2023/08/27 のログ
■サタン > 富裕地区の住宅街の一角。
豪奢な屋敷が立ち並ぶこの街は、夜闇を払うかのように
屋敷の窓からも明かりが零れ、幾つもの街灯が街を照らす。
だが、そんな街にも必ず光届かぬ場所はあり、
屋敷同士の塀の間に出来た細い路地より
今宵の仕事を終えた男は、そんな闇の中から現れる。
この魔王にとって、財力、権力を持つ貴族であろうとも獲物であれば例外はない。
事後処理は眷属に任せて、男は火の着いた煙草を咥え
華やかな灯りの街の通りへと戻る。
夜の愉しみたる高級娼館や、会員制のサロンへと向かう着飾った貴族や、
財力を示すかのように華美な装飾を纏う商人達の姿を眺めつつ
「――偶には、彼らのような俗物を演じるのも一興か?」
男もまたこの地区に屋敷を構える老舗商会の主という顔を持つ。
色は無論好むが、財貨に物を言わせての趣味はない。
ただ、人間社会のまた関係性が物をいう上流社会で生きていくのならば
そうした付き合いも必要だろう。
通りの街灯の下、呟くように言葉を発した後、
燻らせる煙草の紫煙を吸い込んで肺を満たして、香りを味わいながら
ゆっくりとその煙を吐き出しながら街を眺めていた。
■サタン > そしてこうした富裕層の住まう地区だからこそ
彼らの財貨や権力のお零れを頂戴、或いは、取り入ろうと狙う者もいる。
男が纏う洋装は、華美な装飾は控えつつも
最上級の生地を全て一流の職人が仕立てた物。
闇夜では紛れる黒であっても、灯りの下であれば
見る者が見ればその価値と、一般的には整った男の風体も相まって、
声を掛ける夜の蝶達も幾つか。
「――すまんな、今夜は先約がある。
また今度……見つけてくれたのなら、呼ばれようか。」
勿論嘘である。
興も乗らねば、男の好むのような存在でもない。
丁重に断りを入れて、夜の華を見送りつつ、幾分か灰となった煙草を
口許放し、その手の中で誰も気が付くことなく、
刹那生まれた小さな炎が煙草全てを灰すら無く焼き尽くした。
さて、夜の街へと向かうか、或いは男の興が乗る者が現れるか。
再び、上着の内ポケットから煙草を取り出し、口許咥えれば
右手の人差し指で瞬間、火を灯してまた紫煙を燻らせた。
■サタン > しばしの一服を堪能した所で、男の傍を通り過ぎて行く外套で顔を隠した人物。
すれ違い様に、呟くように何かを男へと伝える。
それは、表の顔の獲物ではなく、其の内に秘めた真の顔の獲物。
その素性も身分も全ては把握している。
刈り取る状況を作り上げたと、報告を告げる魔王の眷属。
「ご苦労……――想定よりも早いか。
まぁ、良い――向かうとしようか。」
先約の嘘は配下の手際の良さで本当となる。
カツン――…革靴の足音が一つ鳴り、男はまた狩猟場たる闇へと向かい、姿を消した――。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からサタンさんが去りました。