2024/04/05 のログ
ヴェルム > 「浮いては…いないです、はい」

ちらりと周りを見ると、エリザベートのようなちょっと派手めかつ露出のある服を着ている女性はちらほらと見受けられる。
もちろんその女性たちは娼婦なのだが…だから彼女も浮いていないと言えるのだ。

「まぁ、師団への投資に回しているとでも思っていただければ」

贅沢をする理由はないし、良い暮らしをするために師団長をしているわけではない。
そこを突き詰めてしまうと暗い話になってしまう。
師団のメンバーこそ家族のようなもののため、彼らと同じ目線になってしまうのはご愛敬だ。

それよりも、こんなところまで連れてこられて笑って受け入れる彼女の懐の深さがむしろありがたい。
とはいえ初めてなのは確かなようなので、しっかりエスコートさせていただこう。

「お任せください、ちなみに好き嫌いとかはございますか?」

一応好みは聞いておきながら、食堂のドアを開いて来店。
威勢の良い女将の歓迎の声を聞きながら、席へと案内される。
『お連れのお嬢さんはずいぶん別嬪さんだねぇ』とニヤニヤされたりするのも慣れている様子だ。

店内は広く、食事時もあって中々の人口密度。
人間のみならずミレー族も楽し気に食事や談笑をしている様子が見受けられる。

「今日のおすすめの肉料理と魚料理、あとエールとワインを」

席に着けばメニューを見ることなく、まずは定番の品と飲み物をチョイスする。
他の席の食事を見てみれば、富裕地区や王城で振る舞われる料理とは趣が全く異なる料理の数々。
大皿にでかでかと盛り付けられた骨付き肉や、巨大魚の丸焼きといったワイルドなものを見るのは初めてだろうか。

エリザベート >  
浮いてはいない…その言葉を信じよう。

「ふーむ、師団への投資のう。
 ふふ、どこの師団もやりくりには苦労しとるようじゃ」

実際、第十三師団は少しその理由は違うのかも知れないが。
王国軍の運営について詳細を知る立場でもないため、その言葉で納得をしつう。
促されるままに店内へと…。

「さて、王宮では喰えぬモノなど出されたことがなかった故、大丈夫じゃろ。大人じゃしな~一応な~」

好き嫌いなぞ子供のすることぞ、とふんす。
妙にニヤついた女将の応対に肩を竦めるが、容姿を褒められるのは悪い気はしない。
本日は白馬の王子の饗しじゃわ、などと軽口を返しながら、活気あふれる店内を歩く。

ついた席、質素な椅子に豊満な尻を下ろせば辺りを見回す。
普段王城では見ないような者も多い、なるほどこれが庶民…!

「お、おおう……これはなかなか…迫力があると言うか…」

そして当然というかなんというか、大皿に並ぶワイルドな料理の数々に思わず視線を奪われていた。

ヴェルム > 「ふむ、なんとなくどこの師団か想像つきますね。
今度でも声を掛けてみることにしましょうか」

おんなじ師団長同士であれば、悩みや愚痴などを相談できるかもしれない。
数千人規模の師団の運営はやはり並大抵のことでは務まらないということだ。

「ふふ、それではいくつか追加注文しましょうか。
食べきれなくても部下を呼ぶのでご安心を、どうせその辺で遊んでいるでしょうから」

実際平民地区内では十三師団の軍服を着た兵の姿を、それも人間のみならずミレーや魔族の兵をちらほらと見ることができただろう、というかこの店内にも何人かたむろして食事をしているが、ヴェルムに遠目から軽く挨拶する程度で。
十三師団の気軽さを表しているといえよう。
中にはエリザベートの姿に気づいてエールをブフォッと噴き出している者もいたりしたが。

さて、他のテーブルに目移りしている合間に、頼んだ料理がどどんとテーブルに置かれていく。
ワイルドボアという獣の半身焼き、クロコマスという巨大魚の蒸し焼きの大皿料理にタルジョッキのエール、さらにはグラスジョッキでドンと置かれるワイン。
質より量のような有様だが、富裕地区の上等な料理と比べれば大味かもしれないが、しっかりと考えられた味付けは彼女の舌を唸らせるだろう。

さらに追加注文で出てきたのは、ミートソースたっぷりのグラタンにチーズたっぷりのピザなど彼女の目も舌も愉しませるに十分だったはずだ。
ついでに置かれた注文票の金額もまた、とてもリーズナブルなものだっただろう。

まずはエールの入ったジョッキを手に取り、乾杯の音頭を取り、ゴクゴクとエールを一気飲みするところからがスタートだ。
あとは料理を取り皿にとって食べながら、酒を呷ってまた食べる。
時折他の席の酔い客が話しかけてきたりするのも一興だ。

エリザベート >  
テーブルの上に所狭しと並ぶ料理の数々。
王宮の食事のような贅と趣向を凝らした馳走でこそないが、
これはこれで本能に訴えかけるように食欲を湧かせる。

