2024/12/12 のログ
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ご案内:「王都マグメール 王城・貴賓室」にバティスタさんが現れました。
バティスタ >  
「王城までの護衛ご苦労様。貴方達も少し羽を休めてくださいな」

恭しく一礼し、武装した一団は一人ずつ、貴賓室を後にする
その装備や容貌は王国の兵士や騎士とは異なり、百合と鎖のシンボルを胸にあしらわれたマントを背にする者達
聖バティスタ派騎士修道会、その聖堂騎士団の面々であった

部屋に一人となった護衛の対象…騎士修道会の長たる聖女バティスタは深い一息を吐けば、
部屋の中央に鎮座するゴシック調の華美なテーブルへとつき、椅子に腰掛ける
テーブルの上のティーカップには紅い、温かなお茶が注がれ、芳しい香りを立ち昇らせていた

「…どうしてこんなに遠いのかしら。王都って」

気だるげにそう零す、聖女らしい雰囲気を脱ぎ去った少女はため息混じりにカップに指をかけ、口へと運ぶのだった

バティスタ >  
王都マグメール…王国で一番人口が集まるまさに都である
その貧民地区での奉仕活動は教会としては欠かせないものとして、少女を長とする騎士修道会も真摯に励んでいる
結果として信徒の獲得や信仰や教義の浸透にも大きく意義のある活動ではるのだが。
少女にとっては教会に所属する以前からも行っていた『弱者の救済』という作業。
それ自体は実に楽しき遊戯であるのだが、如何せん場所に揺られての道中が長いのだ。

「いっそ王都にも大聖堂建てちゃおうかしら」

まるで小屋でも建てようかといったような適当な言葉を吐く聖女様。
実際には大きく広い土地が必要になるし、当然かかるゴルドも果てしないものになる。
王都となればみすぼらしい建物を建造するわけにもいかない。

「…やめやめ。潤沢といったって限りはあるものね」

──もうちょっと使い捨てられる程度の低い金蔓が見つかったら考えましょう。
それまでは、馬車での長旅もある程度許容すべきだ。
それに、問題はそれだけじゃない。

バティスタ >  
聖薬、神の塩粒の流通…そしてそもそもの騎士修道会自体に疑念の目を向けている者がいる。
何処の誰だったか、覚えてはいないけれど。それは確かにいる。

カップをテーブルに置き、ふぅ…と短く浅い呼気を零せば、薄く異色の瞳が細まる…温かなお茶を口にしても聖女の表情はどこか冷たい

神聖都市はノーシス主教のお膝元…。
しかしそこを離れ王都となれば、それを喰い物にしようなんて恐れ多い考えの者もいるらしい。
頭の良い者は迎合し私腹を肥やし、共存が可能だが。
問題は頭の悪い者、そして…己の保身よりも野心を優先する怪物だ。
人が多ければ、そういった面倒な手合も当然増える。

「(今の絶妙なバランスを崩すのも面白そうではあるけれど)」

混沌を求める者は身を滅ぼす。
少女はその長い長い時間の中でそんな愚者を幾人も目にしてきた。

ぎ…とアンティークなチェアの背もたれが鳴る。

「…まぁそこまでしなくとも」

まだまだ、面白い玩具はこの国には数多と転がっていることだろう。

バティスタ >  
今宵、王城を訪れたのは…貧民地区での奉仕のついで…ではあるものの、
寄与や献金といった多額の寄付を教団にしている有力者…主に王族や貴族への根回しの為である。

具体的には"神の塩粒"の違法流通ルートの秘匿の徹底とその確認。
大聖堂での決められた量の配布以外に、裏のルートで買い付けることが可能であり、そちらは法外な価格で流通が為されている。
それは騎士修道会の重要な資金源でもあり、その勢力図の拡大にも欠かせないポイントである。

そんな者達との面会を終え、今は夜会の開催を待つ時間。
信仰を切り売りし、新たな太客という名の隠れ蓑と盾を手に入れるには重要な催し。
今宵は騎士修道会の聖女が訪れるということで多少なり、噂にはなっているようだった。

──聖女様を演じるなんていうのは、最早息をするように簡単なこと。

「ふふ…」

「どんなに醜悪な夜会が開かれることやら──」

椅子から立ち上がり窓辺によれば、灯の灯りはじめた城下の街が見下ろせる…。
腐れた王国の街を見下ろす、窓硝子に映る少女の謀は、その人形のような顔立ちに確かな悪意と狡猾さを宿した笑みを浮かべていた。

ご案内:「王都マグメール 王城・貴賓室」からバティスタさんが去りました。