2024/02/05 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にイオラさんが現れました。
■イオラ > 普段は滅多に訪れる事のない王城。
とある王族からの"歓待"を受ける主からは離れ、別室にて待機を命じられていた。
不自然に小さな窓からは僅かに月明かりが差し込み、明かりの乏しい室内の様子を幾らか和らげている。
緩やかな挙動で視線が周囲を滑り、室内の様子を窺う。
王城らしく、豪奢ではないものの一級の調度品に飾られた部屋。
壁へと滑らせれば、ほんの少しだけ違和感のある本棚も目に入る。
「――――一体どこに繋がっているのやら。」
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にユーダスさんが現れました。
■ユーダス > コンコン、と扉を叩くノックの音と、其処から少し遅れて失礼致します――と扉越しに掛けられる男の声。
居室の中の相手の返事を待ってか待たずか、暫しの合間を置いた後にドアノブの回る音が鳴ると、
姿を現わしたのはティーセットの載った銀盆を手にした黒服姿の男が一人。
「―――お待たせしてしまい申し訳御座いません。お茶をお持ちしましたので、宜しければ。」
一目には侍従の執事とも映らなくは無いが、彼等とは一線を画した出で立ちの男はしかし、
居室に佇む女性へと向け恭しく一礼を差し向けた後、手にした銀盆上のティーポットを手に取ると。
ティーカップへと注いだ湯気の立つ茶色の液体――周囲の調度品に負けず劣らず質の良い紅茶をひとつ、
彼女の前に置かれた応接用のテーブルの上へと差し出した。
■イオラ > 待機場と言うには場が整えられ過ぎた一室は、己の主が意図した事か、はたまた。
そんな風に思考を巡らせていれば、扉を叩く音と、入室を問う声がする。
テーブルの傍らで居住まいを正しては、どうぞ、と短く返答をし、現れた相手の姿へと視線を移した。
「ありがとうございます。」
表情を薄めて主に侍る折とは異なり、人好きのする柔らかは微笑を浮かべては、会釈と共に礼の言葉を紡ぐ。
テーブルの上へと注ぎ置かれたティーカップからは淡く湯気が立ち上り、鼻腔を擽る薫香を漂わせている。
相手の様子を一瞥しては、緩やかな動きでカップへと手を伸ばし。
■ユーダス > 女性が通されたその部屋は一見すれば何の変哲も無い、しかし調度品だけは一級品を揃えた応接室のようにも映ろうか。
だが落ち着いて目を凝らせば所々に不自然さの目立つであろう居室。
彼女がその部屋に通された誰かの意図は、男にとっては与り知るところでは無かったが。
「いいえ。大した御持て成しも出来ずに恐縮で御座います。」
柔らかな微笑を浮かべる相手に応じるように、男の方もまた人当たりの良さそうな笑みを浮かべては、
注ぎ終えたティーポットを手にした侭、今一度緩やかな動作で一礼して見せる。
それから女性がカップへと手を伸ばし、其れから少し待つような間を置いてから。
「―――あちらに、何か気になられるものでも御座いましたか?」
何気ない事のように投げ掛ける問い掛け。
その黒色の瞳は先程まで彼女が視線を滑らせていた違和感のある本棚の方を向きながら。
其処に並べられた書物を指してか、或いは其処から放たれる不自然さに対してか、
何方とも取れるような言の葉を、穏やかな微笑を浮かべた侭の表情で投げ掛けた。
■イオラ > 続けられる言葉には、快も不快も含まぬ微笑を浮かべるだけに留めた。
それもそのはず、歓待を受けるのは己の主であって、侍従の身である己ではない。
そう考えれば、今こうして直接の持て成しを受けている事にも、多少の違和感を感じない訳ではない。
とは言え、誰からの――誰を通しての”厚意”なのかも判断が付かぬ今、無為には出来ず、
口許へと寄せたカップへ、ふう、と一息吹きかけてから傾け。
「――――……。」
嚥下に喉が揺れる。
問う声に視線が移ろい、その眼の向かう先を改めて視認する。
己が違和感を覚えたのは、本棚を据える位置だ。
部屋の主の好みだと言えばそれまでだろうが、生憎とここは”侍従の待機場”。
一度違和を感じてしまえば、そこに何かが隠されているのだろうか、と思えるような位置とサイズ感。
「――――いえ。 素敵な調度品だな、と思いまして。」
然し、それを態々言葉にするでもない。
取り繕った笑み面を浮かべ、当たり障りのない台詞を口にして。
■ユーダス > 侍従の為の待機場、その壁際に設けられた本棚。
其処に並ぶ背表紙のタイトルは文学書に歴史書、詩歌集から辞書に至るまで様々で。
其れらが規則正しく整列されていながらも、所々に空白が目立っていた。
―――宛ら、其処に置かれた書物の内容は二の次とでも言うかのように。
「―――そうですか。その様なお言葉を頂けたのであれば、きっと主もお喜びになるかと。」
