2025/05/06 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」に篝さんが現れました。
■篝 > 先日の暗殺失敗の責を問われ、仕置きに重ね、従順に主人の言いつけを守り貧民地区に潜んだのが夜更けのこと。
貴族に見つかり裸に剥かれ、何とか隙をついて逃げ出し泣きながら夜明けを迎えたのが数時間前。
そうして、現在は昼を過ぎて夕方へと差し掛かり太陽が傾き出した頃だった。
富裕地区にある屋敷に戻り、どうにかこうにか主人の許しを得られ。
仮眠もそこそこに、次の依頼へと追い出され――否、送り出された篝は、情報収集のため貴族の屋敷を順に巡っていた。
連日の失態を帳消しにするような働きをしなければ、今夜は食事が、明日には寝床が無くなってしまう。
「ん。……次は、青い屋根の屋敷」
逆さになって庭園にかかる石橋の影に潜みつつ、覚書を失くさぬよう懐にしまって、メイド達が屋敷へ帰るの待ってから、欄干に手をかけよじ登る。
次の目的地は二つ隣の侯爵家。最近、三人目の娘が生まれたと言う噂を聞いている。
小柄は人目につかぬよう、十分用心をして屋敷を抜け出し、高い塀を身軽に跳び越え細い裏道へと飛び降りる。
■篝 > 『貴族の政治は“真心”と“下心”で出来ている』とは、主人の談である。
祝いごとも、企ても、何をするにも正確な情報は必須であり、武力以上に権力を重視する小柄の主――ヴァリエール家では情報に多くの資金を投資していた。
力があるに越したことは無いが、兵士を100人雇い入れ物理的に守るよりも、100の貴族家に手駒を送りこみ情報を得る方がよほど優位に物事を運べるのだと言う。
小柄はその駒の中でも、主の傍に仕えることを許された従順な者の一人だった。
屋敷に部屋を与えられるアサシンなどそうはいないのだが、小柄の場合は単純に居場所が他にないためである。
他の密偵には家族や恋人などの枷を付けて従わせているのに対し、奴隷上がりの小柄には何もないが故、与えることでつなぎ止め縛り付けているのだ。
美味い餌と柔らかな寝床さえ与えておけば、従順にかつ熱心に働く都合の良い猫であった。
そういった事実に考え至ることもなく、小柄はその小さな体と、父から受け継いだアサシンの術を駆使して今日も情報を集めて回る――。
本日忍び込む4番目の邸宅はスペンサー侯爵家。
歴史はまだ浅いが功績を上げ続けている、現在注目の成長株である。
当主は弓術が得意で、戦争では大将首を数百メートル離れた馬の上から討ち取ったなんて伝説のような本当の話。
跡継ぎは男が一人と双子の姉妹がいるが、最近ここに生まれたばかりの末娘が加わった。
家中がお祝いムード一色に染まっていて生誕パーティーが近々開かれる……と言うのが、これまでの調べで分かったことだ。
さて、浮かれ切った侯爵家の現在はどうなっているだろうか。
ひょいと塀を跳び降り、足音も立てず春風と共に路地を駆けて行く。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」から篝さんが去りました。