2023/09/17 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/広場」にサタンさんが現れました。
サタン > 夜の帳が下りた富裕地区。
男は、自身の商会と取引の縁ある貴族や、懇意にしている同業の資産家達との付き合いで、この地区にある会員制のクラブへと赴いた。
会話の内容は、今狙っている商品についてや、
今後儲けになりそうな商いの話に、貴族界隈で売れそうな商売の話になど。
それも酒精が廻りは始めれば、何処かの娼館の娘の話など、
俗っぽい話へと変わっていく。
そうして盛り上がった彼らは、二軒目としてこの地区の高級娼館へと向かう様子となり。
男は酔った訳ではないが、今回は丁重に断りを告げた。
盛り上がりに水を差した事で、付き合いが悪いと感じられぬように、このクラブの代金は此方持ちで支払う事で、
今回は許され彼らと別れた。
そして、一人で富裕地区の噴水が設けられた広場まで戻ってくれば、
近くのベンチに腰を下ろして、煙草を咥えた。

「―――付き合いというのも疲れる…。」

ぽつりと呟く独り言。
男も色は無論好むが、今宵彼らと娼館で愉しむには気も乗らず。
指先に小さな灯の炎を燈せば、煙草の先に火を移して紫煙を燻らせ、
肺深くまで仄かに薫に香る煙で満たし味わえば、紫煙が男の口許吐き出され、大気に紛れて行った。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区/広場」にカナリヤさんが現れました。
カナリヤ > この土地へ落ち延びてから早一月が経つ。
逃亡の際に引き掴んできた宝石達も日銭に変わっていよいよ底を尽き、宿すら選べなくなって数日だ。
かと言って貧民地区や平民地区で野宿する勇気はなく、野に転がるならばと選んだ場所が衆目多きこの広場だった。

世間知らずの女のことだ、もって数日と捨て置かれたのがこれ幸い。
落ち延びた女を追う手合いは最早なく、そうと言外に察せば不思議と肝の据わったところもあって、一人過ごすこの夜もどこか涼やかに感じられる。

―――――ともあれ、この時間帯ともなれば気配の薄い馴染みの塒に、今夜はぽつりと人影が一つ。
ベンチに腰掛けるそのシルエットに一度足を止め、くゆる紫煙の薫香を軋む肺で嗅ぎ取った。

――――― ふわっ。

いたずらに吹き込む風が女のランタンを煽る。
忽ち掻き消えた灯に、男へ気を取られていた意識が引き戻されて慌てた。
火種は無い。先ほど酒場で分け与えてもらったばかりの、夜を凌ぐ火を失ってしまった。
間深く被ったフードの内側で焦りの滲む狼狽を噛み締め、おずと悩む数舜。


「 ……ぁ、の―― 旦那様。 」

少し後、女はベンチの男へそっと声を掛けた。
腰を屈めて恭しくこうべを垂らし、唐突に呼び止めた不躾を詫びる声色で。

「 お声を掛けるご無礼を、どうかお許しください…。 」