当たり障りの無い言葉の裏側には気付いてか気付かずか、女性の言葉を受けて男はくすくすと嬉しそうな笑みを零し。
彼女がティーカップを口許へ運ぶのを見届けてから、思い出したかのように銀盆の上から小さな皿をひとつ差し出そうか。
「御口に合えば宜しいのですが。嗚呼、お菓子もご用意しておりますので、宜しければどうぞ。」
小さな皿に乗せられたのは一口大程の焼き菓子が数個。
焼き上げられてから然程時間が経っていないのか、ほんのりとした温かさと香ばしい薫りを放つ其れ。
恐らくは、彼女をこの部屋へと招き入れた人物が用意させたであろう紅茶と焼き菓子、
其処にも入り混じった僅かな違和感――弛緩毒と、同量の媚毒が盛り込まれた焼き菓子の載った皿を、侍従の女性へと勧めんと。
■イオラ > 本棚の中へと収められている書架に意識を向けていれば、違和感は更に強まっていたのだろう。
然し、かけられた問いに思考は途切れ、違和感も意識の片隅へ。
口の中に広がる風味と、鼻を抜けて行く芳香はこれまた一級品なのだろう事を思わせるそれ。
味に瑕疵はなく――今の所、異変もない。
「大変美味しゅうございますよ。私めには勿体ない程です。
――――ありがたく頂戴いたしますね。」
それ故に、油断した。
カップを一度置けば、笑みを湛えたまま差し出される皿の上に乗った焼き菓子へと手を伸ばす。
紅茶とは異なる、甘やかな香ばしさは嗜好としての食欲をそそるに十二分。
迷いのないゆったりとした動きで焼き菓子を口へと迎え入れ――さく、さく、と小さな咀嚼音を立ててから嚥下して。
■ユーダス > 僅かに月明かりが差し込むだけの小窓、その明かりが際立つ程に控えめな室内の照明―――
壁際の本棚のみならず、小さな違和感はその部屋の中の至る所に散りばめられていた。
そうした小さな違和感の中に紛れ込ませるかのように差し出されたティーカップと焼き菓子の皿。
比較的警戒されやすい飲み物の方に異変は無く、品の良い紅茶の風味と香りが女性を愉しませようとするだろう。
「―――其れは良かった。
お待ちになられる間、貴女様を持て成すよう仰せつかっておりますので、何なりとお申し付けくださいませ。」
恭しい態度でそう告げて、焼き菓子の載った皿を次いで勧める。
侍従の者に対しては些か過剰な程の持て成しもまた、違和感のひとつとして散りばめながら、その陰に紛れ込ませるように。
口にした焼き菓子は軽く、舌に乗せれば矢張り品の良い香ばしさと甘さを女性へと伝えるだろう。
しかし一口、二口と飲み込んでゆく度に侵食を始めようとする異物の存在。
其れが相手にどの程度の効果を現わすか、或いは何の効果も齎さないかは定かでは無いが、
少しずつ手足の自由を奪い去り、その代わりに官能的な甘い疼きを与えようとしていた―――
■イオラ > また一つ増えた違和感を、穏やかな笑みを浮かべる事で覆い隠す。
一介の侍従には過ぎた持て成し。
それの意図する所が読み切れず、懸念と怪訝とで思考に――警戒心に、己自身でも気付かぬ内に緩みが生じていく。
普段であれば、毒見と礼儀程度で控えるだろう飲食を続けてしまったのがその証拠なのだろう。
紅茶を飲んで口の中を整え、二つ目の焼き菓子へと手を伸ばす。
齧り、食んで、飲み込んで。
「―――――、」
程なく現れ始めるその効果に、ゆら、と上肢が僅かに揺れる。
眩暈と言うには明瞭なままの意識。
――それと、内とも外とも分からぬ箇所から覚える、じりとした冴えた疼き。
覚えのある感覚に、何ぞ盛られた、と気付くのは早い。
相手に悟られぬようにと顔色は変えぬ儘、先ずは取り込んでしまった物の解析を試みようと。
■ユーダス > 穏やかな笑みを浮かべる女性の仕草に、男もまた緩やかに微笑を返す。
初めの内は怪訝さと警戒の垣間見えた相手の反応が少しずつ緩み始めているのを証明するかのように、
ティーカップの中身を口へと運び二つ目の焼き菓子へと手を伸ばす彼女の様子に男は嬉しそうに笑みながら、
「お気に召して頂けたようで何よりです。
次の御持て成しをご用意させて頂く前に―――少し、場所を移しましょうか。」
ゆらりと、上肢を僅かに揺らがせる相手の様を見て取れば、緩やかな足取りで男が向かったのは件の本棚の傍。
其処に整然と並べられた本の一冊を手に何やら探るような動きを見せれば、
如何なる仕組みか横へとスライドするように移動を始める本棚の後ろから姿を現わしたのは地下へと伸びる石造りの階段。
その傍らで盛られた異物の解析を試みる女性。
焼き菓子に混ぜ込まれた其れが毒の類である事は最早疑いようは無いだろう。
植物から調合されたものでは無く虫や動物が持つ類の、しかし一般的なものよりは幾段か強力な媚毒と弛緩毒。
やがて男が壁際の本棚から振り返ると、変わらず緩やかな足取りで女性の方へと歩み寄り。
それでは参りましょうか――と事も無げに語り掛けると、彼女の身体を横抱きに抱え上げようと試みる。
弛緩毒の効きが緩ければ抵抗は十分に可能だが、果たして。