2023/10/30 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にゴットフリートさんが現れました。
■ゴットフリート >
夜も更け始めた刻限。
この時間ともなれば、路を歩く人影も減って来る。
昼間は多くの人々で賑わう、平民地区との間にあるこの公園も例外ではない。
喧騒に疲れたような風景を月影の中に浮かべる其処には、人っ子一人いなかった。
そんな風景に響くのは馬の蹄鉄と、車輪が回って、停まる音。
瀟洒な飾り付けがされた貴族の家紋の刻まれた馬車が、公園の入口に停車する。
「いやいや、かたじけなかった。こんなところまで送ってもらって。
何、ここからは屋敷まではすぐ、酔い覚ましに歩いて帰るとも――」
そんな、挨拶と共に馬車が大きく撓む。
出てきたのは灰色の髪の毛の巨躯。
顎髭を掌で擦りながら、好々爺のような――というにはいささか以上に獰猛な笑みを馬車の中の貴人に向ける。
夜会の帰り道に、馬車に同乗させてもらった、というところだろう。
その中で、どんな会話があったかどうかは、余人には知るべくもないけれども。
ともあれ、酒精の名残を残した赤らんだ顔で、馬車に片手を上げて、降り立つ。
「では、良い夜を。」
車内に向けて言葉を向ければ、馬車が動き始めるまでその姿を見送るつもり。
ほんの些細な油断、例えば、見送らずに背中を向ければ「礼儀知らず」と謗られるような世界。
うんざりするような儀礼と、唾棄すべき建て前が支配する世界に生きて、そこにどっぷり浸かっているのだから
最早、そんな面倒を面倒とも思わなくなってしまっている。
――やがて、馬車が路面を鳴らしながら走っていけば
酒精の熱を帯びた息を零してから、ゆっくりと公園の中に歩き始める。
酔いを醒ますにはちょうど良い、涼しい風が頬を撫でるがどうでもいい。
酒などで、酔う筈もないのだから。
■ゴットフリート >
そして、ゆっくりとその足取りは夜の中へと消えていって――。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からゴットフリートさんが去りました。