2023/10/18 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にサウロさんが現れました。
サウロ > (とある主催者不明の仮面舞踏会の会場。
 金髪の髪はオールバックに、給仕用のベストとシャツ、スラックス、革靴といった服装にネクタイと、
 瞳の色が変わる程度の認識阻害用の専用のマスクをつけて、会場内を飲み物を乗せたトレーを手に歩いている。
 薄暗く間接照明だけが光源の屋内では男女が近しい距離で話し、踊り、何処かへと消えていく。
 今回の任務は自由騎士団を支援する貴族からの依頼で、会場内での潜入警備。
 警備と言っても壁際に立って部外者や侵入者などを警戒するようなものではなく、
 内側に入っていざという時に要人を警護する為の者だと言う。
 あとは年端もいかないご令嬢が絡まれていたら助けてあげてねと言う、やや難易度が高いものでもあった。
 依頼をした貴族は正体される側で「特に問題が起きるとも思えないが、念の為にね」と言って、
 潜入できる手筈を整えられ、一足先に会場に入っていた。

 基本的には飲み物を手に会場内を歩いて、呼び止められればグラスを渡し、一礼して去る。
 そんなことを繰り返し、どこか怪し気な雰囲気の会場内を練り歩いている。)

「……何事もなさそうだな」

(パーティが始まってから小一時間ほどは経っている。
 貴族たちの会話はわからないが、聞き耳を立てていても小難しい言い回しが多い。
 いかがわしい雰囲気もあるが、大広間では目立って卑猥な行為は行われていない。
 特に問題もなく時間は過ぎていく光景を、一歩引いた位置から眺めつつ、慣れない空気に少しばかり酔っているのかもしれない。)

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にアルマースさんが現れました。
アルマース > パーティーが始まって、人の動きもそれなりに落ち着きを見せ始めた頃、供を連れず入室した褐色肌の黒いドレスの女。

一筋の乱れも無く高い位置で束ねられたまっすぐな黒髪も、仮面の奥の発光するかのように鮮やかな青い瞳も、生来のものではなく特別な手入れをして自分以外の誰かを装うためのものだった。

数分の間、壁沿いに会場を巡り、それから人の間を縫っては、何人かの男と挨拶程度の短い会話を交わす――『連れがおりますので、また今度』『今夜はもう約束がありますの』――他愛のない断り文句。
仮面着用で相手の身分がよく分からないからか、深追いはされていない。

一度足を止めると、飲み物を持つ給仕を探して視線を巡らせ、まっすぐサウロの方へ。

「――失礼、二ついただいても良いかしら」

身に沿った生地はドレープの美しいきめ細やかなシルク。
正面から見れば裾も長く、胸元以外の露出は少ないように見えるけれど、背中は尾てい骨まで空いたデザインだ。

サウロ > 「────、畏まりました。こちらはアルコール入りになります」

(飲み終わったグラスを回収し、新たなグラスを乗せて、人にぶつからぬように会場を行き来する。
 それでいて会場内に常に目を向けておく必要があるので、中々に気を張る仕事だ。
 ふー、と息を吐き、新たなグラスを乗せて歩いていけば近づいてくる気配を感じて脚を止める。
 振り向けばマスクをした褐色肌の女性。身に纏うドレスは洗練された黒。
 ドレープが美しく、スタイルの良さを強調するようなそれを纏う女性もまた、体幹の良さを感じさせるすらりとした美しさ。
 トレーを差し出し、そこにいくつか乗せられている細長いフルート型と呼ばれるワイングラスを取りやすい位置へ。
 甘味のある果実のシャンパーニュは透明度も高く、度数もさほど高くはないものだ。

 二つ、と指定されはしたが、彼女の周囲に連れらしき人物は見当たらず怪訝そうに思う。
 とは言え、今はただの給仕。
 彼女の記憶力が良ければ、いつぞや宿屋の下にある食堂で、相席をした青年によく似た声だと分かるだろう。)

アルマース > 飲み物を所望しながらも、視線を何度か黒い仮面の壮年の男のいる方へ向けていたが、聞き覚えのあるサウロの声に訝しんで顔を向け直す。

「ええ――、ありがとう……?」

星のように銀色に彩られた長い睫毛が、ぱち、ぱち、ぱち、と。
三度瞬きするほどの時間、相手をじっと見つめた。
――が。記憶に引っかかる顔がはっきりと形を成す前に、会場の一角で誰かが笑い話でも披露したらしく、わっと盛り上がる声にはっとする。

