2023/10/19 のログ
■アルマース > 「っ! あなた、さっきの――! ……ああ、彼、飲み過ぎたみたい。
まあ、でも……酔いながらの方が気持ちいい、らしいから」
遮るように背後の扉に背を凭れた。壁越しに、苦しんでいるようにも悦んでいるようにも聞こえる男の喘ぎ声が響き始める。
二人きりで相対すると、目の前の青年に先刻感じた既視感が強くなる。
金の髪に白い肌。よくある組み合わせと言えばそうだけれど。
「彼は友達に気に入られて追い出されちゃったから、また相手を探そうと思っていたの。
あなたも給仕するだけじゃつまらないでしょう? ねえ……」
部屋からサウロを引き離すため、それと既視感の正体を探るために、サウロの腕に触れ、顔を見ようと顎に手を伸ばした。普段から使っている香水――砂漠の花の香り――がふわりと彼の鼻腔を擽る。ついでに先ほど掌に隠していた薬の残り香も。
普通の人間にとっては飲んだり食べたりの粘膜接種をしない限りは大した作用はない――ので女も平気でいるけれど、一度中毒になった身には匂いだけでもつらいらしいと聞く。
サウロの事情を知っていたわけではないが、この場で騒がれてしまえばおしまいだ。
部屋の中では、仮面の男に嬲られた女性の恋人や友人たちの手で、快楽による報復、が行われている。
貴族を殺したり怪我をさせては当然、仕返しの仕返しが待っているから、
被害に遭った女性を大切に想う人間たちが、身分の上の者へ報いを受けさせるために見つけた方法は、薬を用いて快楽と被虐の趣味を植え付けて、次の被害を出せないようにすること。
そのための釣り餌と露払いの役目を果たすべく、誘うようにサウロの目を見つめ返した。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からサウロさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にサウロさんが現れました。
■サウロ > 「……そう、ですか。酔っておられるだけなら、いいのですが」
(扉越しに聞こえてくるのは男の声で、それが喘ぎ声なのか悲鳴なのか判別が付きづらい。
とは言え、今は給仕に扮している以上、勝手に入る権限は持たず、彼女の言葉を信ずるほかないが。
彼女がグラスに含ませたものについても気付いているというような口ぶり。
マスク越しに鋭く見据える視線と硬い声音は、彼女の言動を警戒しているとも見れるだろう。
室内には、彼女の言う"友人"以外にも複数の人の気配を感じ取れる。
それだけで彼女が偽りを告げて誤魔化そうとしているのだと警戒の視線を向けるが、
近づいて伸ばしてくる掌から香る薬の残り香を吸い、反射的に掴んだ。)
「……っ、まだ、仕事中、ですので……」
(サウロは例の薬の中毒者ではないので、それ自体の効果は薄い。
だが少量含んだだけでも汗を滲ませ色白の肌がうっすらと赤らむ程度には効いている。
そこに彼女の香水の香りと薬の残り香も混ざれば、少しだけつらそうに眉を寄せた。
さらに言えば、淫魔の暗示によって女性から色香を漂わせて迫られると、抗いがたく逆らえなくなる。
──アルコールと、薬によって性的な興奮を刺激されて。
美しい女性に迫られて、誘われる。それだけで条件は十分に満たし、彼女の手を掴んでいることだけが最後の理性だ。
その理性も、劣情を煽るような触れ方ひとつで崩されかねないもの。
事情を知らない彼女にとっては、そういう手合いに不慣れであるが故に顔を赤らめ逸らしているように見えるかもしれない。)
■アルマース > 普段、好意以外の下心のある誘いは、するのもされるのも疎ましいものだけれど、どうもおかしい。
目の前の相手に好感を感じる。
マスクで顔を隠していても顔立ちが整っていることは分かる。
分かるけれど、金髪の王子様タイプはきらきらしすぎてあたしには――と考えて、ン?と首を傾げた。
最近同じことを思った記憶がある。
そこで記憶が繋がって、女の顔に微笑みが広がる。
ああ何だ、宿でたまたま一緒に食事で相席しただけの、善良そうな自由騎士様か――
頭よりも先に体が勘づく。いつもそうだ。
サウロであると気づいて、女の声から硬さがとれた。サウロとは対照的に。
「彼は酔っていて、気持ちよくなって、明日か明後日までここに居たがるかもしれない。
でもね、これは約束するわ。
彼は上機嫌で、怪我ひとつなくお家に帰るし、これからとっても良い子になるの。
自分は支配するよりされる方が気持ち良い人間だったんだって、気づくことになるから」
誰かから見た真実であり、誰かから見れば真実ではない。
部屋に連れ込まれた、堕ちる前の男にとっては、怒りをかき立てる言葉かもしれない。
だけど彼は自分がしたことと同じことをされるだけで、むしろ血の一滴も流さず気持ちいいだけなら、それはご褒美と言ったって良いはずだ。
自分の大義に揺るぎなく、少しの罪悪感も無いからこそ、説明する声は淡々としていた。
捕まれた手を止めて、
「痛い……痕をつけないで。ね、お仕事中のあなたを困らせるつもりはないのよ。
可愛いなとは思ったけど、無理強いなんかしない。
無理強いされている人間を見たら、あなたはきっと助けてあげる側の人間でしょう?
