2024/08/25 のログ
イズミ > 遠い
門から屋敷までが遠い
上流階級様の生活の実態は全然見てこない

色とりどりの花が咲いていて、噴水があるような奇麗な庭
小さなお城みたいな奇麗な建築

不思議と別にそこまで憧れない
いえ、負け惜しみではなく

地位や名声を得て
奇麗なドレスと輝かしい貴金属と煌めく宝石類に身を包む
季節を問わずに熟したフルーツを好きなだけ食べ…

フルーツは羨ましいけど、私が目指してる人生はそんなものではなかった


「言っちゃ悪いけど、なんか下品なのよねー」


深夜にこそこそと貴族のお屋敷を覗いて嫌味を口にする平民娘(15)

イズミ > なりたい自分になるためには平凡な平民の殻を破る必要がある
殻を破るには自分の可能性を広げないといけない
自分の可能性を広げるためには見識を深めるべき

という論法で無理やり行動し、この富裕地区に来て見たものの
ここは居住地区はもちろん、貧民地区よりも「私の夢」には遠い気がする
ここに生きてる上位1%の選ばれし上流階級のお方様方もまた、平民や冒険者とかよりも「私の夢」には遠い存在だろう

社会の仕組み枠組みの外で思考する子供の感性でそう感じ取る
平たく言えば「見た目は奇麗だけどなんか薄汚い感じがするぅ」ってヤツ

それが正しい見方かはさておきましょう
いえ、内も外も奇麗な穢れを知らない天使のような貴族様もどこかにはいるはず

そっとその家の門を離れて、広めの路地を歩く
何もかもが豪華で奇麗で余裕がある
空に輝く月や星までもが貴族たちに忖度して、なんか平民地区とは違う輝きを放ってる気がする

ここまでくれは立派な僻み


「ここで…しちゃおうかしら」


なんか理不尽な気がして、気晴らしと富裕地区踏破記念に
オナニーしてやろうかなんて思ってしまう
どの口が貴族は汚いとか下品だとか言ってたのか

イズミ > そうと決まれば
折角だからどこかすっごい奇麗なところで致したくなるのが人情と言うもの
視線が泳ぐ
流石に人様の敷地内はアレだから
公共の…そう、公共のものなら一平民でも堂々と使ったり踏み込んだりしていいはずなんて考えて歩き出した

そして都市計画にしたがって整然と作られた地区の中心部
奇麗な彫像や噴水があるような広場にやってくる

幸いにも人はいない
上流階級様達は、今頃豪華なベッドの上、この世のものとは思えないふわふわな寝具に身を包まれて寝てるのでしょう
貴族たちの生活を守るための近衛兵みたいなのも、今はいない
あ、奇麗な猫が横切った
高い塀を乗り越えてどこかのお家に帰っていく



「……ほ、本当にしたりしないってば!」


虚空に一人でツッコミを入れた

イズミ > 「まあ。記念は記念ということで」

奇麗な噴水に近寄り、その流れに手を入れる
ひやりと冷たい
結構な地下から水が汲み上げられてきてるのだろう
こーゆー仕組みを、貴族お抱えの美術屋さんや大工さんが、目の飛び出るようなお金を使って作るのだ
おんなじお金で、居住地区とか貧民地区に何十と井戸が掘れるでしょうに


「贅沢屋さんめ……」


目を細めて水に潜らせた手を動かし指をくねらせ
そうした後で手杓でその水を飲む
何も悪い事はしてないけど、夜中とは言え夏の盛りの暑さもあり
緊張で火照っていた喉と胸にすーっと冷気が染みた


「よしっ!」


手早く靴を脱ぎ、噴水の中に立ち入ると、そこでばっしゃばしゃに水遊びを開始する
キックして水しぶきを飛ばす
両手で水を掬ってばーっと巻き散らかす
富裕地区踏破記念はコレ!


見る人にみられたら危険人物扱いは必至だし
もしかしたら大問題になるかもとドキドキする
悪戯と言うのは、そーゆー背徳感が大事なんですぅ


噴水の中央台座には水瓶を担いだ女神の像
それと目が合った気がして、ピタリと水遊びを止める


「私はイズミ。そのうち皆のアイドルになるからよろしく!」


そんな勝手な自己紹介をして、次に噴水つくるときは私の像に置き換わっちゃうかもね~みたいな寝言を言いながら、やっと噴水から降りた

そして靴を片手に裸足のままで帰路に就く
今度は水着できてやれ!と思いながら

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からイズミさんが去りました。