記憶を深堀りするのをやめて、グラスの一脚は脚を摘んで持ち、もう片方は上から覆うように掴んで。
飲み物を両手にするとサウロから離れ、黒い仮面の男の方へ向かった。
歩む途中、グラスを掴む掌から、中に透明な液体が滴り泡立ったのを、この薄暗がりとパーティーの雰囲気の中で気にするものなどいるだろうか。

「――旦那様、お代わりはいかがです」

女は、相手が見つからず一人でつまらなさそうにしていた黒い仮面の男へグラスを手渡すと、いくつか言葉を交わす。
微笑み、見上げ、首を傾げて媚びる仕草に、男の方が満更でもない感じを見せ、グラスを一息に呷ったところで。
男の肩へ手を掛け、つと爪先立って耳元へ唇を寄せると、短い内緒話。
そして連れ立ってホールを出る道すがら、男のグラスを壁際のテーブルの上に戻した。

後を追うなら、ホールより更に薄暗い回廊へ出て奥へ進み、いくつもある扉のひとつをノックして開く女の姿が見えるはずだ。

サウロ > 「ご満足いただけましたら、グラスは給仕へ」

(マニュアル通りに、飲み終わったグラスは自分を含めた給仕たちが回収していることも伝える。
 じっと見つめ、数度瞬きをする瞳と視線が合う。
 怪訝そうに首を傾げそうになったが、それより先にグラスを二つ手に離れていくのを見る。
 その持ち方が妙に引っかかった。
 一つは普通にステムを掴みながら、もう一つはリムを覆うように。
 それだけのことながら、その開けた背中を視線で追う。

 何かありそうだな、と。
 女性が向かった先、黒い仮面をしているのは、依頼人である貴族が会場に入った時に話していた相手だったような。
 会場内を歩きながら遠巻きに二人を観察し、立ち上がってホールから出ていく所を見て思案する。
 テーブルに置いて行かれた飲みかけのグラスを手に、軽く匂いの確認と、数滴手の甲に垂らして、薬物が混入されているかどうかを確認。
 それから、賑わうホールを一瞥した後静かに廊下へと出て、二人の後を追いかける。
 しかし追ったところでどうしたものか────二人が何処かの部屋へと入っていくところまでを見届けてから、
 まさか乱入するわけにもいかない。そういうコトをする目的であるのなら、なおの事。
 気配を殺して部屋の前で聞き耳を軽く立てるぐらいだが、そういう音が聞こえて着たら、そっと立ち去ろうと決めた。)

アルマース > グラスに残る果実酒の香りに隠れて、うっすらと甘苦い特徴的な匂いがある――酩酊と昏迷、催淫の効果をもたらす薬の匂い。
皮肉なことに、黒い仮面の男自身がそれを定期的に、そして大量に購入する常連客であることは、薬の流通に携わるものなら知っている。
普段なら飲む側でなく飲ませる側で、身分の低い者相手に楽しむことを知っているのは、被害者とその周囲の者だけ。
貴族階級の間でそんな些末な事柄がどれだけ取沙汰されているかは分からない。
相手が身分の低い者で決して逆らえないからこそ、正式な訴えは上がらず、これまで問題になってもいないのだ。

どこか足取りの覚束ない男と、その手を引く女が部屋の中へ入り――扉が閉まる。
『じゃ、あたしは外で見張ってる』と女の声のした後、それに応じる男の声は、壮年の男のものとは異なる。

再び扉が開き――女だけが再び姿を現す。
内側から鍵のかかる音がして、ふう、と一仕事終えた溜息をついた瞬間、鉢合わせとなるのか否か。

サウロ > 「……、っ……」

(少量とは言え含んで分かるのは特徴的な匂い。
 諸事情でアルコールに関しても現在のサウロにとっては媚毒に等しく、少量であっても首筋が熱くなる程。
 薬の効果があればなおの事、前後不覚になるレベルではないが軽い酩酊に近い状態になっていく。
 二人が消えた部屋の前へと近づいたタイミングで、何かのやりとりの声は微かに聞こえたが──
 思いのほか、表へ出てくる気配が近づいてきた。
 サウロがそこから離れるよりも、彼女が出てくるほうが早かっただろう。
 彼女が扉を開けて、閉じたタイミング。内鍵がかかる音がするのと、彼女と視線が合うのは同時だっただろう。
 彼女にしてみれば、部屋から出たら給仕姿の男がいた、ぐらいの唐突すぎる状況か。)

「……ああ、ええと。すみません、お連れの方が気分が悪そうでしたので」

(と、二人を追いかけてきたことは誤魔化すことなく、素直に伝えよう。
 と言っても、サウロは嘘が下手なので、誤魔化してもすぐに見抜かれてしまうのだが。
 なんとも居たたまれない状況ではあるが、彼女の反応や様子をマスク越しにじっと伺い。)