2024/05/25 のログ
ご案内:「富裕地区 庭園」にベアトリスさんが現れました。
■ベアトリス > 日差しを遮るための日傘の布地は薄く、施された刺繍の紋様が影となって差し掛かる。
夏の薄めの生地で誂えた装束姿の女が美しく整えられた庭園をそぞろ歩く。
いわゆるガーデンパーティの類。届いていた招待状のうち、顔を出しても問題はなさそうだと判断したものに足を運んで───。
主宰の貴族夫人に挨拶を終えたのちは彼女の自慢の庭で咲き誇る薔薇をゆったりと愛でていた。
見知った顔に行き合えば、軽く挨拶や言葉を交わしたりはするものの人の輪の中に残り続けることもない。
丹精された薔薇の花の形、色。何より薫りが心地いい。
実際己のように感じるものも多いのか、邸宅の中で行われる宴よりはゆったりとした時間が流れているようにも感じた。
このような日には管楽に身を委ねるよりは、確かに花を愛でるのが向いているのかもしれない。
■ベアトリス > くるりと手の中で日傘の柄を回して弄ぶ。それにつられてカバー部がくるりと弧を描く。
初夏の陽射しに温められた風が抜けてゆくのに僅かに目を細めた。
さざめく婦人たちの笑い声が響くのを聞きながら、許された範囲をゆったり歩く。
整えられた緑の端正な姿は、人為的に作り出されたものだがそれもまた野趣とは違う美しさを備えているように感じる。
良い香りのする薔薇の前で足を止めると、少し身をかがめて。
丸みを帯びた花の形、花弁の重なりをゆっくり観察する。
淡い色の重なりが、濃い色の影を作る陰影の艶やかさ。
陽射しに少し褪せてしまっているが、それでも生花の瑞々しさは変わらない。
───官舎にも、たくさん…とは言わないが花の一つでも持ち帰ったほうが彩にはなるのだろうかと、とりとめもなく思いを馳せた。
■ベアトリス > 陽射しに夕闇が混じり始めたころ合いに、静かに宴の場を辞したことだろう。
ご案内:「富裕地区 庭園」からベアトリスさんが去りました。