2023/10/08 のログ
ネリ > けれども、大扉は閉じられ礼拝堂には静寂に満ちた侭。
すぐに戻りますので―――と言い残して出て行ったもう一人の修道女が戻って来る気配は無い。

「 ...... 戻られません、ね ...... 」

ぽつりと、誰に聞かせるでも無く零した呟きに僅か混じるのは困惑の色。
王城内に在るこの教会に長く仕える彼女達とは異なり、一人残された修道女は神聖都市からの遣いで一時的に滞在を許されている外部の人間に過ぎない。
その様な人物が長時間教会の留守を預かるという状況は余り好ましいものでは無かったし、もしも王城の誰かが訪ねられた際に勝手の異なるこの教会で正しく応対が出来るかは些か心許無い。

故に、今の修道女の胸の内に去来しているのは心細さとは違う―――どちらかと言えば不安に近いものだった。

ネリ > 刹那、礼拝堂の大扉がゆっくりと開かれる。
自然と修道女の視線は其方へと向いて、幽かに灯された明かりだけが頼りの薄暗い中で来訪者の姿を確かめようと投げ掛けられる。
その姿を確かめた後に、唇から微かに零れ落ちたのは安堵の吐息。

「 ...... お帰りなさいませ ... いいえ、わたくしの方は何事も無く ...... 」

開口一番、戻りが遅くなった事を詫びる件の修道女に対して緩やかにかぶりを振りながら、彼女を迎え入れると共に留守中何事も無かった旨を報告する。
それから先は静寂に包まれていた礼拝堂に、二人の修道女の会話のやり取りが響きながらその夜は更けていった。

ご案内:「王都マグメール 王城/礼拝堂」からネリさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城2【イベント開催中】」にロレンツォさんが現れました。
ロレンツォ > 王都マグメール、その王城の中の一角にある回廊。
大理石の床を叩く靴音を鳴らしながら行き交う王族貴族とその臣下、若しくは巡回中の騎士に混じって、カソック姿の男はその端を静かに歩いていた。
時としてすれ違う彼等に一礼と共に挨拶の言葉を投げ掛けるものの、相手は一瞥をくれるだけで忙しなくその場を過ぎ去って行く。
男の方もその反応に対して特段思う所は無く、頭を上げてから何事も無かったかの如く歩みを再開するのみ。

曲がりなりにもヤルダバオートの司祭と云う肩書を持った男が王城に呼ばれる機会はそう珍しく無い。
今の王城の中にあっても信仰の深い王族貴族は多く、多忙や公に出来ぬ事情によって直接ヤルダバオートや王城内の礼拝堂迄足を運ぶ事が難しい者達の為に、こうして直接出向いてその祈りや懺悔を聞き入れるのも男の役目だ。

とは言え、それと同等の頻度で持ち出される祈りや懺悔とは対極のもの、彼らの欲望や陰謀から起こる願い事を聞き入れるのもまた、男の役目であるのだが―――。

「さて、今回は果たしてどちらの用向きでしょうか………。」

誰の耳にも届かぬ僅かな声量でそのような独白を漏らしながら、男の足は王城内の回廊を進んで行く。

ロレンツォ > やがて、回廊の壁に等間隔に並んだ扉の内の一枚の前で足を止める。
質の良い木製の扉に掛けられた金属製のプレートを確認してから、作った握り拳で軽く叩いてやるとコンコン、と小気味の良いノックの音が響き渡る。
数拍置いた後に応える声を扉越しに聞いてから、「失礼します。」と声を掛けるのと同時にドアノブを捻り、開いた隙間の向こう側へと身体を潜らせて行く。

「―――……お久しぶりです。相変わらずご多忙の身とお見受けしますが、お元気そうで何より。それでは―――。」

閉じられた扉の向こう側、応接セットのソファに腰を降ろした老紳士に男は深く一礼して挨拶の言葉を投げ掛けてから、本日の用向きを尋ねよう―――。

ご案内:「王都マグメール 王城2【イベント開催中】」からロレンツォさんが去りました。