2025/05/31 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2 bar」にレディ・レッドさんが現れました。
レディ・レッド >  
 富裕地区の高級酒場の一角
 barは静かな時間が流れていて、平民地区の喧騒とは違い品がある客が並ぶ。
 逆に騒がしく楽しみたい者は、女が持て成してくれる娼館紛いな場所やそういった空気を楽しむのだろう。

 静かな時間を楽しむ貴婦人は、barのソファ・テーブルでゆったりとくつろいでいた。
 銀色の髪 尖った耳 白い肌 赤い瞳
 人間とは違った姿でも堂々とそこにいるのは、王族が多種多様に抱えているように貴婦人もまた
 誰かの腕の中に納まっているという立場なのか。

 テーブルにはガラスが宝石のような透明度を維持できない代わりに複雑にカットされた模様のグラス
 箱型の中身は度数が高そうな蒸留酒が琥珀色を浮かべている。
 その色は上からのぞき込む飲むものだけが知れていて、楽しめればいいというかのよう。

 唇は、先端をシガーカッターでバチンと切り落としたピラミデ型の、口先が細まる筒型の葉巻。
 燐寸で綺麗に焦がした先端は吸うときだけ赤い色を濃く浮かび上がらせ、その上下に生えた鬼歯
 その歯と前歯の付け根の角に位置を収めて綺麗に嚙み支えられ、指先を添えて抜けば口内で転がした煙
 それがゆっくりと静かに吐かれていく。


   「―――フゥゥゥゥゥ…、…。」


 芳醇で、舌を焼くような甘い痺れ
 肺に入れなくても満足させる葉の味が染みていく。
 もう一口、ゆっくりと吸い、転がして紙巻のように細く吐き出すのではなく
 甘く漂わせるように口から吐かれた後で、痺れた舌を甘く感じるほどの琥珀酒が洗い流す。
 そんな喫煙者の時間を過ごしていた。

レディ・レッド >  
 葉巻を一本消費し、酒で洗い流すような作業的な時間。
 読み物をするわけではなく、談笑もない。
 月明りの夜を歩くような気持ちで有意義な暇の潰し方を終えれば
 グラスで空けた回数は三度。
 しかし冷えた肌は火照りを生まず、体の内側だけが熱い酒を流し込んだ後の巡りを楽しんでいる。

 一人の時間も楽しんだせいか、ふと自身の片割れが恋しくなったのか
 名残惜しむこともなくその場を会計を済ませて馬車に乗り込んでしまうのであれば、夜道を通る馬車の中
 新しい葉巻をまた咥えながら、静かに火で焦がしつつ、せっかちなように吸い込んだそれで燃焼速度を上げる先端
 フゥッと籠る煙 窓辺の空けたそこから逃げていく煙を目で追いながら、雨もなくなって散歩しやすい
 そんな月明かりの夜を見上げたのだった。
 

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2 bar」からレディ・レッドさんが去りました。