の昨今、一番確実な解決方法は金にモノを言わせることだ。

「そうですよ?いざという時に戦えないでは騎士団長として示しも…おや」

頬を撫で唇を撫でるセリアの手つき。
ベルナデッタはそれの意味するところに即座に気付いたが…ジトっとした目線を返す。

「……本当に添い寝だけで済みますか?
余計に疲れる事をしようとしていません?」

休憩を勧めているのに余計疲れさせては本末転倒ではないか、と言わんばかりの目線を向け。

セリア > 「専属の書記官ねぇ。…考えたこともなかったわ」

確かに、ある程度規模の大きい騎士団にはそういった類の者がいた気がする。
が、我が旅団は別に懐の余裕があるわけではない。そのうちかな、と自分の中で決意した。

唇を撫でる戯れ自体は避けられなかったが、ジト目を返されておかしそうに肩が揺れる。

「ま、それもそうね。……今日は大人しく休むことにするわ。
また元気いっぱいの時にお相手してくれると嬉しい。……討伐の鍛練も兼ねて、ね」

大人しく、ベルナデッタの言うことに従うことにする。
その代わりといっては何だが──身を屈め、一瞬唇同士を触れ合わせるだけで済まそうと。
言ってしまえば"おやすみのキス"的な感じだろうか。

「それじゃ……ぼちぼち私は私室に戻るわ。ベルナデッタも、途中までどう?」

ベルナデッタ > 笑う騎士団長に、呆れたようにため息をつく。

「そうですよ、明日以降にみっちり話し合わなきゃいけないことが色々あるんですから…。
……えぇ、それは構いませんよ。こちらも討伐の役に立つことをいくつか用意しておりますので」

そして、身を屈めるセリアに何事かと目線を向けていたが、
彼女の唇が自身のそれに軽く触れれば、思わずベルナデッタも苦笑し。

「えぇ、途中までご一緒しますよ。
その後は王都の教会に戻りますので、もし何かあればそこに訪ねてください」

王都の主教の教会の一つには、異端審問官が拠点にしているものがあるのだ。
ベルナデッタも書類を纏め立ち上がると、セリアに連れられ騎士の間から去って行った…。

ご案内:「王都マグメール 王城 騎士の間」からセリアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城 騎士の間」からベルナデッタさんが去りました。