私もそう。……あなたと違って、助ける力はないけど、ずっと、味方でいる」
そのために、関係の無いサウロを無理やり手籠めにするのは本末転倒というもの。
しかし、どう考えても男女の力の差がある中で、客という立場上の優位はあっても、断りも逃げることもできないとは思えない。
だから躊躇いなく誘惑した。
「あなたも支配したい? されたい?
私はね、好きな子相手ならどっちだって良い。
……でも、あなたがいつまで仕事中だって言い張れるのか試してみたくなっちゃった」
かぷ、と自分の手を掴むサウロの手首を甘噛みする柔らかな唇と硬い歯の感触。
「隣の部屋が空いてる。
どうしてもこの部屋が気になって、だけど入る理由が見つからないなら、私を尋問してみたら?」
尋問される側とは思えない態度で、ふんわり笑う。
■サウロ > (何かに勘づいたようにマスクをつけた女性の口元にふわりと浮かぶ微笑。
サウロの正体は彼女に勘づかれたが、サウロはまだ彼女が宿屋で相席した女性に結びついていなかった。
寝起きの様相で、さばさばとして快活で明るい雰囲気の、踊り子の女性。
その褐色の地肌や、黒髪にマスクから覗く碧い瞳は、覚えがあるもので。
淡々と紡がれる言葉に、既視感を覚える。
彼女の雰囲気や声に、どこか覚えがあるような、そんな既視感。)
「それは、どういう……、っ、」
(彼女の紡ぐ言葉を纏めて、意味を考えようとする。
痛いと言われれば掴んだ手に込めた力は緩み、彼女の力でも振り払える程度のもので。
遠回しながら、今していることは問題ないのだと言い含めるような言葉には敵意も悪意も感じられず、
反対に手首へと甘く噛みつく感触に息が詰まる。
誘惑するような視線、長い睫毛の下から覗く色香、唇の感触と、硬質な歯の甘噛みに加えて、
嗜虐心か、被虐心か、ぞくりと男の劣情を煽る、蠱惑的な女性の声。)
「……っ、待って…ください、これ以上は、」
(余裕のない声には熱がこもる。
無理強いするつもりがないのはわかるが、彼女の言葉で、声で、行動で、すでに熱が下半身に落ちて下着を押し上げ始めていた。
アルコールから繋がる淫欲と、魅力的な女性からの誘惑。
そのどちらもが作用すれば、サウロにとって目の前に映る女性のことしか考えられなくなっていく。
彼女の背後にある扉から、視線が隣へと移る。
残る理性を総動員して、彼女の肩に手を置いた。が、そこまで。
彼女の誘惑の声が脳内で反響して、理性と劣情で苛まれ葛藤する表情を見せ────。)
「────、……部屋、へ、連れて行ってください……」
(捻り出したのはその一言。
尋問など出来るような表情には見えないだろう。
葛藤に、羞恥と被虐性の質、その表情だけで彼女は察することも出来るかもしれない。
"自分こそが支配者だ"。尋問される側でもなければ、支配される側でもない。
一言「ついてきなさい」というだけで、結果は知れる。
彼女の言葉に諾々と従い、彼女の気が変わらなければ、二人の男女は部屋の中へと消えるだろう──。)
■アルマース > 「尋問はお部屋の中でね。
ふふ、素直で可愛い。紳士だけど男の子だから、我慢できなくても仕方ないわね」
この国では珍しく人間として尊敬できそうなひと――という好感だったものが、愛し子を見る眼差しに変わる。
我慢しなくてはいけないのに、どうしようもできない葛藤に塗れた男の顔というのは、どうしてこうもそそるのかしら。
サウロが、悪人かどうかもわからない女を――あるいは悪人であっても自分より力の弱い者を――力づくでどうこうできる人間ではないと踏んだからこそ、の余裕でしかないけれど。
「私も尋問させてもらおうかしら。
あなたはだあれ、ただの給仕じゃあないし、何しにここへいるのか――」
歌うような言葉のほとんどは分かっていることで、分からないのは何しにここへ、くらいなのだけれど。
掴まれた手をするりと握り合う形に変えて、ひとつひとつ言葉を区切るごとに絡めた指を折りたたんでいく。
身体を密着させて爪先立って耳打ちすると、しなやかな腹部がサウロの熱を優しく擦り上げた。
「良い子ね。お部屋でも良い子でいてくれたら、たくさんご褒美をあげる。
こっちへいらっしゃい」
恋人のように繋いだ手を引き、隣の部屋の扉を開けた。
そこはお仕置きのための予備の部屋だったから、男を堕とすために用意された色々な道具がそこにもあって――
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からアルマースさんが去りました。
■サウロ > 【次回継続】
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からサウロさんが去りました。