2025/03/01 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にTDさんが現れました。
■TD > 「…さあ、問いかけをしよう。君はその問いかけの正体が一体何であるか。当ててみて欲しい」
場所は富裕地区の一角であると想像して欲しい。人通りは殆ど無いに等しく、人気らしきものは無い。そこで空き家となっている居宅と居宅に挟まれた細い路地裏より声をかけるものが居た。占い師が使うような簡素な椅子と机の1セットで張り込み、ほんの時折に道行く者達を招いている。
勿論多くはそんな怪しいものに目も暮れず遠巻きに無視をして逃げ出すか、悪ければ何等かの攻撃を仕掛けて来る者も居なくはない。よって関心を抱いて距離を狭めて来る者が居るのはかなり幸いな事だと言えるだろう。
「此処に一人の人間が居る。その人間には恐ろしい力が備わっていた。異国の欲望に溺れた王などは接触するだけで万物を黄金に変える事が出来たと言われているが、この人間に関しては触れた相手を忌まわしくも怪物にへと変貌せしめる事が出来るのだ。君はこれが何だと思うかな?私は君の一つの問いかけに対して一つの答えを返す。だがこの存在に関する核心については、私は語らない。例えば今の議題であるこの人間が何者であるか、という事だ。君は問いを一つ一つ積み重ねた上で、この『人間の正体』を推理し、それを回答しなければならない」
このような質疑、応答、その繰り返しの末に正解に辿り着くというゲームだ。しかしながらこれには付加すべきルールがある。質問が5回を越え、6回目に及んだ時点で、或るいは推理の回答が誤っていた時点で質問者の衣類が一枚一枚剥げ落ちていく。
より正確に言うならば跡形も無く消え去ってしまう。身に纏う全てが消失してしまうその前に回答を導き出せば対戦者の勝ち、だが素っ裸になってしまえば対戦者の敗けだ。
■TD > 勝負は何度か催されているが正解に至った者はまだ居ない。見返りとして準備をしてあるものは金や銀、少なからぬ宝石、見目にも解り易い値打ち物の数々。だがそのリターンに対するリスクも存在しなければならない。失敗したものは一糸すらも損耗し、屈辱をもって帰路につく事となる。
「…残念。今回は君の敗けだ」
そしてまた一人の人間がゲームに敗退し、産まれたままの姿で其の場を逃げ去る事になった。此処が富裕地区であるのは幸いであり、また不幸でもある。きちんとした舗石によって覆われた路面は他の地区と比較しても素足であったとしても怪我をせずに渡り易い。
だが同時にそれなりに人通りのある場所に出ればその姿を見られる恐れもあるという点も無視は出来ない。どのように隠れ場所に逃げ込むかは分からないが消えゆく姿を見送った。
「今回は、中々正答者が出ないものだな。これも埃をかぶってしまう」
そして卓上に積み上がっている金物の堆積を手で撫でつける。新たなる挑戦者を招く声よりも先んじてきらきらとした輝きが周囲の街並の街灯や星明りを弾いて煌めいていた。