2025/03/22 のログ
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ご案内:「王都マグメール 王城 薔薇廻廊」にアンジェレッテさんが現れました。
アンジェレッテ > 王城の一角――薔薇廻廊と呼ばれる場所。
白皙の大理石により誂えられたその長い歩廊は、中庭に存在する薔薇園を囲むように位置する。
其処を、足早に闊歩する少女の姿があった。
――ヴィティスコワニティ家、アンジェレッテ。

未だ稚さすら想起させる小柄ながら、ミモレットドレスより捌く手脚はすらりと優雅に長く、
佇まい軽やかで、妖精めいた存在感を醸すその娘は
陽だまりにきらきらと輝くバタースコッチ色の金髪を靡かせて。

「今日は御客人がたくさんいらっしゃるから城から出ちゃあいけない、なんて…
 すごく、すごく詰まらないのだわ。」

天真爛漫なる仔猫姫――。
そんな風に称される程に、この少女は御転婆で気儘だった。
外出をするなと言われれば出たくなる。好奇心の申し子のような娘は、
それでも敬愛する母の言葉を破るワケにもいかず、鬱憤を晴らすように、今。廻廊を歩いている。
匂いたつ花馨が鼻腔を擽り、陽光は燦々と注ぐ此処は、訪れると少しだけ気分が好いものだから。

「あーぁ。なにか素晴らしいコトはないかしら?」

ご案内:「王都マグメール 王城 薔薇廻廊」にメレクさんが現れました。
メレク > 王城にて行なわれる新春の宴。
魔族の国との国境の領土を治める辺境伯たる彼までも招聘を受け、
国内の名立たる貴族や名士が集まった宴は、されども、王国の常であるのか、
早々に享楽と退廃の支配する好事家たちの猥らな背徳の場に変じた事だろう。
人々が快楽に耽る宴に早々と見切りを付けて退室を決め込んだのはでっぷりと肥えた中年貴族。
常日頃から、その手の宴を催す側の彼にして見れば、至極退屈に見えても仕方あるまい。

「ふぅ、些か、あの手の催しは食傷気味ですねェ。
 捻りがない事には退屈で、退屈で。……おや?」

ぼやきながら王宮内の廊下を歩き、辿り着いたの薔薇園を囲んだ歩廊。
庭師の手入れが行き届き、見事に咲き誇る色とりどりの薔薇の中に、
妖精の如き少女の姿を見付けると、口を綻ばせ乍ら、歩みを近付けていき。

「こんにちは、レディ。本日は寒さも和らぎ、穏やかな日和ですなァ。
 私めはサマリア辺境伯メレクと申しますが、お名前をお聞きしても宜しいですかな?」

その少女の前で恭しく頭を下げながら、その顔立ちから肢体に視線を這わせていき。

アンジェレッテ > その歩は爪先から頭の天辺迄酷く軽やかで、見えざる妖精の羽でも生えているかの。
仕立てのよい真珠の艶帯びたふぅわりとしたドレスも春風に舞い、
ドレスの白よりなお白い素肌は陽光を浴びて抜けるような白皙を晒す。
薔薇咲き乱れる廻廊に於いては、多少なりと目を惹く光景であったに違いない。

そんな少女は、掛けられた声に、弾む巻き毛を揺らし乍ら振り向いた。
つんと尖った鼻梁、薔薇色のちいさな唇。
なにより、声の掛かった方向――客人であろう巨漢の姿を映し込む
好奇心に満ちたキトンブルーの双眸の燦めきが、印象的な。


「ほんとうに、まるで脱走してしまいたくなる御散歩日和!
 ――…御機嫌よう。サマリア伯メレク卿。」
 
相手の名乗りに、ドレスの裾を摘まんで、軽く膝を折る礼を。
細く華奢な娘のするそれは、まるでバレエの舞踏を思わせ。

「初めまして――…と言いたいところですけれど、
 私、メレク卿を前に晩餐会でお見掛けしたことがございますの。
 アンジェレッテ・カルネテル・ヴィティスコワニティと申します。」

物怖じの欠片もせず、にこりと微笑んで。

メレク > 王宮内の鳥籠で大事に慈しんで育てられた少女。
先程まで己が参加していたような卑猥な宴へのお披露目は恐らくまだなのであろう。
可憐な妖精じみた乙女の容貌に頬肉を綻ばせて頭を下げて名乗りを上げて。

「ふひっ、脱走とは、……まぁ、確かにそうですなァ。
 私めも新春の宴に参加していたのですが、余りに退屈で抜け出してしまいました」

美しさよりも可愛らしさが先に立つ少女は、その大きな双眸が示すように、
好奇心が強い、まるで猫のような性格を覗かせる。
より、年齢を重ねた淑女や熟女であれば、忌み嫌うような外見の彼を前にして、
一向にそのような素振りも見せず、物おじせずに微笑む様子に双眸を細め。

「おや、これは失礼致しました。
 アンジェレッテ様のような愛くるしいレディをお見掛けして名前を聞かぬ無礼をしたとは……。
 しかし、晩餐会、とは、……ふむ、その宴の最中、私めはレディに対する振る舞いを行ないましたかな?」

既知であるという相手の言葉に双眸を瞬かせると小さく苦笑いを滲ませる。
果たして、その晩餐会ではただの食事までで済んで彼女は子供という事で先に退室したのか。
或いは、予想外の事ではあるが、眼の前の少女も既にその手の宴への参加者であるのか探るように問うて。

アンジェレッテ > 「メレク様は、賑やかな場はお嫌いなの?
 