視線を他の席へ巡らせれば数人、こちらを気にしているようで。
あ、なんか噴き出した。…まぁこの青年の関係者なのだろう。軍服の姿も見られる。

「お、ワインもとは気前の良い♪
 くふふ、ピーズのピザとよく合いそうじゃなあ♡」

見た目にも豪勢というか剛毅なテーブル。
思いの外テンションの上がったエリザベートはワイングラスを小気味よくエールのジョッキと合わせ、乾杯を告げる。

さて、お上品に食べるというのも似合わぬとなんとなしに悟ったものの、
これはこう食すのかと時折訪ねながら、雑談も交えながらの食事も進み──。

………

……



「ふは、もう入らぬぞぉ」

ワインで心地良さげに頬を紅潮させた白魔女は椅子の背もたれを軋ませ満腹宣言。
それほど多くは食べれなかったが故にテーブルにはまだまだ所狭しと料理が並んでいるが…。

ヴェルム > 大皿料理の前にそこまで多く食べることはできなかったが、満足げなのはよくわかる。
富裕層向け料理の繊細さはまるでないが、庶民の腹を満たし美味いと思わせるだけの魅力がこういう料理にはあった。
ワインなどの酒も、たっぷり飲むためのものでテイスティングといったことをするまでもなく。
ともあれ十分に満足し楽しい食事となったことは確かだ。

「なんとなくエリザベート様の好みがわかりましたよ」

やはりワインやチーズといったものが好みらしいのが食事をしながらでもわかった。
もちろん骨付き肉をワイルドにかぶりつく様子も中々に様になっていたが。
残された料理は後は部下たちに平らげてもらうとしよう。

ヴェルムが指笛を鳴らすと店内にいた部隊員のほか、店の外からも何人か集まってくる。

「この場はおごるから好きなだけ食っていけ」

そう伝えれば部下たちは盛り上がり、残った料理の他にも追加で酒や料理を頼んでは育ちざかりの子供のようにそれらを平らげていくこととなる。
料理の処理も決まり、腹も十分満たされ酒も回ってイイ感じに火照っている頃合い。
ヴェルムの方から早速提案がなされる。

「食後の一休みとしましょうか、ここの2階はそういう部屋ですから」

大衆食堂の2階はヤリ部屋…などという露骨なことは言うまでもなく。
普通に休憩としても使えるので、文字通り一休みするか、それとも食後の軽い?運動となるかはこの二人の気分次第だ。

ご案内:「王都マグメール 黄昏の王城」からヴェルムさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 黄昏の王城」からエリザベートさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城 廊下」にアダンさんが現れました。
アダン > マグメール王国の王都に鎮座し、今は空位なれども玉座が存在する王城においても、王国を覆う腐敗の色は濃い。
むしろ、この王都や王城こそが国の乱れの中心地と言っても良いだろう。
王族や貴族という雲上人――本来、民のために用いるべき権威や権力を、己の欲望を満たすために使用する者は少なくない。
フェリサ家という、功臣を排出したこともある名家出身のこのアダンもまた、そんな腐敗に巣食う者の一人であった。

王族であろうが貴族であろうか平民であろうが、自らが気に入ればその欲望を満たすためにあらゆる不正を行うことを辞さない男である。
無論、良くない評判は広がっており、彼の真実を知る者がいれば警戒は当然のことだ。
とはいえ、そのような腐敗貴族が珍しいわけでもない。アダンの所業を知らぬ王族や貴族もいるであろう。
そうであるからこそ、アダンは自らの欲望を満たし続けることができている。
逆に、自らの不正を暴こうとするような者もいないわけではない。政敵も多く存在する。
それらの相手に対しても、自らの欲望を満たすために、そして己が保身のために用いることが出来るのであれば、それらを利用してきた。

時刻は夕暮れ時。
アダンは小太りの体躯をゆっくりと揺らしながら、王城の廊下を歩いていた。
王族や貴族、あるいはそれらに仕える者たちの執務室などが入り混じった階層である。
通りすがる王族や貴族にアダンは挨拶するものの、それら全てに良い反応が返ってくるわけではない。
アダンの所業を知る者や、かつて被害にあった者は目を背け、足早にアダンの横を通り過ぎていく。
気分次第では、それが女性であった場合には今回の獲物として手を伸ばしたかもしれないが、まだアダンは今日の気分に合うような獲物を見つけられてはいなかった。

「ままならぬものだ」

一人そんなことを呟きながら、獲物を求めて廊下の先や通り過ぎる執務室の中を眺めていく。
この男にとって、相手が高貴な身分であろうがなかろうが、それらは相手を彩る衣服のような者に過ぎない。
結局のところ、それが己の欲望に叶うものであれば、遠慮などすることもないのである。
アダンの欲望を叶える手段の一つである魔導具としての指輪が、廊下に入り込む夕日に照らされて光る。

アダン > そして、アダンはそのまま廊下の奥へと消える。
獲物を見つけて欲望を満たすのか、王国を腐敗に染めることに邁進するのか。
それはまだ本人にもわからないことであった。

ご案内:「王都マグメール 王城 廊下」からアダンさんが去りました。