 わたしは今年こそ宴に参加したいと思っていたのですけれど。
 また“まだ早い”って言われてしまったの。だから、――…とぉっても退屈!」

正直、今年こそ参加が許されると思っていたのに許可が下りなかった、
それだってこの跳ねっ返り娘には不服なところ。

囀る小鳥の軽やかさで少女は喋り、薔薇馨とともに鈴音を響かせた。
くるくるとよく動く双眸を、好奇心とともに惜しみなく男へと向けて。
醜悪にすら思えるだろう男の容貌こそ面白いと言いたげに、
不躾な程に――その仔猫青の瞳を巡らせては。

「いいえ。だって、きっとメレク様は御存知ないことですもの。
 私、一度だけ――…ちいさいときに晩餐会に忍び込んだことがあるの。

 でっぷりと、とっても大きな縫いぐるみのような方がいらっしゃって
 抱き着きにいこうとしたら、すぐに捕まって寝室に戻されてしまったのですけれど。
 あれがメレク様だったような気がするって、今思ったの。――… 違うかしら?」

その言葉は、無礼ですらあるだろうのに。
それすら試して窺うように、悪戯な双眸を見上げさせる。
その視線を飾る、無邪気な好奇と傲慢さ。若輩乍らに王族の気風を身に着けた娘である、と。

メレク > 「いいえ、そういう訳でもございません。
 しかしながら、ただただ騒々しいだけなのと、人々の興を惹いた賑やかさは異なりましょう。
 成る程、成る程、お父上か、お母上に止められておりましたか」

愛娘に対する愛情であるのか、或いは、お披露目のタイミングを見計らっているのか。
真っ当な親であれば、彼女を退廃の宴にデビューさせるには未だ早いと判断するのは間違いない。
だが、彼女の年齢くらいの子供にしてみれば、親に駄目だと言われれば逆に好奇心が焚き付けられるものであろう。
ましてや、彼のような醜い容貌の中年に対しても臆面なく近付いてくるような少女であれば。

「あぁ、確かに、昔の晩餐会にて羽根のように軽い妖精に抱き着かれた事がありましたなァ。
 アレがアンジェレッテ様だったとは、……お美しくなられて、不肖、このメレク、気付きませんでしたぞ。

 ふむ、どうですかな、お詫びにと言ってはなんですが、
 晩餐会の後、アンジェレッテ様達を追い出した後に大人達が何をしていたのか、興味はありませんかな?
 宜しければ、このメレクが御指南させて頂きましょう。決して、退屈な時間にはさせませぬぞ」

悪戯めいた少女の言葉に、ただ微笑みを浮かべて、逆に彼女を褒めるような言葉を添えて茶化して返して。
その瞳の内に宿る無邪気な好奇心を煽るような言葉を紡げば、片手を差し出して彼女を庭園から誘い出そうとする。
相手がその誘惑に手を重ねるならば、王宮内に用意された客室の一室にでも連れ込もうと好からぬ計画を企てて――――。

アンジェレッテ > 「そうなの!十五歳になったら、なぁんて言うのよ?
 わたしはもうお母さま達が思うほど子どもではないのだし、
 ちゃあんと“大人”にもなれたのに――…」

お喋りに囀る少女は、少しばかりに憤慨の風を繕って頬を膨らませてみせる。
でも騒々しいだけの宴なら、参加しなくてよかったのかも、なんて
男の言葉に思ったりもするのだが。
そして少女の洩らす呟きの含みに相手は気付くだろうか。聴き及んでいたら、或いは。
ヴィティスコワニティ――呪胎の血族。その子ども達に早期より施される、特異な「教育」。
その宴の本旨が退廃と淫宴にあることを、この仔猫姫が存じている可能性があること。

「ふふ! ちゃんと、メレク様の目にも、淑女(レディ)が映っているかしら?」

相手の言葉に相好綻ばせて少女は微笑み。
そして――仔猫青の双眸、瞬かせるは、詫びと称した誘いに。
頬に手をあてがい少し考えるよな素振りをした後に、
その口元は、にっこりと無邪気な笑みを刻み。

「――いいでしょう。それならメレク卿、わたしに指南なさい。
 そのかわり、退屈なのは嫌い。とびきり愉しくなくちゃあいやよ?」

少女はその爪の先迄麗しい小さな繊手を恭しい男の掌に預け重ねることをした。
悪魔の甘言に、唆されるは無垢な天使か、それとも――。
すべてはこれより陽光届かぬ場所にて知れる事であり……。

ご案内:「王都マグメール 王城 薔薇廻廊」からメレクさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城 薔薇廻廊」からアンジェレッテさんが去りました。